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3(穴居人からの文化的進歩)


   *


 さて、お気付きのように、一美は異界往来全裸問題の解決はもちろんのこと、持ち帰りの術も会得している。おめでとう! 穴居人からの文化的進歩! 君を歓迎する。

 教示してくれたのは金星人だった。そう名乗られたので疑う理由はなかった。たいそう綺麗なブロンド美人だったので、信じるに足りた。ガニメデ人が巨人であるように、金星人はブロンド美人と決まっている。

 ブロンド美人の金星人は文字通り世界を掌中に収めており、唯一無二の存在であったが、来訪者はしょっちゅうあるようで、至って親切であった。

「こうこうこうでな」親切なブロンド美人の金星人は、身振り手振りで、「こうなのだ」

 大変分かりやすかったので一美は直ぐに習得した。具体的な手法についての解説は割愛する。囚人が使うポケットのようなものである、と云うことでお察し頂きたい。抜け道は世の常である。


   *


「裸?」

 期末試験が終わり、答案返却までの猶予期間に、さっちんがお泊まりで遊びに来た。

「今日は脱がないの?」とさっちん。

「お客様がおりますゆえ」と一美。

「ふーん?」さっちんはくりっと可愛らしく小首を傾げ、「お友達じゃん?」

「脱げと申すか!」

「窮屈に思ってたら、かわいそうだと思って。お友達として、あたしも脱いだがいい?」

 なるほど、そうきたか。一美はちょっと考え、「ここは文明社会だ」散々、非文明的格好で異界を渡り歩いた小娘がのたまう。

 一美とさっちんは、高校に入学したこの四月、席順で隣になったのが縁で話すようになり、なんでかウマが合い、放課後だけに飽き足らず、こうして互いの家にお泊まりをする仲にまでなったのである。

 誤解され易いが、さっちんは優秀である。特に誤解しているのは一美なのだが、本人に自覚はない。灯台下暗しとはこのことだ。さっちんが好んでするデコ出しポニテはホントに眩しい。

「カズミってスタイルいいよね」

「そう云う話でなくて」

 初日に名簿を見て声をかけて以来、さっちんは一美のことを「カズミ」と間違えたまま押し通している。四月の下旬くらいまでは訂正したが、既にクラス全体に普及し、担任にまでそう呼ばれるようになったので諦めた。誰もヒトミって呼んでくれない。

「おいこら触るな」一美は、ショートパンツの剝き出し太股を撫でるさっちんの手を雑に払った。

「ええやん、減るもんでもないし」

「減るんだよ」変態め。お返しとばかりにさっちんのケツを鷲掴みすると、「ひゃっ」マジでビビって、やった一美が驚いた。

「おなら出た」

 しょんぼりするさっちんに罪悪感を憶え、一美は下腹に力を入れ、屁を放った。

「なんなの、もう」さっちんがお腹を抱えて笑い転げ、一美の気分もそれで晴れた。


   *


 カマボコ板に釘を打つという、まことに奇矯な行為でも、一度や二度なら「あの家の娘は少しアレだ」とか云われたりするかも知れないが、常習となれば、「あの家の娘はかなりアレだ」と周りがどうあれ、本人はもとより、家族間でも「まぁうちの娘はアレだし」とか「俺の妹はアレだ」となるものの、「まぁアレだからね」とわりかし普通のことだと思われるようになる。や、それ間違いですよ。

 一美は異界を渡り歩き、精神生命体から感応能力、つまりテレパスを修得し、ミュータントの世界で念力を修得し、進化の星で身体強化の技術を修得し、超機械文明から様々なテクノロジーを伝授をされ、灼熱極寒の地でエントロピーを操る術を修得した。

 早速さっちん相手に、混ぜたミルクティーを、再び紅茶とミルクに分離させて見せた。

 さっちんはすっごくびっくりして。

「なんて素敵にエコロジー!」

 良く分からなかったけれども、友達が喜んでくれたので嬉しかった。窓の外の街路樹も、黄色く赤く鮮やかに、小春日和を大歓迎。

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