たとえば、九曜千暁【二】
周囲の期待とは裏腹に、自分,九曜千暁天才ではないと早い段階からわかっていた。
他人が片手間で、6、7割で成功できることが自分は10割やらなきゃついていけなかった。
たまに皆に憧れて全力で挑まないことがあれば神の試練だと言わんばかりに失敗という名の崖に叩き落された。
手を抜かないことが覚えられると前向きに挑む反面、どうして自分だけと塞ぎ込む日もあった。
それでも認めたくなくて必死に演じてきたんだ天才というものを・・・
「はい、今回の総合実力テストも一番は千暁君でした!みんな拍手~!」
割れんばかりの歓声。
幼少の頃より神童として名を轟かせ、名門校においても彼の実力は留まることを知らなかった。
そこに彼の才を疑うものはいない。かく言う本人にも疑う余地は無かった。
「ちぇ~、また千暁かよー。前回の総合テストもこの前のスポーツテストも1位だったじゃんか」」
「すごいよね九曜くん!あーゆうのを天才っていうんだろうな~。」
「っなに・・お前、もしかして、あっあいつのこと好きなのかよ!?」
「別にー。でも、他の女の子からはすごい人気だよ。柊と違ってモテモテだね?」
そう言って悪戯そうに笑う汐織
「ふ、ふーん。そっか好きじゃねーんだ・・」
「なんか言った?」
「っなんでもねー!次こそは勝つって言ったんだ、あいつにもおまえにも・・」
「ふふ、今回も7位だったもんね?うん!がんばろーねお互い!」
「ああ、ここでトップ取って第一級学園ではぜってー特選組取ってやる!」
「千暁、今回も完敗だよ。さすがだな。」
「まあなー、よゆーよゆー」
「はは、毎回、目にでかい隈つけてくるくせによく言うよ」
「うっ、」
「ぼく、千暁のそうゆうところほんとに尊敬してるんだ。
これからも親友でいようねぼくたち・・」
「当たり前だろ、なんだよ急に」
「なんとなくかな」
どこか安心したように楽しそうに笑う誠吾・・・
あの日以来、誠吾の笑った顔を見ていない
いけない。少し居眠りしていたらしい。気付くと授業は終わっっていた。
それにしても居眠りなんて疲れてるのかな・・。それに昔の夢なんて・・
そーいえばさっきから廊下が騒がしいな、一応様子を見に行ってみるか・・