第六話・怪しい洋館
私は目を覚ますとベッドの上にいた。
あれ……?私、林の中で力尽きて倒れたんじゃ……。私は周りを見渡してみた。どうも古びた部屋のようだった。
「あ……そうだ……ランプは……」
横を見るとランプが置いてあった。無くしてはいなかったようで、私はホッとした。
私はこの状況を飲み込めずにいたが取り敢えず起き上がろうとした。
「いたっ……」
私はズキッと痛みを感じ腕を押さえた。そういえば悪魔・ミーデに思い切り腕を踏まれたんだった……。そして体のあちこちに包帯が巻かれてるのに気づいた。私が寝てる間に誰か手当てをしたのだろうか…まさかリト ?魔人とは言え、知らないうちに男の人に身体中を触られたのか…… !?私は顔を赤らめた。
「おはようございます、お目覚めですか ?」
突然一人の女の人が部屋に入ってきて笑顔で声をかけてきた。
小柄で アイドルみたいに可愛い顔をしていて、メイド服を着ていた。
「お……おはよう……ございます……」
私はたどたどしく挨拶を返した。
「良かったです、目を覚まして。でもまだ安静にしておいてくださいね」
「あ……あの……貴方は……」
「ああ、自己紹介がまだでしたね。私はここの洋館で召し使いをしているリリィと申します。宜しくお願いしますね」
リリィと名乗る子は軽くお辞儀をした。
何だかとても気さくで優しそうな人だと思った。
「私は……安住若葉……です……宜しくお願いします……」
「へぇ~変わった名前ですね。ワカバちゃんって呼んで良いですか ?」
リリィは意外とフランクなタイプだった。
「あ……はい……所で、何で私はここに居るんですか…… ?」
「ああ~、そうですよね。色々と混乱してるでしょうし説明しなきゃですね」
リリィは事情を説明してくれた。
私がいつものようにここの洋館の玄関前で掃除をしていた時のことです。突然強い魔力を感じました。こちらに近づいてくるようでした。
「やだ……何かしら……侵入者…… ?」
私は警戒し、箒を持ち、身構えました。
すると風のように目の前に男の人が少女を抱き抱えたまま現れたんです。見たことのない怪しい格好をしており、とても強力な魔力をビリビリと感じました。
「ひっ…… !だ……誰ですか !」
私は驚き、箒を男の人に向けました。
「落ち着いてください !私は敵ではありません !」
男の人は息を切らしながら、必死に弁明していました。
「お嬢さん…… !お願いがあります !この女性をどうか助けてください !」
男の人が抱えてる女性は気を失っていて、とても酷い怪我をしていました。
怪しいとか危険だとか言ってる場合ではありませんでした。
「じ……事情はよく分かりませんが、兎に角上がってください。彼女の手当てをしますから」
勝手な判断だとは思いましたが、悪い人には見えなかったので、引き受けることにしました。男の人は私の言葉を聞いて安堵の表情を浮かべました。すると男の体が半透明になり、消えかけました。
「え…… !だ、大丈夫ですか !?体が透けてますけど !」
「す……すみません…… !もう……時間切れの…ようです…… !後は……頼みました…… !」
男はこの場からスーっと消えてしまいました。そして抱えられてた女性は支えを無くし、落ちそうになり、私は慌てて彼女を受け止めました。
「ホッ……でもこれで良かったのかな……ご主人様の許可なく勝手に……それにしても可愛い娘だなぁ……こんなに怪我を負って可哀想に……急いで手当てしなきゃ」
私は彼女を抱き抱えたまま館内に戻ろうとしました。
そして落ちていたランプに気づきました。
「えっと……これは……」
古びたランプだと思いましたがすぐに彼らの所有物だと分かり、拾うことにしました。
その後貴方の手当てをしてベッドの上で寝かせ、今に至ります。
「そ、そうだったんですか…有難うございます。助けて頂いて」
「いえいえ、とんでもない!困ったらお互い様ですよ」
こんな見ず知らずの人を招き入れ、手当てまでしてくれた…この見知らぬ異世界に来てから、初めて人の優しさが身に染みた……。
「でも貴方達……変わった格好をしてるけど、旅人さん ?」
「えーっと……まあそういうことですね…町を目指してたんですが、恥ずかしながら……道に迷ってしまって……」
私は照れながら頭をかいた。
「でもこの辺って魔物が沢山潜んでるんですよ ?よく無事でしたね」
「ああ…たまたま運が良かったというか……リトが守ってくれたからというか……」
「リト……さん…… ?」
私はランプを指差した。
「普段はあの中に入ってるんですが、いざという時は三分間だけ出て来て戦ってくれるんです」
「あぁ~、貴方を抱き抱えてた男の人ですね ?急に消えたんでびっくりしましたよ」
「あはは……所でこの洋館には貴方1人で暮らしてるんですか ?」
「まさか、私は召し使いですよ ?つまり、この洋館の主も当然います」
「そ……そうなんですか」
「おい、怪我人の具合はどうだ ?」
急に低い声がドアの向こうから聞こえた。
「あ、噂をすれば……」
「入るぞ」
男はドアを開けて、部屋に入ってきた。
男は少女漫画に出てきそうな美形で、白髪のストレートで、茶色いマントを羽織っていた。
「目を覚ましたようだな……」
カッコいい……私は心の中で呟いた。
白髪の男は赤い瞳を光らせながら、私をじっと見つめていた。
To Be Continued