酒場の喧嘩
夜風が気持ちいい…。
さっきあったの事が嘘のような感覚だ…。
色々あったが、私が知りたかった様々な事が知れて、コレからやるべき必要な事も分かった。
まず、鳥居を潜る、ここは終わったから残りは6つ!
後は大多数からの認知と、丈夫な身体…
この二つは後々やっていく事にしよう…。
焦っても仕方ないし、時間潰しがてらにダンジョンでも行こうかな?夜に[鷹の目]を使うと昼よりも確実に見える範囲が落ちるけど、まぁ大丈夫でしょ。
まだまだある[紋]を試してみたいしね、
流石にトーニャに言っとかないと何処にいるか不安になりそう…あっ!私【鳳凰の嘴】も使えるからそれで連絡しよっと!
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カァン!!ゴンッ!
ドドドドッ!
酒場のテーブルや椅子、食器が舞うわ舞う…。
お互いのプライドと意地をかけ、激しい戦闘でもびくともしない頑丈で大きなテーブルに共に乗っており、それを土俵の様に周りのガヤ達が集まっていた。
シズは体制を限り無く低くさせ、テーブルすれすれの回し蹴り…いや、そのまま両手を付き勢い良く跳ね上げることによりアッパーカットの蹴り版をアーチナに放つ、アーチナはそれを読んでいたのか、最小限の動きと左手の甲で蹴りを受け流すと、古武術の縮地を使う…余りの速さに逆立ち状態で無防備のシズに詰め寄り、息を吐くと共に正拳突きを放つ。
『フッ!』
『甘い!』
シズは片手で身体を支え、足先を持つと、無理やり身体をくの字で曲げ、正拳突きをコンマ数ミリで躱わす。
お返しとばかりにシズは空を切るその正拳突きに、持っていた足先とは逆の脚を使い横から卍蹴りの様に蹴ると、その勢いを手と肘を使い更に加速させる。ブレイクダンスの様に半周回ると脚の膝裏で腕を絡めながら、ガード不可の斜め下の踵落としを顔面にお見舞いした…
『喰らえ!』
当たった!
…ハズだったが、既にそれは残像…アーチナは体重を落とし身を交わしていた…いや、
深く深く完全に尻までテーブルに落とし、その勢いで再度腕を捻り突きを放つ。
『その程度…
見切っている!!』
『クソッ!』
流石に読みきれなかったか、シズは頭をゴンッとテーブルに打ち付け、咄嗟に腕で突きから腹部を守る、捻りにより回転も加わっている為シズは回転しながら、テーブルより吹っ飛び、観客の灰色猫族達へダイビングした。
その毛皮のクッションのお陰でシズは殆ど無傷だった。
『やるじゃねぇかアーチナ!その自慢の頭でっかちをかち割ってやろうかと思ったのによ』
『おあいにく様、そんな貧相な蹴りは当たりませんねぃ…腹黒い貴女に収まっている、可哀想なマタタビミルクを出してあげますよ』
『言ったなアーチナァア!!』
『誰が頭でっかちか!』
灰色猫族の顔を踏みつけテーブルに向かったシズと、迎撃するべく上段の回転蹴りを放つアーチナ…、その間に音もなく割って入るトーニャ…。
『はい!お仕舞い!』
詠唱を済ませていたトーニャはオーラ状の[金剛の盾]をシズに向け、ガンッとぶつかる音を確認、すかさず盾を解き、白眼をむきながら宙に浮くシズの腕を引くと、後ろ手を縛るように片手でテーブルに組み伏せる、同時にアーチナの回転蹴りの軸足を膝裏を蹴りいれ、軸足を失った影響により勢いをつけテーブルに突っ伏す形で倒れるとその隙を見逃さずトーニャは脚と尻を使い、アーチナの脚を4の字固めする事により。アーチナもうめき声を発し動けなくなった。
騒がしい原因を取り押さえた事により、辺りは静まり返る…っと思ったが、周囲のガヤ達の拍手と口笛、賭け事をしていたのか怒号と歓喜が飛び交った。
『お見事!流石トーニャだ!!』
『おーまさか、トーニャの姉さんが決めるとは…』
『この試合はどっちの勝ち?まさか第三勢力も見越してなら…大損だぞ!!』
『回し蹴りいいなぁカッコいい!』
『楽しかった!また頼むぞ薬屋!受付嬢!』
『よし!満足したし皆帰るか!!』
『馬鹿野郎!暴れてもいいが片付けしないで帰るな!出禁にするぞ!!』
恰幅のいいコック帽を被った料理長が包丁を二本持ち出入り口を制圧し、楽しかった空間は、絶望の表情に染まり、皆は片付けが終わるまで帰れないのであった…。
『止めたのになんで私まで…』
トーニャは涙を浮かべながら箒を手に取り1人ごちる…。
《あー、あー、トーニャ!聞こえる!?》
《え?ハナ!?【鳳凰の嘴】もやっぱり使えたんだね!?でもココの猫族皆に聞こえちゃうけど…って皆んなが反応してないって事は…コレもハナ仕様なの?》
《そう!指定した人しか送れないみたい!そっちも片付け大変そうだし、とりあえず時間潰しがてら少しダンジョンに潜ろうと思う!また連絡するねー!》
《内緒話ができるなんて…便利でいいなぁ…
って!ダンジョン!?夜は危ないって言ったよ!?辞めときなよ!》
《大丈夫大丈夫!私他にも技あるからいざとなったら帰って来るし!あっ、後神さまにもあったよ!じゃあ行ってくるね!》
《わかっ…えっ!何!?神様!?ちょっまだ…》
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『よし!コレでトーニャにも報告したし!行きますか!』
意気揚々とダンジョンに向かうハナは、憑き物が取れたように足取り軽く進むのであった。