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第5話 目覚め

 これは一体どういう事だろうか?


 俺はラウネによって、王国の城の地下、その研究施設で兵器化の実験を受けていたはずだ。


 当然、目を覚ます時はまた、研究員かラウネに囲われていると思っていた。


 しかし、今はラウネどころか周囲には誰の気配もしない。


 いや、そもそも、何故ここまで周りがボロボロなのだろうか?


 俺は呆然としながらも、取り敢えず現状を把握しようと装置の外に出ようとした。


 ガシャン


(ガシャン?)


 俺の動きに合わせて、何か金属質な音が響く。

 その時気づいた。


 俺の腕と足、いや、体全体が何かに覆われている。


(これは……マギハルコン……?)


 魔法金属マギメタルと、最も硬い金属と言われるオリハルコンの合金だ。

 耐久力では純正のオリハルコンに劣るが、魔力伝達効率等で上回る非常に希少な金属……と認識している。


 そんな金属が、まるで鎧の様に、俺の体全てを覆っていた。


 いや、魔力で体内をスキャンすれば、液体金属マギアンロスタニウムが血と同じ様に流れていたりと、俺の体は内外問わず、様々な希少金属や魔導具で構成されるようになっているようだった。


(成程、兵器化実験自体は無事に成功していたのか)


 なら、なおさらわからない。


 何故、誰も俺の様子を見に来ないのか。


 俺は実験体とか被験者と呼ばれる存在じゃないのか?

 それが目覚めたのに様子を見にくるどころか、人の気配1つ全く無いことがおかしいのは俺でもわかる。


 明らかな異常事態だった。


 部屋の様子を見るに、何かの襲撃でもあったのだろうか。


 俺は外の様子を探る為に、《探索》魔法を……使えなかった。


「……!」


 魔法を構築しようとすると、構築し終わる前に魔力が霧散してしまう。


 挙句、ご丁寧に構築した魔法を打ち消す反魔法まで、纏う金属によって自動で組まれた様だった。


『魔法の行使は許可されてません』


 驚く俺の前に、青地に白い文字で書かれたパネルが現れる。


 驚いた拍子に顔が少し動いたが、パネルはしっかりと正面に追尾してくる。

 どうやら、このパネルは俺の顔の動きに連動しており、俺の目に直接映しているようだ。


 ――これがラウネの言っていた、俺を制御するって意味か。


 そして、もう1つ気付いた事がある。


「……っぁ!」


 声が出せない。


 口は開くのだが、声を出そうとしても僅かな呻き声が出るのみで、声にならないのだ。


『エラー:発声器官が機能停止しています。至急、メンテナンスを行ってください。エラー:参照する言語がインストールされていません。至急、参照する言語機能をインストールしてください。』


 再度、全体的に青いパネルが表示される。


 流石に、話す事にまで許可は要らないみたいだが、機能が停止しているらしい。


 インストールされてない事に関しては、そもそも俺が自由に動けている時点で処置が完了しきっていなかったのだと推測できる。

 制御したかったのなら体の自由を奪う事は必須レベルだ。

 それがされていない時点で実験は未完成であったと考えられる。


 施設の状態を顧みるに、実験途中で襲撃……何かしらのアクシデントが発生したのだろうか?


 しかし、それにしても参ったな。

 自由に動けるのは助かるが、話せないとなると、誰かと会っても会話ができない。


 他にコミュニケーション手段となると……筆談だが、自身の手を見てそれも無理だと悟る。


 幾十にも層を象るマギハルコンの鎧は、手にもしっかりと纏わりつき、その形は長い爪のようになっている。

 これでは何も持つ事ができないだろう。


 そもそも、俺は今どんな姿をしているのだろうか?


 自身の全体像を見ていない事に気づいた俺は、コミュニケーション手段を探すことは後回しにし、姿を写せる鏡のようなものを探して室内を歩き始めた。


 しかし、どれもひび割れていてとてもじゃないが、自身の姿を把握できない。

 かなり暗いので、視界が余り良くないというのもある。


(ん? 薄暗いだけ?)


 考えていてこの状況がおかしな事に思い至った。


 此処は王国の地下の研究施設、照明魔導具は全て切れていれば、()()()()()()()()()()()()


 魔法も使って居ない肉眼で、少しでも見えている事がおかしいのだ。


(暗視機能付きか……)


 調節機能とか無いだろうかと考えて意識すると、視界がかなり明るく広がった。

 恐らく、魔法を封印する代わりに機能を持たせているのだろう。


 使える機能はありがたく使わせて貰おうと、そのまま鏡探しを続行する。


 (これなら全身を確認できそうだな)


 しばらく部屋を見回すと、所々ひび割れているものの縁の部分だけで、俺の全身をかろうじて写しきれる姿見を発見した。


 (これは……)


 俺は自身の姿を見て絶句する。


 マギハルコンで覆われていたのは全身であった。


 そう、全身だ。

 足のつま先から手の先、そしてフルフェイスの様に顔全体まで、その全てが覆われていた。


 らせん状で幾十にも層になったマギハルコンで全身鎧の様な形を象る人型の兵器、それが今の俺の姿だった。

次回、主人公の詳細な姿を描写予定


〈TOPIC〉

マギアンロスタニウム

通称、消失しない魔法金属

膨大な魔力容量を持つ液体の魔法金属で魔力伝達効率も非常に優秀だが、この金属に込められた魔力は如何なる手段を持ってしても総量が変化しないという非常に希で最大な特徴を持つ。

本編では使っても消耗しない特性に着眼し、主人公の兵器化で使用されている。

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