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ランプを片手に異世界へ  作者: 烈斗
vs竜族編
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第八十話・闇を抱く



突然自室に現れたミーデ。

部屋全体が暗く不気味な色に染まった。

一体どうやって侵入したんだろう……。

私は怖くて全身が凍ったように身動きがとれなかった。



「フフフ、そんなに固くならなくても良いのに……私達は知らない仲じゃないでしょう」


ミーデはいやらしく私に顔を近づけた。


「だ……誰か……助けてください !」


私は振り絞るように叫び、助けを求めた。


「無駄ですよ、この部屋に結界を張っておきました、悪魔結界(デビルフィールド)……外部からの干渉は不可能です、誰も気付くことすら出来ません」


ミーデはねっとりと絡み付くように私の腕を掴んだ。

私の手にはランプの取っ手が握られていた。


「この前の竜族達との戦い、こっそり拝見させて頂きました。特に魔人リトさんの暴れっぷり……惚れ惚れしましたよ」


ミーデは嬉しそうに語っていた。


「圧倒的な力で虫けらのように敵をなぎ倒す様は圧巻でした……まさに魔人の名に相応しいですねぇ」

「な……何が言いたいんですか……」


私はミーデの顔を睨み付けた。


「貴方は魔人の力を持て余しています。あれだけの恐るべき力……いずれ貴方自身を滅ぼしますよ……」

「…… !」


私はハッとなり、反論出来なかった。


「魔人の力を持ち続ける限り、貴方は真っ当な世界で生きることは出来ませんよ、そのうち貴方の大切なお仲間も傷つくことになりますからねぇ」


ミーデはゲスな笑みを浮かべた。


「そんな……」


ミーデは顔を近づけた。


「貴方は我々の住む闇の世界で生きるべきです、その方が貴方や魔人さんの為にもなるんです、さあ……私と共に行きましょう」


ミーデは手を差し出した。

確かに……このまま皆といると確実に迷惑がかかる……。でも……皆と離れたくない……。

私は迷っていた……。


「ちっ……優柔不断な小娘ですねぇ !」


ミーデは私の腕を強く引っ張った。


「きゃっ !」

「今更後悔しても遅いんですよ !だからあの時ランプを手放していれば良かったんです !もはや貴方に選択肢などありません !さっさと来なさい !」


ミーデは鬼の形相で怒鳴り散らし、迫ってきた。

私は怖くて動けなかった。


「リト……助けて……」


私は涙を浮かべ、震える声で小さく呟いた。


ピンッ


「おごぉ !?」


突然ミーデは吹っ飛ばされ、壁に叩きつけられた。


「り……リト…… ?」


夢じゃない……。私の目の前には、確かにリトの姿があった。


「主……」


リトは私の顔を見て小さく呟いた。

私は涙が溢れた。


「ちっ……魔人イフリート……良いところで邪魔をするとは……」


ミーデは額をおさえながらフラフラと立ち上がった。


「主に危害を加える者は全て灰にして差し上げますよ」


リトはミーデに向かって人指し指を差した。


「フン、もっとも危害を加えようとしている者は自分自身ではありませんか……まあ良いでしょう、今回は潔く退散します、ワカバさん、またお会いしましょうね」


ミーデは服の埃を払うと不敵な笑みを浮かべた。


「逃がしません !」


リトは指先から指撃熱線(フィンガーヒート)を放った。

熱線がミーデの胸を貫いたが、ミーデはドロドロと泥のように溶けて消えてしまった。


「ちっ……ただの影でしたか……本体は別の所にいるようですね……」


リトは腕をそっと下ろした。


「…………」

「あの……助けてくれて……ありがとうございました……」


私はリトにお礼を言った。

リトはただ黙っていた。

それ以上二人は言葉が出てこず、暫く沈黙が続いた。


「……ご迷惑をお掛けしました……主……まだ時間はありますが、今日はもう消えます……」

「待ってください !」


私はリトを呼び止めた。


「……会いたかった……」


最初に出た言葉はそれだった。


「もう二度と、会えないんじゃないかって……思ってました……」


止めどなく涙が溢れた。


「主……本当にすみません……私は……主との約束を破ってしまいました……この力……主を守るためだけに使うと……なのに私は……主を傷つけようとした……」

「良いんですよ、リトは何も悪くありません !私だってこの通り無事なんですから !」


リトは首を横に振った。


「もしまた闇の力が暴走するかわかりません……今度こそ主を傷つけるかも知れません……私なんて居ない方が良いんです……いっそランプを捨ててください……もう闇に飲まれたくはありません……」


リトはしおらしくなっており、今にも泣き出しそうになっていた。


「そんなことないです……」


私は後ろからリトに抱きついた。

リトの背中はとても温かかった。


「……主……」

「私……たった一人でこの世界に連れてこられて……ずっと不安でした……でもリトが居てくれたから、今までやってこられたんです……リトから勇気をもらって……友達もいっぱい出来ました……リトがいなくなったら、私は生きていく自信がありません……」


私は、胸の内に秘めた想いを余すことなく吐露した。


「私は……リトのこと何も知りません……どんな人生を送ってきたのか……どんな闇を抱えているのか……でもそんなの関係ないです !リトは私を守ってくれる大切な人……それで良いじゃないですか…… !」


リトの頬を涙がつたった。


「こんな私と……一緒にいてくれるというんですか……」

「……はい……絶対に離したくないです……」


リトの体は震えており、嗚咽が聞こえた。


「主……ありがとうございます……もう少しだけ……このままでいてくれますか……」

「はい……ずっと……」


私はリトが消えるその瞬間までいつまでも抱き締めていた。


たとえ何が待っていようと、どんなことが起きようと、私はリトのそばにいると……。

私は胸に誓った。


To Be Continued

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