第八十九話・オーガの神器
「はぁ……はぁ……」
私達はデビッドが召喚した4体の魔獣を何とか倒すことが出来た。
だけどそのせいで足止めされ、かなり時間がかかってしまった。
ヴェルザード、クロスがデビッドを追っているが、大丈夫だろうか……。
「確かあのデビッドっていう人、神器を探してるって言ってましたけど……」
「神器……我らオーガ族に伝わる伝説の武器じゃ……かつてこの里に巨大な災厄が降り注いだ……」
オババは静かに語りだした。
大昔、オーガの里を巨大な魔獣が襲った。
里を守る戦士達は次々に倒れ、里は滅亡を迎えようとしていた。
絶体絶命のその時、天から白く光る剣が降ってきた。
残された1人のオーガはその剣を手にすると、自らの体に眠る魔力を解放させ、魔獣を一刀両断した。
やがて、オーガの里に平和が訪れた……。
伝説の神器は里の守る御神体として、今もなお祀られている。
「そんな伝説があるんですか……」
「何処まで本当か分かりませんがね」
リトはランプの中で軽口を叩いた。
「その神器のことを何故かあの男は知っておった……何はともあれ由々しき事態じゃ……あの神器はワシら里の者達にとっては希望の象徴じゃ、決して余所者に奪われるわけにはいかん !」
オババは強く言い放った。
「オババ、ここはあたしらに任せてください、必ず神器を守って見せますよ」
ブラゴはオババに言うとデビッドが飛び去った方向を向き、走っていこうとした。
「私達も行くぞ、良いな、ブラゴ義母さん」
エルサはブラゴに問いかける。
「ここまで事が大きくなっちまったらもうそんなこと言ってる場合じゃないしね……分かったよ、アンタ達、協力してくれるかい」
「勿論だ、なあワカバ、コロナ」
私達は首を縦に振った。
「じゃあ行くよ !」
ブラゴ、エルサ、コロナ、私は神器が祀ってる場所に向かった。
「しつこいカラスだ」
クロスは今もなお単身でデビッドを追跡していた。
「逃がさんぞ !黒羽の分身 !」
クロスは無数の分身を作り出し、デビッドを包囲した。
「ほう、使い魔にしては中々芸達者だな」
デビッドは逃げ道を塞がれながらも余裕を見せていた。
「あまり僕を舐めないでもらおう、黒羽根拡散弾 !!!」
デビッドを取り囲むクロスとその分身は一斉に黒い羽根の弾丸を浴びせ、蜂の巣にした。
「どうだ……少しは……って何 !?」
だがデビッドの姿はそこには無かった。
「あまり年寄りだと思って甘く見ない方が良いぞ」
デビッドはクロスの本体を見抜くと背後に回り込み、彼の首を締めた。
「がああっ…… !」
「苦しいか……力の差を思い知るがいい……」
デビッドはクロスにとどめを刺そうとした。
だがその時、デビッドは何かを感じ取った。
「何だ……この神聖にして膨大な魔力は……」
とある位置から煙のように魔力が発せられていたようだ。
「間違いない……あの場所に神器はある……自分から居場所を教えるとはな……手間が省けたぞ」
デビッドはニヤリと笑うとクロスを放り投げ、魔力の放たれている位置に向かって行った。
「命拾いしたなカラス、お前の相手はまた今度だ」
「ま、待て !」
遂に神器の在処をデビッドに知られてしまった……。
クロスはダメージを負いながらもデビッドを追いかけた。
「これがオーガ族に伝わる神器か……」
俺とグレンはとある祠にたどり着いた。
そこには、白く輝く剣が大地に突き刺さっていた。
「オーガ達は、これを代々祀っていたってわけね」
俺はしゃがむと白く輝く剣を見つめた。
「それは余所者が触れたらダメだからな」
グレンは俺に忠告をした。
言われなくても、そんな子供みたいな真似しねえよ。
「お前もオーガ族なんだろ ?これ使えねえのか ?」
俺はグレンにたずねると、グレンは面白くなさそうな顔をした。
「俺はまだ子供だし……そもそもこれは選ばれしオーガ族の戦士にしか使えない、姉ちゃんもな」
マジか、あの強そうな姉貴ですら無理なのか……。
いざって言う時に使えないんじゃ宝の持ち腐れだな……。
「兎に角、ここで待機していよう……祠には誰も近付けさせない……」
「それはどうかな ?」
そう言った矢先、デビッドが現れた。
「デビッド !」
「カラスめに散々邪魔されたが、ようやく見つけたぞ……伝説の神器をな」
デビッドはゆっくり近付く。
「ジジイ、てめえの思い通りにはさせねえぞ」
「これは里を守る御神体……お前なんかには渡すもんか !」
俺とグレンは戦闘の構えをとった。
「やれやれ、若いもんは血の気が多いのう……」
「逃がさんぞ !デビッド !」
デビッドの後ろでクロスが遅れてやって来た。
「はぁ……はぁ……もう……力が……」
だが、ダメージを受け、魔力を使い果たしたせいでクロスは人型を保てなくなり、小さなカラスの姿に戻ってしまった。
「す、すまない……」
「所詮は使い魔、いざという時に魔力不足とは片腹痛いわ、さあ若造共よ、これ以上私の邪魔をするのなら、容赦はせんぞ」
デビッドは長い木製の杖を構えた。
俺とグレンは腰を低くし、身構える。
魔導師デビッドから神器を守るため、俺とグレンは立ち上がった。
To Be Continued




