第八十二話・エルサの里帰り
リトが戻ってきてくれて、私も元気を取り戻すことが出来た。
ずっと塞ぎこんでて、皆に迷惑をかけてしまった。
だから今まで以上に頑張って少しでも遅れを取り戻さなきゃ。
朝起きてリビングに向かうと、コロナ、クロス、ヴェルザード、マルク、エルサがくつろいでいた。
エルサは何やら手紙を読んでいた。
「おはようございます、エルサさん」
「おはよう、ワカバ……体の方はもう大丈夫なのか ?」
エルサは心配そうにたずねた。
「はい……ご心配をお掛けしました……」
「ワカバが元気ならそれで良いんだ」
エルサはニコッと微笑んだ。
「所で何を読んでいるんですか ?」
私はエルサの持つ手紙を見てたずねてみた。
「ああ、故郷からの手紙だ」
「故郷…… ?」
前に聞いたことがある、エルサの故郷であるエルフの村は魔獣の襲来によって滅ぼされ、妹さんを……家族を失ったと……。
「幼い頃、村を焼かれて孤児になった私は、ある人に拾われたんだ。その人はオーガ族で、その人に連れられ、オーガの里で暮らすようになったんだ」
「オーガの里……ですか」
エルサはオーガ族の人に育てられ、修行し、強くなったそうだ。
そして17歳になり、各地に目覚めた魔獣を倒すため、騎士を目指し、里を出たと……。
「オーガか……そういえば、前に戦った闇ギルドにもいたな」
話を聞いていたヴェルザードは、ふと過去を振り返っていた。
彼は闇ギルドの幹部、オーガのガギと死闘を繰り広げたことがある。
ガギ……。闇ギルド「憎悪の角」三幹部の一人で棍棒を巧みに扱う狂戦士だ。
「あいつは強かったな……オーガだけあって並外れたパワーを持っていたぜ」
「三幹部の中では最強だったな」
エルサは腕を組ながら思いにふけっていた。
「所で手紙には何て書いてあったんですか ?」
「ああ、元気にやってるかとか友達は出来たのかとか、色々気になってるようだ」
エルサは嬉しそうに語った。
彼女にとってオーガの里の人達は家族そのものなんだ。
「後、たまにはこっちに帰ってこいとさ、仕事も落ち着いてきたし、そろそろ帰省でもするかな」
エルサは腕を伸ばしながら言った。
「そうだ、良かったら君達も来るか ?」
「わ、私達もですか ?」
エルサは今この場にいる私、ヴェルザード、マルク、コロナ、クロスを誘った。
「私の義母がどうしても君達に会いたいって……」
エルサは少し照れていた。
「はい、私も行ってみたいです !」
私は笑顔で了承した。
「オーガの里か……興味深いな」
「もしかしたら強いオーガと戦えるかもな」
ヴェルザードとマルクも満更ではなかった。
「どうしようかな……クロスは行ってもいいと思う ?」
「僕はコロナの意思に従う……君が行くのなら、僕もついていくさ」
コロナは少し考えてから、行く決意を固めた。
「よし、取り敢えずここにいる皆は決定だな !」
「所でミライちゃんとリリィちゃんは何処にいるんですか ?」
ヴェルザードが答えてくれた。
「リリィとミライはあるクエストに出掛けたよ、何でも珍しい果実を手に入れるとかなんとか……」
「あの二人らしいクエストですね」
ミライとリリィ……。二人は結構仲が良い。私が闇ギルドに捕まった時も息の合ったコンビネーションで私を助け出してくれた。
コロナ、クロスを仲間に引き入れたのも、二人の力が大きい。
「それじゃあ早速行くぞ、君達、支度をしておけよ !」
エルサはとても嬉しそうに声を弾ませていた。
私もそんなエルサを見て、ほっこりした。
エルサの一声で、私達はオーガの里に行くことになった。
今回はクエストではなく、エルサの里帰り。特に問題はなく、平和に済むはずだった。
だけど、オーガの里を巡って、新たな戦いが始まることを、私達はまだ知らなかった。
人々が寝静まり、月明かりに照らされた夜……。
魔導師デビッドは空に浮かび、オーガの里を見下ろしていた。
「さて、久しぶりに暴れるとするかのう……」
デビッドは懐から数枚のカードを取り出した。
「いでよ、魔物達よ !」
デビッドはカードを派手にばらまいた。
無数のカードが地面に落ちた。
すると地面から次々と不気味でグロテスクな魔物達が涌き出てきた。
魔物達は空を見上げ、低く禍々しい唸り声を上げた。
「さあ、混沌の始まりだ……」
デビッドはニヤリとほくそ笑んだ。
To Be Continued




