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第6話 兵器化

 取り敢えず、今の俺の姿を、詳細に纏めよう。


 まず足には今の所おかしな所は無い。

 見た目はともかく、少し大きくて頑丈な分厚い鎧で通るレベルだ。


 胴体周りも足に比べると造りが少し細いくらいで、オーダーメイドやサイズが自動調節される魔鎧なら存在してもおかしくない程度の見た目だ。


 ここまでは良い、問題は腕からだ。


 何故か腕の外側と肩の表面は刺々しく、肘から手首までの棘は少し曲がっていて、太く長い。

 そして手は、前述の通り、長い爪の様に縦に鋭くなっている。

 親指と人差し指をくっつけると、間に挟んだものは切れそうな鋭さだ。


 そして、一番の問題は頭部だろう。

 というより顔か。


 魔王討伐の度をしている頃、よく強面と言われる冒険者達が周囲から怖がられていた事を思い出す。

 魔物に関しても、顔が凶悪な奴ほど、恐ろしい事が多いと教えられていた。


 そして、今の俺の頭部は全面マギハルコンで覆われていた。

 それだけならまだ良かったが、問題はその模様だ。


 顔には十字の模様が入っていた。

 ただし、その模様は長い棘が複雑に絡まる跡で、十字の中心部分に向けて縦からも横からも太くなった棘の編み込みが荒い、見ようによっては十字に裂けそうな口に見える造形である。


 どう考えても明らかにモンスターな見た目である。

 人と会ったら『魔物だ!』と言われて攻撃されてもおかしくない見た目だ。

 俺なら見た瞬間にすぐさま攻撃体勢へとうつっている。


「……」


 勇者として、魔王を討伐するまでも化け物だと散々言われてきたが、まさか、本当に化け物になるとは思わなかった。


 ラウネは、何を考えてこんな造形にしたのだろうか?

 こんなのを戦場に投入したら味方の士気も下がりそうだが……、最悪攻撃される。

 案外、本当に俺が嫌いだったのかもしれない。


 俺は考え込み、無意識に一瞬手を顔に当ててしまったが、加えた力が軽い力で同じ材質だからか切れない。

 ほんの僅かに表面が削れる感覚はあった為、その圧力は感じて痛みは伴わなかった事で、この金属が俺の体に纏わり付いているだけである事を確信できる。


 俺の肉体全てが金属に置き換わった訳ではないとわかり、それだけは救いであった。


 しかし、この鎧を外せない(そもそも外す手段があるのかわからないが)為、俺はこの姿で過ごさなければならない。


(はぁ……)


 俺はこれから予測できる苦労に頭を悩まされながら、探索を再開する事になるのだった。


 ■


 俺は他に情報がないか、部屋の中を隅々まで探索した。

 その結果は収穫無し。


 それもそうだ。

 魔導具は全て機能停止状態で、部屋の有様では紙媒体での記録等も望み薄で、案の定何も残っていない。


 『例えダメだとしても、やってみるまで結果はわからないだろ?』という、フレンの言葉を思い出し、実行に移してみたものの、やはり得る物は何も無かった。


 ……いや、1つ不自然な所はあったな。


 俺は疑問に感じた点を思い出し、部屋を見回す。


 風化が激しい。

 襲撃とは別にまるで何年もの間、放置されていた様だった。

 部屋の隅には大きな亀裂が入り、植物が僅かに見えている所さえある。


 明らかに数年、下手すると数十年は経っていてもおかしくない寂れ具合だった。


 ラウネは10日程で処置が終わると言っていたが、何らかの事情で放置せざるを得なくなったのだろうか。


(今があれから何年経っているのかも気になるな)


 とはいえ、此処で得られる情報はこれぐらいだろう。


 そうなると、部屋の外、最終的には研究施設の外に出たい所だ。

 俺はその障害になる物の前に立つ。


 そう、これは扉、実験対象を逃がさない為の大きくて頑丈なゲートである。

 この部屋の出口は此処しか無い。


(と、なると壊すしかない訳だが……)


 俺は手の爪を鋭く先端に合わせ、勢いのままに扉を貫こうと突く。


 体感でも魔王の四天王の1人、防御力に絶対の自信を持っていた鉄壁の巨将はともかく、他の3将にはそれなりのダメージを与えられる威力は出ていた。


 しかし、扉に入ったのは僅かな傷のみ。


(……やはり、厳しいな)


 無傷では無いので、何度も繰り返せばいずれは壊れるだろうが、それには相当な時間がかかってしまう。

 元勇者を改造した、生物兵器を拘束する部屋なのだから当たり前だが、この扉はそう簡単に壊れる代物ではない。


 どのくらいの厚さがあるかはわからないが、それでも地道に掘るしか無いか?

 ――いや、その必要は無いだろう。


(成程、素の力で(スペック)はこれぐらいか。それならこれはどうだ?)


 俺は兵器化した後の素の力を確かめられたので、もう一度両腕を広げる。


 魔法が使えれば一撃で壊せただろうが、魔法は使えない。

 だが、魔法を行使できないだけで魔力自体は体を循環している。

 自身の体内をスキャンできたのはその証拠だ。


 ならば、単純な魔力強化も可能なはずである。


 俺は爪に魔力を纏い、全力の一撃を放つことにした。


(流石はマギハルコン製の全身鎧だ。魔力の伝達効率も蓄積可能容量も凄まじく多いっ!)


 むしろ、込められすぎな程に魔力の巡りが良かった。


 自分でもどれだけの威力になるかわからない。


(これは、一撃で結構削れるかもしれないなっ!)


 俺は爪を振り上げ、一気に扉に向けて交差するように振り下ろす。


 ――瞬間、黒の爪撃が扉を引き裂いた。


 1メートル近い分厚さもあった扉はブロック状に切り裂かれてバラバラになり、それどころか奥の壁にまで深い爪痕を残している。


 その破壊力に、流石に驚いた俺はその場に立ち尽くしてしまうのだった。

主人公はゲームとかだと、アンデッドと物質系足した感じの見た目。

色は黒寄りの灰色です。

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