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ランプを片手に異世界へ  作者: 烈斗
オーガの里編
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第九十五話・迅雷鬼剣



「アンタ……グレン……なのかい……手に持ってるそれは……」


ブラゴはグレンに問いかけた。

グレンは白く輝き続ける剣を握りしめている。


「里を滅茶苦茶にしやがって……許さないぞ……」


普段はヤンチャなグレンだが、別人になったかのように静かに怒りを見せた。


「ほう……イフリートの魔人形態が消えたかと思えば、神器に選ばれしオーガの子が現れるとはな……」


デビッドは上空からグレンの様子を眺めていた。


「魔獣……お前は、この俺が倒す !」


グレンは神器を構え、魔獣に向かって走り出した。

神器がグレンの魔力を引き出している為、身体能力が大幅に向上していた。


「はぁぁぁぁぁ !」


魔獣はすばしっこく動き回るグレンを狙い、何度も脚で踏み潰そうとした。

だが並外れたグレンのスピードでことごとくかわされ、魔獣は翻弄されていた。


「まさか……あの子が……伝承の…… ?」


ブラゴは弟の見違えた姿を見て、呆然としていた。


グレンは目にも止まらぬスピードで魔獣に剣撃を浴びせた。

神器による切れ味は凄まじく、硬い装甲で覆われていたはずの魔獣の全身から血飛沫が舞った。


「とどめだ !」


グレンは反撃する体力すら残っていない魔獣を前に、神器を大きく振り上げた。


「神器解放・迅雷鬼剣(サンダークリップオーガ) !!!」


グレンの持つ神器が青白いスパークを走らせ、縦に勢い良く振り下ろし、魔獣を一刀両断した。


スパァン


魔獣は綺麗に真っ二つに斬られ、崩れ落ちた。

全員は呆気に取られていた。

あれ程強かった鎧魔獣があっさりやられてしまったのだ。


「す、すげえ……やりやがったな……グレン !」

「おおおおおおおおおおお !!!」


オーガの里の人々は歓喜の声を上げた。


「アンタが神器に選ばれるなんてね……見直したよ」


ブラゴは弟を誇りに思い、駆けつけようとした。


ドサッ


「グレン !」


神器による強大な力は幼い少年には耐えられなかったのか、魔力を使い果たし、グレンはその場で倒れてしまった。

グレンの手から神器が落ちて地面を転がった。


「グレン、しっかりしな !」


ブラゴはグレンを抱き抱え、必死になって呼び掛けた。

どうやら力を使いすぎて気を失っているだけのようだ。


「流石オーガの里に伝わる伝説の神器……我が鎧魔獣を一撃で葬るとはな……」


突然デビッドは地上に降り立ち、転がっていた神器を回収した。


「デビッド !!!」


物凄い剣幕でエルサは憤り、デビッドに剣を向けた。


「そう怖い顔をするな、私は鎧魔獣を召喚したせいで魔力をかなり消耗してしまったのだよ、これでは一人でオーガ族を滅ぼすなど不可能に近い……」

「ふざけるな !貴様のしたことは許されんぞ !私の故郷を奪っただけでなく、私を育ててくれたオーガの里までも…… !」


鎧魔獣は何とか倒した。

けれど魔獣との戦いによって、里は壊滅的な被害を受けていた。

オーガ族が何人犠牲になったか分からない。


「兎に角、今回はこの神器を回収出来ればそれで良い。私は潔くこの場を去るとしよう」

「この私が易々と貴様を逃がすと思うか」

「そんな体で何が出来る」


デビッドはエルサが気合いで何とか立っているのを見抜いていた。

本当は今倒れてもおかしくはない。

それでもエルサの眼光はしっかりとデビッドをとらえていた。


「貴様は……貴様だけはぁぁぁぁ !」


エルサは風のように走り、デビッドに斬りかかった。


ガキンッ


「何っ !?」


エルサの剣を、何者かが剣で受け止めた。


「ほう、お主も来ておったのか……ルーシー」


デビッドを守るように突然現れた少女。

少女は筋肉質な体に褐色肌、長く黒いポニーテール、露出の多い服装、そして長く尖った耳をしていた。

エルフ族の亜種、ダークエルフだ。


「お、お前は……」


エルサはルーシーと呼ばれる少女の顔を見て、思わず固まった。

まるでもう生きていないはずの人間を見たかのような反応だった。


「ルーシー……何処かで聞いたような……」


ずっと前、蜘蛛の魔獣と戦っていた時、エルサは私を抱き締め、ルーシーと呼んでたことがあった。

ルーシー……確かエルサが守れなかった妹の名前……。


ルーシーは既に消耗しきっていたエルサの手から剣を叩き落とした。


「ルーシー、オーガ族殲滅は失敗したが神器は回収した。撤収するぞ」


デビッドはルーシーに指示をすると手を差し出した。

ルーシーはこくっと頷くとデビッドの手を取り、後ろを振り向いた。


「ま、待て…… !」


エルサは衝撃を受けすぎたのか、今までの疲労が祟ったのか、足の力が抜け、地面にへたりこんだ。

デビッドはルーシーの手を掴むと空中に浮いた。


「教えてくれ……お前は生きていたのか…… !?私の妹なのか !?」


エルサは遠ざかるルーシーに向かって声を張り上げ、必死に問いかけた。

ルーシーは振り返り、静に呟いた。


「また会おうね、お姉ちゃん」


やがて二人は肉眼で見えなくなる程遠くへ行ってしまった。

エルサは生気が抜け落ちたかのようにいつまでも空を見上げていた。





この戦いで里も、神器も守れなかった。

多くの犠牲者を出してしまった。

それでも救えた命もあった。

皆が最後まで諦めずに、自分に出来ることを精一杯頑張ったからだ。

私はもっと強くなりたい。目の前の脅威から、大切なものを守り抜ける強さが欲しい……。

今回の件で、その想いが一層強くなった。


私達は暫くの間、オーガの里の復興に尽力を注いだ。

全員が力を合わせ、完璧に元通りとまでは行かないまでも何とか里の機能を再生させることが出来た。


To Be Continued

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