第9話 資料
(なるほど、わからん)
俺は出入口付近、1番近くの部屋で集めた資料を読み漁った。
そして、その成果に関してなのだが……、残念ながらほとんど無かったのである。
いや、全く無いってことは無いのだが、そのほとんどがどうでもいいことだった。
(ほとんど文字が掠れて読めないうえに大体が研究員の愚痴……、これは重要書類のほとんどが持ち出されてるか隠滅したと見た方がいいか)
襲撃なら持ち出せなかった資料があるかと思ったが、考えが甘かった様だ。
だが、僅かではあるものの、新しく得た情報もある。
その1つは兵器化した自身の名前である。
(【強化生物魔科学兵器マギルト】か)
拾った資料に沢山出てきたマギルトという名と、本文は掠れて読めないが、大きな見出しとして書かれたその正式名称。
この施設で開発されていたのは俺だけみたいなので、俺の兵器名称と考えて良いだろう。
随分と……、本当に随分と大層な名前である。
(長い……)
ただの生物兵器では駄目だったのだろうか?
魔科学というのはたしか魔法と王国の隣国、帝国が発展させている科学を合わせた技術だったはずだ。
ラウネが最近の魔導具にも多く組み込まれ始めた技術だと、旅の道中よく熱く語ってくれたので覚えている。
その技術を使って、人の兵器化なんて前代未聞な事を完成させたのだろう。
(まぁ、その辺の話はどうでもいいな)
さて、その他に有用な情報となりそうなものといえば、殴り書きされたメモがある。
『魔科学兵装』、『同化機構』、『サイレントコア』、『フォーロルシステム』、『モードシステム』、『COHAS』。
ラウネの部屋で見つけたメモの為、俺の兵器化に関係があったものである事は間違い無い。
しかし、恐らく専門用語であろう、これらの単語が指し示す物は一向にわからなかった。
(所詮壁に貼られたメモだからな。全容が書いてあるわけでも無いし、余り宛にならんか)
何となく、この鎧に搭載されている機能である事は推測できるが、それを確かめる術もわからない。
機能の名称を知ることが出来ただけマシだと考え、納得する他ないだろう。
(得られた情報は大して重要に感じないものがたったの2つ……、我ながら少ないな……。あぁ、気になる事はもう1つあったか)
そして、俺は研究員の愚痴等が書かれた日記達をもう一度見る。
その最後のページは、全て俺の施術が始まった7日目で途切れていた。
8日目以降書かれているものが1つも見つからないのだ。
(案外、これが1番重要かもな)
まず間違いなく、7日目と8日目の間に何かあったと見るべきだろう。
ここで得られる情報はこれが限界だと思うが、何処かでもっと詳しく知る機会があるかもしれない。
覚えておいて損は無いはずだ。
俺はそう結論づけると、資料を片付け外に出る準備を始めた。
いよいよ外に出ようと思う。
話の中で今の所説明する事が無さそうなので補足説明
[TOPIC]
魔法ペン
ネーミングそのままな文字に魔力を込められる魔法のペン。
種類は様々で宙に文字を書けたり、数万年文字を残せたりするペンと用途も様々。
王国では貴族には当たり前のように広く普及しており、平民でも裕福な商人などにはそこそこ使われていた。