恋の上手投げ
あたしは琉ちゃろのお葬式に参加しなかった。
琉ちゃろが死んだなんて認めたくない…!!
ご飯も喉を通らない日々…。
学校なんて行く気になれない。
身長155センチで85キロあった体重が75キロになった。
このままじゃお腹の赤ちゃんが…。
あたしの琉ちゃろの愛の証。
「せめて赤ちゃんの定期検診に行かなくちゃ…」
重い腰を上げてバス停へ向かう。
少し大きくなったお腹を撫でる。
涙が出てきた。
「琉ちゃろ…会いたいよ…。でも、あたしママになるんだから…もう泣かない…!!」
うつむいた顔を上げるとそこは両国国技館の前だった。
大勢の人だかりが出来ている。
興味がないので通りすぎようとするとダフ屋のオヤジに声をかけられた。
「お嬢ちゃん!今なら最前列3000円!気晴らしにどう?スカッとするよ!」
気晴らし…。
長いこと引きこもってたあたしは気晴らしなんて考えたことなかった…。
「じゃあ…1枚…。」
席につくと土俵がとても近い。
必死で戦う力士達。
「あたしもこんな風に強くならなきゃ…!」
そう決意すると、ある力士が上手投げをして私の方へ飛んできた。
「危ない…!!」
あたしは大きな力士の下敷きになり意識を失った…。
つづく。