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1(違う世界に飛ばされた)


   初級異界遊山紀行~多元宇宙あたし練り歩き~(22)


 ある日、一美ひとみがカマボコ板に釘を打つと、バーン! 違う世界に飛ばされた。

 自分の部屋にいたはずなのに、外。屋外。しかも裸。床に置いたカマボコ板も、釘も、それを打つのに使っていた金槌もない。

 そりゃそうだ。裸なのだから。

 仕方ないので夜盗になった。或いは現国の教科書に載っている「羅生門」から引用するなら、下人となる。


   *


「……と云う夢をみたのさ」

 一美の話をきいて、さっちんは「へー」と声を出し。「なにこれ美味しい」バナナケーキのひと欠片を、「お食べ、お食べ」差し出した。

 うんまい。一美は手を上げ、店員を呼んだ。

「決断早いねー」さっちんは笑う。

「欲しいものは勢いで決めろってのがウチの家訓なんだ」

「ふーん?」

 どうやら冗談はダダすべりしたらしい。衣替えをしたばかりで、半袖の下の腕がぞわぞわする。店内の温度が一気に下がった。


   *


 カマボコ板はその晩のおかずで、スーパーに並んでいたものである。母が細工をしていないのなら、何も変哲もないただの木だ。では釘は? 右に同じく、父が細工をしていないのなら、何の変哲もないただの釘。

 と、なると、金槌があやしい。が、これまた祖父のものであり、祖父が細工をしていないのなら以下同文。

 一美は考えた。

 原因はしゃがんでいたことではなかろうか。

 そうやって未来人がやって来る映画を観たことがある。素っ裸で。故に、これはかなり信憑性の高い推察と思われた。

 そんな次第で。再現のための追試実験をしてみた。

 バーン!

 成功した。


   *


「……と、云うことなのさ」

 一美の話をきいて、さっちんは「ほー」と声を出し。「ここ分かんないんだけど」古典の教科書をくるりと向けてきた。

 あたしに訊くのか。一美は手を上げ、「いいんちょー」クラスの優等生を呼んだ。

「投げるの早いねー」さっちんは笑う。

「古典は他人に投げろってのがウチの家訓なんだ」

「ふーん?」

 どうやら冗談はダダすべりしたらしい。強い日差しが差し込んで、蝉の声が喧しい。教室の温度が跳ね上がった。


   *


 それからも一美は幾度となく挑戦し、様々な世界を訪れた。立ったままカマボコ板に釘を打つと、無理なのは分かった。しかしそれは支えの問題だった。机に置いてガツンと打てば、バーン! どこか違う世界に行ける。冒険の始まりだ! しかし、裸なのは変わらない。少しは真面目に検討すべきでなかろうかと遅まきながらも考えた。毎度毎度下人となっては閻魔様の前で申し開きできまい。いや、裸族の世界もあったから、その分は割引だ。とは云え、戻ると床に服と下着が抜け殻みたいに落ちており、そこはかとなく事件のニオイがしないでもなく、家族に見られたら面倒になるのは想像に難くない。

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