第八十五話・魔導師の宣戦布告
爆発音が聞こえ、私達は外に出ると、空でフードを被った謎の老人が浮いていた。
「オーガの諸君、ごきげんよう」
老人は駆けつけた私達を空中から見下ろしていた。
老人の近くは先程の爆発でメラメラ燃えていた。
「すまんすまん、今のはほんのご挨拶だ、誰も死んではおらんよ、今はな……」
老人は飄々とした態度をしていた。
「主、気を付けてください、あの老人から感じる魔力……並みではありません、ロウやラゴンを遥かに超えています」
ランプの中でリトは私に忠告した。
「それにあの老人……何処かで会ったような……」
長い間封印されていた影響でリトの記憶は曖昧だ。
でも過去にリトはあの老人と会ったことがあるのかもしれない。
「お主……魔王軍の手先じゃな ?」
オババは老人を強く睨み付けた。
「手先……冗談はよしておくれ、私は遥か昔から魔王様にお仕えしている大幹部、魔導師デビッドだぞ」
デビッドと名乗る老人はクスクスと笑った。
「アンタかい !最近魔物を使ってあたし達の里を襲ってるのは !」
「いかにも、魔王様のご命令でな、我らの誘いを無下にした貴様らオーガ族を根絶やしにするのが目的だ……」
デビッドは冷酷に笑って見せた。
「生憎それは不可能だね !あたし達オーガ族は簡単には滅びないさ !」
「それに、今は私達、無限の結束がいるからな !」
ブラゴに続き、エルサも啖呵を切った。
「ほう……噂には聞いておるぞ、闇ギルドや竜族を倒した騎士団だな……ん…… ?」
デビッドは私に気づき、じっと見つめた。
「何凝視してんだエロジジイ」
ヴェルザードは私を庇うように前に出た。
「いや、そうではない、まさか君が魔人を使役する召喚士だとはな」
まさか、一目見ただけで私とリトについて見抜いた…… ?
「ミーデから聞いておったぞ、魔人の力を自在に操る者が居ると……それがこんな小娘だったとはな、長生きはするものだ」
デビッドはおかしそうに高笑いした。
「それだけの力があるなら世界征服も夢ではなかろうに……正義の味方の真似事とは、お笑いだな」
デビッドに嘲笑され、私はムッとした。
「私は別に世界征服とか興味ありません !」
「つまらん小娘だ……だがその力、放っておくわけにはいかんな……いずれは我々のものになる運命なのだ……」
デビッドは私を冷酷な瞳で睨み付けた。
私はゾッとした。
「ワカバ、下がってろ」
「ワカバお姉ちゃんは私が守る…… !」
ヴェルザードとコロナは警戒し、戦闘の構えをとった。
「まあいい、今の私の目的は二つ……オーガ族を滅ぼすことと、オーガの里に隠された伝説の神器だ……」
「神器…… ?」
オババの頬を汗がつたった。
「オーガ族に伝わる伝説の神器、何故お主が知っている !」
「年の功というやつだよ、どうだ、神器を渡し、今一度我らに忠誠を誓うのなら、命だけは助けてやるぞ」
デビッドは理不尽な要求をしてきた。
「ふざけるんじゃないよ !誰がアンタなんかに渡すもんかい !」
オババは激しく憤慨した。
「そう言うと思ったよ……ではオーガ族を1人残らず殺し尽くし、その上で神器を頂こうではないか」
デビッドは懐から4枚のカードを取り出した。
「出でよ、魔獣 !オーガ族を狩り尽くせ !」
デビッドはカードをばら蒔くと4体の魔獣が姿を現した。
4体とも熊に酷似していた。
「さっき私が倒した魔獣と同じものか…… !」
エルサは剣を構えた。
「先程の魔獣とは一味違うぞ ?まあ精々頑張りたまえ」
そう言うとデビッドは何処かへ行ってしまった。
「待て !」
エルサ達は後を追おうとするが魔獣達が行く手を阻む。
「くっ !」
「あいつは俺が追いかける、悪いがお前らは魔獣の相手をしてくれ」
ヴェルザードは蝙蝠の翼を生やし、翼型になった。
「僕も行こう」
クロスは人型に変身し、翼を広げた。
「気を付けてね……クロス」
「魔獣はあたしらに任せな !」
ブラゴ、コロナ、エルサ、私は4体の魔獣を相手にすることになった。
「頼んだぜ !」
ヴェルザードとクロスは翼を羽ばたかせ、デビッドの後を追った。
「始まりましたわね……」
戦いの様子を物陰からじっと見ている者達がいた。
魔王軍の下っぱ、「悪魔三銃士」の三人である。
「しかしレヴィさん、本当にやるつもりですか ?」
ライナーはオロオロした様子でレヴィにたずねた。
「今更何を言ってますの !?これは出世のチャンスなのですよ !この混乱に乗じて神器を奪うのですわ !」
「何とか見つかって戦闘にならないよう、慎重に行く必要があるゾ」
「分かってますわよ、サイゴ !貴方のその大きな一つ目で周りを確認してくださいね」
サイゴはコクっと頷いた。
「さあ、あのジジイより先に手柄を奪いますわよ !」
「「おー」」
レヴィに対して、二人は張りのない声だった。
To Be Continued
 




