転生のキッカケ
木漏れ日がベッドを照らし、徐々に日差しの傾きが少女の瞼を照らそうと伸びてくる。
腕でその明るさを塞ごうとしながら、枕元に置いていたスマホを手探りで取り出し、腕の影の隙間から画面を見る。
あっ…アラーム鳴ってない
『はぁ…、これはまたやらかしたな…』
朝起きるのは憂鬱だ、ベッドが恋しい…いつになっても起きあがるのは辛い…。
モゾモゾ
『ハナー!そろそろ起きなさいー!」
下でお母さんが呼んでいる…
多分何度も声を掛けていたけど中々起きてこなかったから少し声色に怒気を感じる…これは早く下に降りなければ!
「今行くー!」
まぁこのやり取りはいつもの事だけどこれはもう慣れた
お母さんの言う通り時間も時間なので布団から跳ね起る…
布団の暖かさを名残惜しみ、少しひんやりするフローリングを踏み締め、部屋の扉を開けるとふわっと朝ごはんの香りが漂ってきた。
2階の部屋から素早くリビングに向かうと流れるようにお母さんに朝の挨拶をし、そのまま洗面台へ直行し顔を洗いお手洗いを済ませて、緩いウェーブ気味の癖っ毛で肩まで伸びた髪の跳ねを手櫛で整え、制服に着替える。
テーブルにはサラダにベーコン、目玉焼きとバタートーストいつもの朝食が既に用意されていた。
私は朝は嫌いだが、朝ごはんは好きだ!
だが私はコレを味わう暇もなく僅か2分で食べる必要がある…
何故かって?
それはもちろん
「遅刻だー!」
「いつもギリギリに起きるからでしょ!」
まぁそんな時もある。
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『急げー!!』
玄関から勢いよく飛び出し、家の塀を肩で掠めるかの如く最短距離で右に曲る、出勤や通学の時間帯のため人通りがポツポツ増えてきた住宅街を真っ直ぐ突き進むと、見晴らしが良く交通量の多い交差点へ辿り着く。
この大通りの交差点を越えて、次の角を曲がると学校までもう少し!
頑張れ私の足!
見よ!県大会を優勝した私の脚力を!
家から割と近いのでいつも時間ギリギリに寝てしまう癖があるからいつもこの脚力を頼ってしまう…まぁ間に合えば良いんだよ細かいことは気にしちゃダメだ。
どうやら信号が変わったらしく、
交差点の左右からの車の往来がピタリと止んだ。
やった!!待たずに済んだ!ラッキー!
この機を逃さぬよう青に変わった信号を見ながら、交差点を素早く駆け抜ける。
ここの交差点さえ抜けれるなら学校に間に合う!!
そう溢れんばかりの笑みを浮かべ、
いの一番に駆け出したため、誰もいないスクランブルな横断歩道の真ん中あたりを過ぎた時
ミシッ…パキッ
周りの音を置き去りしにしたかの様な妙な静けさの中に、
アルミ缶でも潰したかのような音がハッキリとだけど微かに聞こえた。
ふと足元を見ると、地面を中心に半径3mほどの典型的な魔法陣と呼べそうなものが描かれ輝いていた。
「え?、何こr 」
それを確認した瞬間。
ガリガリガリガリゴゴゴウウンッ!!!
巨大な掘削機が耳元で稼働してるかのような轟音が響き、
その魔法陣のようなものからまるでシャボン玉のように膨らんだ黒い塊が、金縛りの様に身動きの取れないハナを飲み込んだ後、地面のアスファルトを削りながら押し退けると完全な球体になった。
ゴンッ!!
『ウグッ!!』
黒い空間に閉じ込められた身体は、何が何だか分からないまま急激に迫ってくる壁に叩きつけられた。
顔面が壁面に衝突し、前歯と鼻が折れた痛みを感じる暇もなく、まるで子供が持っている虫籠の中の虫のように上下左右分からなくなる位振り回すような規則性のない暴力が続く…。
ハナの意識は初めの段階で既に失われていたが、本能で頭を防御しており、腕が折れると守っていた頭蓋骨が無防備になった途端に容赦なく砕かれる…脚など初めの段階に折れ中身が見えていた。
自分を中心に見えない壁に囲まれ、呼吸さえ許さない衝撃の連続に、身体が耐え切れる筈もなく
『………』
ハナの命はここで尽きた。
青空と削れたアスファルトの対比の狭間に浮かぶ
血の滴る小さな黒い塊を残して。
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