第九十七話・決意を胸に
オーガの里編、やっと終わりました
意外と長くなりましたね(笑)
エルサと私はブラゴの家に戻った。
ブラゴが豪勢に手料理を振る舞ってくれた。
食卓にはグレンもいる。
私達は思い思いに食事を楽しんでいた。
「ブラゴ義母さん、頼みがあるんだが……」
「何だい改まって」
ブラゴはご飯を頬張りながら頭の上に?マークを浮かべていた。
「私をここに残らせてくれないか…… ?」
エルサの一言に、一同は騒然とした。
「私もお願いします !」
私の一言に、一同は更に騒然とした。
「おいおい !お前ら何言ってるんだよ !」
「俺達はもうそろ帰らなきゃいけないだろ !?」
ヴェルザードとマルクは反論した。
当然の反応だ。
「実はな……」
私とエルサは全員に事情を説明した。
私達は滝壺の前で話し合ったのだ。
強くなるため、この里に残り、修行を続ける。他の皆には先に帰ってもらうと。
「まああたしは一向に構わないけどねぇ、ビシビシアンタ達を鍛えてあげるよ ?」
ブラゴは快く承諾してくれた。
「そんな……二人とも残っちゃうの…… ?」
コロナは寂しそうな表情を浮かべた。
「ごめんね、コロナちゃん……でも必ず戻ってくるから」
コロナは少しの間うつ向いたが、すぐに納得してくれた。
「うん……わかった……ワカバ……お姉ちゃん、エルサお姉ちゃん、頑張ってね」
「ありがとう、コロナちゃん」
私はコロナの頭をそっとなでた。
「たく、まあ良い、お前らが修行を終わるまでの間、仕事は俺達に任せておけ」
ヴェルザードはドンと胸を叩いた。
「ありがとうヴェルザード、私達が留守の間、騎士団を頼んだ」
エルサはヴェルザードの肩を叩いた。
こうして、私とエルサは里に残ることになった。
やがてヴェルザード達が町へ帰る日がやって来た。
ブラゴ、オババやグレンをはじめ、多くのオーガ族達が見送りに来た。
「世話になったな、ブラゴさん」
「また遊びに来てくれよ」
ヴェルザードはブラゴと握手を交わした。
「グレン、もっと鍛えて、強くなれよ」
「ああ、分かってるよ、兄貴」
マルクはグレンと拳を強く合わせた。
「あなた方は里を救ってくれた恩人です、復興まで手伝っていただいて……本当に有難うございます」
オーガ族の人達は感謝の気持ちでいっぱいになりながら、ヴェルザード達に握手を求めた。
「オーガ族って良い奴らばっかだな」
マルクはコロナに向かって呟いた。
「だってガギもそうだったから」
コロナはマルクに向かって微笑んだ。
私達は闇ギルドとしての彼しか知らないけど、コロナにとっては良い兄貴分だったのかもしれない。
「所で、マルクと言ったかの」
「あん ?」
オババはマルクに声をかけた。
「お主は半魚人じゃな ?ということはあの半魚人の村出身かの ?」
「おう、そうだが……それが ?」
マルクはキョトンとしていた。
「ヴィオのことを知っておるな ?」
「ヴィオ……村長の名前だけど、それが何か…… ?」
「やはりそうか !あやつに宜しく言っておいてくれんか ?やつとは腐れ縁でな」
オババは興奮した様子でマルクの肩を叩いた。
オーガ族のオババと半魚人のヴィオは古い付き合いだったのだ。
「おう、いつか村に帰ったら伝えておくぜ」
マルクは胸を叩いた。
「ワカバ、エルサ」
ヴェルザードは私とエルサの方に近付いた。
「ヴェル……」
ヴェルザードは静に握り拳を差し出した。
「わざわざオーガ族の下で鍛えてもらうんだ。半端な強さだったら承知しねえぞ」
「分かってるよ、ヴェル」
「私達はもっと強くなるさ、大切なものを守り抜く為に……」
私とエルサは拳を握り、前に突き出し、ヴェルザードの拳と合わせた。
「じゃあなー皆ー !また遊びに行くからなー !」
ヴェルザード、マルク、コロナ、クロスはオーガの里を後にした。
夕暮れになり、私もエルサは夕焼けを眺めていた。
「エルサさん」
「何だ、ワカバ」
私はエルサの目を見つめた。
「これから大変ですよ」
「ああ、ブラゴ義母さんは相当厳しいからな、この私が何度泣きべそをかいたことか」
エルサは苦笑しながら言った。
「エルサさんも泣きべそかくんですね」
「ば、馬鹿 !子供の時の話だ !」
エルサは照れて頬を赤く染めた。
私はそれが可愛くて思わず腹を抱えながら笑った。
エルサは私に釣られて同じように笑った。
「はぁー苦しかったぁー……」
こんなに大笑いしたのは久し振りだ。
「さ、そろそろ日が暮れる、家に戻ろう」
「はい」
私とエルサはブラゴの待つ家に向かった。
「リト……今までずっと頼りきりでごめんなさい……今度はリトと隣で戦えるよう、私も強くなります、リトの苦しみが少しでも軽くなるよう、頑張ります…… !」
歩きながら私はランプの取っ手を握り締め、強く誓った。
「主……」
ランプの中でリトは小さく呟いた。
「私の中に眠る闇の力、今度こそ暴走させないようにします……もうこれ以上……主を……苦しめないように……」
リトも決意を新たに胸に抱いた。
To Be Continued




