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ランプを片手に異世界へ  作者: 烈斗
オーガの里編
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第八十四話・安らぎの時間



オーガの里の近くで魔物が大量発生するというアクシデントが起こったものの、何とか撃退することが出来た。


改めて私達はオーガの里に足を踏み入れることになった。


オーガの里は意外と古風で落ち着いた雰囲気で、居心地が良かった。


「ようこそ、オーガの里へ。私は戦士長のブラゴだ」


ブラゴは笑顔で握手を求めた。


「私は召喚士(サモナー)のワカバっていいます、この子は魔人のリトです、宜しくお願いします」


私はランプをブラゴに見せた。


「宜しくお願いしますよ、オーガ族のお嬢さん」


ブラゴは美人でなおかつ貫禄があった。エルサよりも背が高く、鍛え上げられた体を見て、私はドキドキしていた。


「エルサがいつも世話になってるよ」


私はブラゴと握手をかわした。手がゴツゴツしていて逞しかった。修羅場を潜り抜けてきた証だと私でも理解できた。


「まあ立ち話も何だから、あたしの家に来なよ、ゆっくりしてくといい」


全員の自己紹介が終わり、私達はブラゴの家に案内された。




ブラゴの家は一般のオーガの家よりも広く立派な建物だった。流石戦士長。


「お茶を用意しなくちゃね、ほら、グレンも手伝いな !」

「分かったよ……」


グレンは渋々ブラゴの手伝いをしていた。


「あの少年はブラゴ義母さんの弟のグレンだ、歳が親子程離れているが歴とした姉弟だ」

「へぇ~」


ブラゴは若いお姉さんなんだけど、確かに母と子にも見えるな……。


「グレンが生まれてすぐに彼の母が亡くなってな……ブラゴが母親代わりに育ててたんだ」


エルサはグレンの様子を見つめながら言った。


「あいつの本当の母ちゃんはいねえのか……」


マルクとヴェルザードは思うところがあったのか、感傷に浸っていた。

コロナも他人事とは思っていない様子だった。

皆それぞれ本当の家族を失っている。

ヴェルザードは父が行方不明、マルクは唯一の家族だった兄が失踪、コロナは母親を魔女狩りで殺された……。

エルサも魔獣に家族を奪われ、今も憎しみが消えていない……。


「おまたせ、冷めないうちに飲んでおくれ」


ブラゴとグレンがお茶を持って戻ってきた。

私達は出されたお茶に少し口をつけた。


「それにしても、エルサにこんなに仲間が出来るなんてねえ、あたしは嬉しいよ」

「やめてくれよ、恥ずかしいから」


ブラゴは嬉しそうにエルサの肩を組んだ。

エルサは若干照れていた。

二人を見てると本当の親子のようだ。


「この子は昔から不器用で、中々友達が出来なかったのさ、ありがとね」

「こちらこそ、エルサさんには色々良くして貰ってますから」


私はブラゴに微笑んだ。


「ま、怒らせると怖いけどな」

「全くだ」


ヴェルザードとマルクは余計な一言を呟いた。


「何か言ったか」


エルサは鬼の形相で睨んだ。


「「いえ、何でも……」」


二人は揃って顔を背けた。

私はおもわずクスッと笑ってしまった。


「所で、里の近くで魔物が異様に大量発生していたが何かあったのか ?」


エルサはブラゴに異変についてたずねた。


「ああ、あたしらもよく分かってないんだよ、最近この辺で魔物が増殖してね、一体一体は大したことないんだけどあれだけ増えられたらキリがないんだよ」


ブラゴは困っている様子だった。


「魔物が短期間で増殖するなんてありえんぞ……何か人為的なものが関与している可能性があるな……」


エルサは腕を組ながら考えていた。

まさかとは思うけど、ミーデ ?でも一体何のために……。


「あいつらの仕業に決まっているよ !」


突然謎の老婆が勢いよく入ってきた。

私は驚いて飛び上がった。


「オババ !」


老婆は小柄な二頭身で杖をついていた。


「紹介するよ、この方はオババ。オーガの里を治める長だよ」


オババはゆっくりと腰を下ろし、あぐらをかいた。


「やつらってどういうことだ ?」

「魔王軍のやつらじゃよ !この前やつらが我らオーガ族に対し、魔王軍の傘下に入れと言ってきたじゃろ ?それを突っぱねたから逆恨みに魔物を送り込んで来たんじゃ !」


オババは興奮気味に話した。


「魔王軍……ですか……」


この世界にもやはりというか、世界を征服しようとする悪の存在、魔王がいるってことなのか……。


「やつらは自分達に逆らう存在を消そうとしてるんじゃ、魔物の大量発生は警告のつもりじゃろう……」

「それが本当だとしたら、見過ごすわけにはいかんな……」


エルサは立ち上がった。


「ブラゴ義母さん、私達も戦うよ、私達は騎士団、無限(メビウム)結束(ユナイト)だからな !」


エルサはドンと胸を叩いた。

私達もエルサに賛成だ。いつでも戦う覚悟は出来ている。


「気持ちは嬉しいけど、これはあたし達オーガ族の問題なんだ、アンタ達を呼んだのは戦わせる為じゃないよ」

「しかし……」


その時、突然グレンが叫んだ。


「そうだ !余所者の力なんて借りない !俺達だけでこの里を守るんだ !」

「こら !何てことを言うんだい !」


ブラゴはグレンの頭を叩いた。


「いてっ…… !兎に角俺は1人でも戦うぞ !俺はオーガ族の戦士なんだ !」


そう言うとグレンは飛び出して何処か行ってしまった。


「グレン !何処行くんだい !」

「修行 !」


止めるまもなく、グレンは行ってしまった。


「すまない…… !グレンが失礼なことを……」

「いや、良いんだ……私の方こそ、出すぎた事を言って悪かった……」


エルサは寂しそうに謝った。

グレンに余所者と言われたのがショックだったんだろう。


「何、気にすんなよ、せっかちな反抗期ってやつだぜ」


マルクはエルサの肩を叩いた。


「あいつは昔の俺に似ている、ブラゴさん、ここは俺に任せてくれ」


マルクはサムズアップを決めると、グレンを追いかけていった。


「やれやれ……あの子は使命感は強いんだけど、全部背負い込みがちというか……」


ブラゴはため息をついた。


「そのうちわかってくれますよ、エルサさんも、元気を出してください」


私は落ち込むエルサを励ました。


「ありがとう、ワカバ」


エルサは微かに微笑んだ。


「さて、これからどうしようかのう、魔王軍のやつらは何が何でもこの里を潰そうとするぞ !」

「あの……本当に里を潰すつもりなんですか……」


コロナはオババに恐る恐るたずねた。


「魔王軍の奴等は容赦ない非情な連中じゃ、自分達に従わぬ者は全て敵と認識するんじゃ……過去にもとある村が魔王軍にらよって火の海にされた……」


オババは悲しそうに語った。

それを聞いたエルサも険しい表情をしていた。


ドゴオオオン !


その時、突如爆発音が響いた。


「敵襲か !」


ブラゴとオババは素早く武器を手にすると急いで外に出た。


「私達も行くぞ !」


エルサも後を追い走り出した。


「待ってください !」


私やヴェルザード、コロナ、クロスも後に続いた。


To Be Continued

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