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ランプを片手に異世界へ  作者: 烈斗
オーガの里編
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第九十三話・騎士よ、立て



「最早私の出る幕ではないな、鎧の魔獣が一体いれば、町一つ滅ぼすのもわけはない」


デビッドは空高く浮遊しながら高みの見物を決め込んでいた。


「ん ?」


ふとデビッドは何かの異変に気がついた。


「ん ?あそこから感じる禍々しい障気は……一体……」


デビッドが視線を向ける先に、黒い靄のようなものが発生していた。




鎧魔獣はゆっくりと脚を上げ、大地を揺らしながら歩行を再開した。

あの怪物はもう誰にも止められない。

私は諦めかけていた……。その時、


「でやああああああああああ !!!」


叫びと共に水刃が勢い良く飛んでいき、魔獣の尻尾を綺麗に切断した。


「この水の刃……まさか……」


ヴェルザードが振り返ると、そこには息を切らしたマルクの姿があった。


「はぁ……はぁ……お前ら、何勝手に諦めて傍観してやがる……」


急いで駆けつけた上に魚人水刃(フィッシュリッパー)の威力を最大限まで高めた為に魔力を大幅に消耗し、マルクはかなり疲労が溜まっている状態だった。


「お前こそ、あの三人の見張りはどうしたんだよ……」

「緊急事態だったからな……それにしても、なんつう化け物だよ、あいつ」


マルクはあまりにも巨大すぎる魔獣の姿を見つめ、苦笑いをした。


「あいつの装甲は桁外れだ、リトの攻撃も大して効いちゃいない」

「マジかよ、道理で俺の渾身の一撃を喰らってもピンピンしてるわけだぜ」


そこへ、更に助っ人が疾風のごとく現れた。

エルサだ。


「エルサさん !」

「遅くなってすまない…… !」


エルサは魔獣に向けて鋭く眼光を放った。


「あの魔獣によって、私の故郷は奪われた……私が必死に剣を磨いてきたのは、この日の為だったんだ……」

「エルサさん……」


エルサは精神を落ち着かせるため、深く深呼吸をした。

覚悟を決め、剣を抜き、構えた。


「魔獣よ、故郷の仇だ……討たせてもらうぞ !!!」


エルサは叫ぶと魔獣に向かって風のように走り出した。


「エルサ……アンタも強くなったねぇ……あたしらも行くよぉ !」


エルサの背中を見て、ブラゴも立ち上がり、他のオーガの戦士を先導した。


私やコロナ、ヴェルザード、マルクも再び立ち上がり、魔獣に挑んだ。


「はぁぁぁぁぁ !」


エルサは魔獣の片足に接近するとひたすら剣で斬りつけた。

だが硬い皮膚で覆われた脚には傷一つつかなかった。


「あの頃の私は無力だった……村が燃やされても逃げることしか出来なかった……妹すらも守れずに……だが今は違う !」


エルサの目は諦めていなかった。

剣を振るうことを決してやめなかった。


「はぁぁぁぁぁ !!!」


ブラゴとその部下達は別の脚を斬り続けた。

やはり頑丈な皮膚に守られ、手応えは無かった。


「俺達も行くぜ !」「おう !」


ヴェルザードとマルクは魔獣の後ろに回り込み、後ろ脚をヒレと血の剣で切り裂いた。


「一発だけなら効果が無くても、何十発も斬り続ければ切り傷くらいは残せる !」


二人は目にも止まらぬ速さで魔獣の巨大な脚を切り刻んだ。


「はあっ !」


私も皆に続いて魔獣の脚を斬りつけた。

魔獣の脚に傷がつくのが先か、私の剣が欠けるのが先か……。

それはまだ分からない。

だけど最初から諦めるわけにはいかない。

リトが居なくても、私は最後まで戦う。


グオオオオオオオオオ !!!


私達が執拗に魔獣の四つ足を斬り続けた結果、魔獣は痛みから悶絶し、倒れ込んだ。

魔獣の脚には、くっきりと切り傷が刻まれた。


「あれだけ斬っても切り傷だけか……」

「いや、上出来…… !」


コロナはそう言うと杖を天に掲げた。


泥砲弾(マッド シェル) !」


コロナは土属性の技を繰り出した。

泥の塊を生成し、倒れた魔獣の脚にぶつけた。


泥の塊は魔獣の脚に直撃すると砕け、傷口に塗り込むようにまとわりついた。

泥が傷口に染み込み、魔獣は激痛に悶えた。


「お前、結構えげつないことするな……」

「魔女の子だからな」


若干引いてるヴェルザードと、コロナの代わりに得意気になってるクロスが微笑ましかった。


「どんなに頑丈でも、傷口を責められたら一たまりもないってわけだね !さあ皆、今のうちだよ !」


ブラゴは倒れた魔獣の腹が剥き出しになっているのを狙い、剣で斬りつけた。

斬られた箇所から大量の血が吹き出た。

どうやらここが弱点らしい。


「畳み掛けるなら今しかねえぞ !」

「おう !」


ヴェルザードとマルクも魔獣の腹を狙い、加勢した。


希望が見えてきた。あれだけの攻撃を浴びても傷一つつかなかった魔獣が確実にダメージを蓄積している。

これなら勝てるかも知れない……。


魔獣は体勢を立て直した。

そして、脚の力をバネにし、高くジャンプした。


「あの巨体で……嘘だろお前 !?」


流石にヴェルザードも開いた口が塞がらなかった。


魔獣は何と、その巨体を丸め、巨大な球体へと姿を変え、空中で勢い良く回転し続けたのだ。


「今度は何だ…… 」


魔獣は棘に覆われた全身から無数の棘を四方八方に乱反射した。


「またあの技かい…… !アンタ達、剣で防ぎな !」


ブラゴは部下に指示を出し、雨のように降り注ぐ棘を剣で必死に弾き返した。

だが先程のものより威力が上がっており、何人かのオーガの戦士は棘が刺さってしまった。


「ぐわぁぁぁぁぁぁ !」

「アンタ達 !しっかりしな !」


ブラゴも剣で防ぐのに精一杯だった。


「お前ら、俺の近くに寄れ !」


ヴェルザードは自らの腕を引っ掻き、大量の血を噴き出させた。


(ブラッド)(ウォール) !!!」


大量の血液を凝縮し、巨大な盾を作り出し、傘代わりに使用した。

私とコロナとマルクはヴェルザードの側によることで何とか棘の嵐を凌ぐことができた。


「でも大丈夫かよ、お前……血が……」

「気にすんな、こんくらい平気だ」


ヴェルザードは辛そうにしながらも笑みを浮かべた。


「そういえば、エルサさんは…… ?」

「そういやいねえな……あ !」


エルサは棘が降り注いでいる中、縦横無尽に駆け回っていた。


「何やってんだ !戻ってこい !」


マルクが呼び掛けるも、エルサは無視をし、無謀にも魔獣に向かって突撃を試みた。


「貴様は私の手で葬る !」


エルサは全身に風のエネルギーを纏い、剣を掲げ、大地を蹴り、高くジャンプした。そのまま空中で棘を放ち続けている魔獣目掛け、回転しながら突撃した。


回転突撃(スクリューアサルト) !!!」


エルサの猛突進は凄まじく、降り注ぐ棘を物ともせず、丸まった球体の魔獣に激突した。


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ !!!」


ズドォォォォン


回転の威力を利用し、魔獣の装甲を破り、穴を空け、そのまま貫いてしまった。


エルサは返り血を大量に浴び、真っ赤に染まった状態で地面に着地をした。

ダメージを負った魔獣は地面に落下し、地響きを起こした。


「はぁ……はぁ……こ、ここまでか……」


エルサは無茶をし、体に大きな負担をかけ、一歩も動けずにいた。


「エルサさん !」


私はすぐさま駆け寄ろうとしたが、魔獣が起き上がり、行く手を阻んだ。


「あいつ…… !体に穴が空いてんだぞ ?」


魔獣は倒れているエルサを見下ろすと怒りから踏み潰そうと脚を大きく上げた。


「エルサさぁぁぁぁぁぁん !!!」


もうここまでか……その時……


ドゴオオオオン


巨大な炎の塊が、魔獣の顔面に直撃し、魔獣は崩れ落ちるように倒れた。


「え…… ?」


私は上を見上げた。するとそこには、筋肉を膨張させ、白眼を向き、髪を黒く染め、邪悪なオーラを漂わせたリトの姿があった。


「そんな……リト…… !」


To Be Continued

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