キッカケ
愛というのはどう身につけるか。その大抵は家族から、あるいは友達だったりする。では、その教えてくれる人達がもとからいなかったらどうなってしまうのだろう。この物語はそんな「愛」を欲する者の葛藤を描いている。
あぁ、聞こえてくる。いやでも聞こえる。
「あー、私ね専門学校にいくのよ」
「へー、そーなんだ。私は大学に行くんだよね。
なぜなら公務員になって安定した暮らしがしたい
からね」
教室で繰り広げられる友達同士での進路についての会話。
俺は足早にこの教室からでる。俺の家はここから近い。なぜなら小さい時に両親が他界して、祖父母の家にいて、中学卒業と同時に学校の近くにある今の一人暮らしの家に引っ越したからである。
今日もまたボーっとしながら家に着く。帰ってからもずっとスマホをいじる。何も変わらない1日である。
今日は金曜日。休みの二日間何をしよう………。
自分のベッドで出た独り言。
そんな時に突然家の電話が鳴った。
どうせなんかしらの勧誘だろ。それでもまぁ暇だからいいか。受話器を取る。とった瞬間聞き覚えのある威勢のある大きな声が聞こえた。
「おお、純か?」
俺の育ての親、祖父だった。祖父は田舎で祖母と二人暮らし。定年を過ぎた後は未知のものを作ると言い、家で研究に没頭していた変な人である。
「どうした?」
「ついに完成したんだよ!!!」
「何が?」
「わしが何年もかけて作った発明じゃよ!」
「ふーん」
受話器を切ろうとした。
「オイオイ待て待て待ってくれ頼むから」
「その発明を見せたいから家に来い、と?」
「ここ最近来てないじゃろ?」
「行くわけないだろ。あんたの自己満足に付き合っ
てる時間はないんだ。」
いやまぁ実際にはあるんだがな
「いや、そんなことはないかもしれんぞ。お前にと
って大事なことをしるチャンスだ」
「?」
「そんじゃ明日待ってまーす。」
ブツっ。切れた……………。そんなこんなで行くことになってしまった。