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第四話


プルルル


プルルル


はっ‼︎


携帯の着信により正気を取り戻した麗司はスマホの画面を覗いた。

沙也加からの着信とメッセージが来てる。


すまん、今日は風邪ひいて学校行かねえ‼︎

カラオケも行けねえ‼︎すまぬ


とだけ返信して、麗司は公衆トイレを出た。

外に人気がないのを確認しながら、麗司は隠れるようにしながら家を目指した。

途中すれ違う人々が麗司を見つめているような気がした。

自らが犯した罪が麗司の意識を過剰にした。

そうやって、麗司は人生で1番長い家路を急いだ。


自宅が目視できるほどに近づいた時、

麗司は全速力で走り出した。


「麗ちゃん」


その時、誰かが麗司を呼び止めた。


「お帰りなさい。学校はもう終わり?」

お隣の叔母さんだった。


「はっ、はい。

体調が悪くて早く帰ってきました。」


「まあ、大丈夫?

すごく顔色が悪いわ。

今日もお父さんとお母さん遅いの?

何かあれば、おばさんにいつでも頼っていいのよ。

そういえば今日、駅で飛び込み自殺があったみたい。

飛び込んだ人はすごいおば」

「すいません、体調悪いんで僕、

失礼します。」


「あら、ごめんね。お大事にね。」


麗司は玄関を開けてすぐに鍵を閉めた。

麗司の両親は共働きで普段この時間に家にいる事は滅多にない。


麗司は台所の棚からコップを取り出し、

水道の蛇口をひねった。


コップから水が溢れると、

その水を一気に飲み干して自分の部屋に向かい、

ガチャリと鍵をかけた。


開いていたカーテンを閉めると、

学校カバンのファスナーを勢いよく開いた。


中に入っていた体育着を取り出すと、

教科書や筆箱と一緒にやはりそれはあった。

幻ではなかった…

麗司は自分が犯した事の重大さにもう一度恐れ慄きながら、

その美しい物体を取り出し机の上に置いた。


白くしなやかな右腕。


麗司はゴクリと息を呑み、

またもやその美しさに自らの意識を掌握された。


男のように角ばった筋肉質な腕と違い、

それは丸みを帯びたフォルムで五本の長く細い指の先端に至るまで傷一つない物体。

何度も見た事のあるはずの人間の腕であるにもかかわらず、

それは麗司が全く知らない何かだった。


限界まで膨らんだ水風船のように、

彼の欲望は膨れ上がり爆発を迎えようとしていた。


麗司は自分の左手を、その美しい右腕の手に重ねて指同士を絡めた。

その双方の手は、雄しべと雌しべがくっつくように、キュッとしまり、

麗司の手から流れ込んだ快感は、

麗司と頭に流れ込み、

脳にある快楽のカプセルを解放した。


ゾゾゾゾゾ


それはアリの大群が身体中を這い上がるように、

電撃が身体中に走り回るような速さで、

麗司の身体を包み込んだ。


あっ、あっ、びく、びくびくびくッ


麗司の快楽が頂点に達して、

頭の中で爆発が起こり、

麗司の視界を白いフラッシュで包み込んだ。


その恍惚とした意識の中で、

麗司は今朝の女が微笑みながら目の前に座っているのを見た。

その微笑みに顔を近づけて唇に唇で触れようとした時、

その女の瞳はカタツムリの目玉のようにビュっと飛び出して、

獣のような大口を開けて彼に遅いかかった。


うわっ‼︎


気づくと目の前の女は消えていた。

麗司のズボンは冷たく湿っていた。



冷静に戻った彼の心に、暗い闇が津波のごとく押し寄せた。


「この手、取らないと…」


麗司は女の腕を掴み、自分の手から引き離そうとした。

その時、女の手はがっしりと麗司の掌を握り込み、そのまま指を食い込ませた。


「いてええ‼︎」


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