ダンジョンソロ
夜の1人行動は好きな部類で、この世界に来る前は、こんな風に夜にランニングとかしたり、それが終わると自分へのご褒美としてコンビニでお菓子とかを買い食いとかしていたのを思い出した。
よくよく考えたらプラマイゼロ…と言うよりマイナスじゃ…
まぁそんな事を考え走っていると、地下に入る為の井戸の入り口近くまでやってきた。
何故か下から風の抜ける音と共に変な呻き声が聞こえるが…
特に多分恐らく万が一にも気のせいだろう…。
というか気にしたら怖すぎて入れない…。
井戸にお化けとか…、
白装束で…髪の長い…アレが這い出て…、
ブルブル…
…つまり最善の手は、余計な事は考えないでいるのが1番!
『あっ、そこの君!今は危ないぞーー!』
夜の井戸の監視をしていた衛兵猫族は、ハナが井戸に入りたそうに近づいた時に急いで駆け寄ってきた。
『ん?私?大丈夫だよ?』
『あれ?人族か?って事は噂の…』
『あっ、ハナです!』
衛兵猫族は、【鳳凰の嘴】で事前に伝わっていた人族のハナだと分かったのと、起動した完全顕現の【白虎の脚】を見て高度なサモナーとの噂が確かな物であり彼女の力が本物であると証明出来たので、実力的に十分と井戸を入る事を特別に許可された。
『ただ…君の強さなら問題ないと思うが、扉の魔物検知の【紋】が今作動している状態だ…気を付けなよ?』
『地下に何かいるってワケね…ありがとう気を付けるよ』
顕現した【鷹の目】越しに井戸を覗き深さを確認すると、降下用のロープで降りるのかと思えば、ロープを使わずそのまま飛び降りる…地下の洞窟になるべく衝撃を与えないようにトンッと着地すると、壁掛けトーチが辺りをボヤッと照らしだした…初めに気付かなかったが何かのセンサーで光るのだろう…。
そして其処には灯りによって現れた不気味な音の原因である、色の変わったモチッコと小鬼が三匹ずつのペアでお出迎えしていた…。
『なんだ…[モチッコ]と[小鬼]か…』
見知った敵を見つけるとハナは安堵の溜め息を吐いた。
ただ、普段と違うのは白色だったモチッコは、茶色く変化し、核がある場所は朱色がかった赤い色になっていて、
また青かった小鬼は赤鬼と見間違うように色味が変わっていた。
どちらもハナを見つけると敵と認識されているのか、朝の小鬼のオドオドした態度からは想像できない程交戦的で、涎を撒き散らかしながら襲いかかってきた。モチッコも我先にと一直線にこちらに飛び混んでくる。
それを既に展開されている[金剛の盾]で全て弾く…この[金剛の盾]はトーニャが使っていたオーラ状の盾とは違い、金属製と思わしき光沢があり、細身で大人の背丈ほどある4枚の盾が、身体の周りをぐるぐると囲うように顕現されている。チャームポイントなのか渦巻き状に並んだ透明に輝く勾玉がそれぞれ嵌め込まれていた。
この盾は所謂オート防御という物で、敵の攻撃を感知すると自動で追尾し防げるようになっている。
ある程度はハナ自身操作は出来るが…、
自動で任した方が使い勝手が良いし、確実にそっちの方が身を守ってくれる。
この狭い場所で[荒熊の爪]を使えば、恐らく洞窟が耐え切れず生き埋めになるかもと思い、魔物がいた場合の対策として、この[金剛の盾]による防御突破戦法を思いつき実行した。
コンッ!ガコンッ!
本来凶暴である小鬼の激しい棍棒攻撃とモチッコの緩急をつけずの連続体当たりが全て防がれノーダメージ…虚しい音を奏でながら、何も無かったかのようにハナはカードを刺す窪みへと近づき入場手続きを行うと、そのまま洞窟にいた全ての魔物を引き連れ[天音の草原]にやってきた。
『んー!外は良いなぁ!草原が風で揺れる…この音が特にいいよねー!』
コンッ!ガコンッ!
『この草原の』コンッ!ガコンッ!
『探索は』コンッ!ガコンッ!
『まだ終わって』コンッ!ガコンッ!
『ないし』コンッ!ガコンッ!
『……』コンッ!ガコンッ!
コンッ!コンッ!ガコンッ!コンッ!ガコンッ!
『もー!!じゃま!!』
【荒熊の爪】でひとなぎすると懸命に攻撃していたモチッコと小鬼達が吹き飛ぶように蒸発した。
魔物を排除したお陰で、本来の静かな草原の風に揺れる音が聞こえ出した。
『なんだコレ?』
蒸発したモチッコが落としていたのは、茶色い粘土のような物質…朝は何も落とさなかったのに…、
とりあえず腰につけていた[異空間の鞄 小容量]にそのドロップアイテムをしまった。
あとでトーニャに聞いてみよう。
『さーてと!周囲の探索でも行きますか!』
起動していた【白虎の脚】【金剛の盾】と【鷹の目】それ以外にも【月兎の耳】を顕現し、初めと違い今度は草原に負荷をかけず、風のように駆け巡る、トーニャの話では他にも魔物が居そうなニュアンスで話していたので、どんな種類がいるか気になりあわよくば闘ってみたいと思っていたのだ。
所でハナ自身は全く気付いていないが、この世界に来てからハナの倫理観は少し…いやかなり交戦的寄りになっている…。
血とか、闘いとか、特に相手の生命を奪う事に関しては勿論初めてで、普通の女子高生にできる者はまずいない…、ハナの魂の受皿として、ニャルデルによってハナのベースの身体を作った際、言語能力と識字能力等を弄った際、この世界で無理なく戦える様に倫理観を少し好戦的に弄ったのだ。分かりやすく言えば元の世界のゲーム感覚とほぼ同じようにだ。
争いや闘いとは無関係の安定した生活から、闘いも命の奪い合いもザラにあるこの世界に突如来たのが、年端もいかぬ若い女性とは流石に酷だと思い、神であるニャルデルなりの計らいだった。
だが、3Dゲームと同じでグロい物はグロくキモい物はキモいというのは変わらない…、命を奪うと言うより敵を倒しアイテムを手に入れる…、
所謂ゲーム感覚と言うものが強く反映するようになっていて、そのお陰で殺生に関しての恐怖心は特に無かった。
当のハナ自身はまさかそんな倫理観をも弄られていると知る由もなかったが…。
草原を駆け巡っていると、立派な角の生えた茶色の兎が5匹程居たのを[月兎の耳]で位置を確認した、
気付かれないように音もなく背の高い草へ滑り込むように着くと、[鷹の目][白虎の脚]以外の全ての[紋]を解除する。
ハナがしたかった事は、派手な技とオーバーキルな攻撃力を出来るだけ抑えて、出来るだけ少ない動きと攻撃で敵を無力化する…、ついでに討伐証明品を獲得出来るかを試したかったのだ。
『よし、兎さん出ておいで!』
ハナは角兎を手を叩き呼び寄せるように挑発する、夜の角兎はやはり凶暴…、自慢のスピードと脚力で、角を主軸に東西南北色々な角度から連携を取りミサイルの様に飛びついてきた。
それをハナは涼しい顔ですんでの所で躱していく。攻撃後の兎たちは草むらに潜み次の攻撃に備えていた。
[鷹の目]は視力強化だが、相手の筋肉の動きまで見切る事ができ、少し先の未来予知の如く攻撃を予測する事ができる…だが、夜に限っては遠くまで見えない為ハナ自信の目視の範囲という条件付きであれば特に問題なくこの未来予知は使える。
だが、この能力を使っていても素早く小さな的に攻撃を当てるには力加減が難しいし、恐らくハナが待っているどの攻撃でも兎達は蒸発してしまうのだろう…
ハナはやりたかった事が出来ないかもしれないと攻撃を避けながら思っていた…。
が、
『あっ!いい方法思い付いた!』
ハナは悪い顔をしながら、音で位置を把握する為[月兎の耳]を再度顕現し敵の攻撃を待つ…。
きた!!
ハナの正面を北面と捉えると、北西から飛び込んできた角兎の軌道を腿上げのようにし待機[鷹の目]で次の動きを予知し、[白虎の脚]を使い、流れるように受け流し、その先にいる東側から飛び込んできていた角兎と正面衝突するよう誘導する。
狙いどうり!
お互いの角がクロスカウンター状に目に深々と突き刺さり速度も相まって頭蓋を貫通すると絶命した。
学習したのか東と西側から同時に突っ込んでくる角兎…コレで受け流しも防御もさせず、串刺しにしてやるという同族を殺した野性の怒りを感じる攻撃だった…
まぁそれも当たるギリギリまで回避を粘り、角が触れる直前に[白虎の脚]でジャンプし回避、コレも正面衝突し同じように絶命する…。
また角兎は考えた。
だが兎の小さな頭ではこの程度の狩の方法しか思いつかず、またリーダーとして指示のみを出し、攻撃をしていなかった為に、最後の一匹になってしまった…。
角兎は賢く逃げる選択をした。
が。
『逃すわけないでしょ!』
[白虎の脚]を使い上から飛び降りる時に、ついでの様にリーダー兎の自慢の角を[白虎の脚]の側面で切るようにへし折った。
賢い角兎は、ただの兎になってしまった…。
『んー!気持ち良く決まった!トーニャみたいにスタイリッシュに戦いたいんだけどなぁ…まだまだ練習だなぁ』
そんな事を呟きながらハナはへし折った角を[異空間の鞄 小容量]に入れる…。
逃げずにまだ居る無力化したブルブルと震える兎を見下ろすと、手の甲で払うような仕草をし、ただの兎に要は無い逃げて良いぞと、強者の余裕を見せつけ残りの角を全て回収した。
回収方法としては頭に突き刺さってる角を抜く時、両方の頭を反対方向に引っぱって抜いた…その時血と脳と思われる内容物がグロかったけど…頑張った!
角はトーニャに貰った小型ナイフで根本を頑張って切断し切り取った。
『とりあえず回収したこの角は討伐証明になりそうだし持っておくとして…、鞄の容量は…あー…後一個しか入らないか…まだ探索したいのにどうしよ…』
項垂れるハナの後ろ姿を折れた角兎はじっと見つめるのであった…。
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[異空間の鞄 小容量]
ー中身ー
ハナの制服 上
ハナの制服 下
黒丸薬
赤茶の土塊
殺戮兎の角(可)
殺戮兎の角(可)
殺戮兎の角(良)
殺戮兎の角(優)
殺戮兎の角(秀)
(空)
[ミディスカート]
ーポケット数ー
ギルドカード
小型ナイフ
(空)
(空)
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