どこでもない公園で
気がつくと僕は、どこでもない公園の近くの道路に車を停めてアボカド味のホットドッグを食べていた。
モグモグ、むしゃむしゃ。
細かいお天気雨が空から降ってきて、フロントガラスをポツポツと湿らせて行く。近くの家の屋根に取り付けられたソーラーパネルは、微妙な天気のせいで働くべきか否か判断に迷っているように見える。車のハザードランプは、規則的な速度でカチカチと点滅を続けている。
でも僕はそんなことはお構いなしにホットドッグを食べ続ける。
モグモグ、むしゃむしゃ。
隣の公園では、コートを着た老人がゆっくりとした動作で散歩を続けている。まるでずっと前に落とした無くし物を探しているみたいに。クリーム色のミニチュアダックスフントを連れた身なりの良いおばさんが、その隣をせかせかとした足取りで通り過ぎていく。
でも僕はホットドッグを食べ続けている。
モグモグ、むしゃむしゃ。
その公園はどこにでもあるような公園だった。三角形をしていて、3つ並んだ鉄棒があって、子供が中に隠れて遊べる遊具がある。公園のほとんどを占める草地では、一羽のカラスが何かをついばんでいる。草地の脇の歩道には、等間隔に石造りのドーナツ型のベンチが並んでいる。その奥には、不思議な形をしたオブジェが建てられている。
僕はただホットドッグを食べ続ける。
モグモグ、むしゃむしゃ。
公園の僕の車が停車している側には一列に木が並んで植えられている。でも冬で葉が散ってしまっているせいで木の名前は分からない。いや、春になったとしても分からないかも知れない。正直なところ僕は植物の名前にあまり詳しくないのだ。
そういえば何でこんな所にいるんだっけ?そうだ、僕はチェーンのコーヒー店でコーヒー豆を挽いてもらって、そのついでにアボカド味のホットドッグを買ったのだ。でも大晦日で店内はすごく混んでいたから、別のところで食べることにしたのだ。
僕は車でしばらくの間彷徨っていた。どのくらい走っていたかはよく覚えていない。ついさっきの事だったはずなのに。5分くらいだったような気もするし、あるいは1時間くらい適当に走っていたような気もする。それは正しく出鱈目なドライブだった。そしてとにかく気づいたらこの公園に着いていたのだ。でも公園に車を停めるスペースはなかったし雨も降っていたから、仕方なく僕は車の中にいるのだ。
そんなことを考えながら僕はホットドッグを食べ続けた。
モグモグ、むしゃむしゃ。
食べ終わってからしばらくの間、僕はフロントガラスに音もなく降り続けるお天気雨を眺めていた。座席の横のカップホルダーからコーヒーを手に取り、時間をかけてチビチビと飲んだ。ホットドックのついでに買ったトールサイズの「本日のコーヒー」は少しぬるくなっていた。このクセのない味わいから判断するに、本日のコーヒーはブラジル産の豆かも知れないとか何となく考えてみた。でもテレビ番組みたいに正解が発表されることはなかった。世界の謎というのは基本的には解明されないものなのだ。今からあのコーヒー店に戻って聞けば分かることなのだろうけれど、ここからどうやったら戻れるのか皆目見当も付かなかった。




