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ランプを片手に異世界へ  作者: 烈斗
vs竜族編
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第七十六話・魔人覚醒



「イフリート……お前は見所がある……お前は我の後を継ぐのに相応しい……」


数千年前のこと……。


火の海に包まれた森で、一人の男が赤い髪の聖霊を捕らえ、こう告げた。

男は黒い甲冑を身に纏い、黒いマントを翻していた。

聖霊は若く、15歳くらいの少年の姿をしていた。


「お前は純粋で何者にも染まらぬ穢れのない存在……だからこそ、お前という器は底知れない無限の可能性を秘めているのだ……」


男はしゃがむと少年の目の前で手をかざした。


「な、何をするつもりですか…… !」

「お前には影が無さすぎる……我からの贈り物だ……受けとるがいい……」


男は掌から黒いもやを発生させ、少年の体を侵食させた。


「うわぁぁぁぁぁ !やめろぉぉぉぉぉぉ !」


穢れた邪悪な魔力を体に流し込まれ、必死に拒み、抵抗し暴れ狂った。


「フフフ……お前は何者にも負けぬ、邪悪で最凶の魔人になるのだ……この我の下でな……」


男は邪悪な笑みを浮かべた。

少年の体は徐々に闇に染められていく。


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ !!!」


澄んだ心を持った穢れを知らない優しき聖霊は、闇の世界の者の手により、邪悪な力を受け継いでしまった……。

こうして、魔人リトは誕生した……。




絶体絶命の私達の前に、石化を破り、姿を現したリト。

だが明らかに様子がおかしかった。


髪は黒く染まり、目付きは鋭く、白眼を向いていて筋肉は膨張し、黒いオーラを纏っていた。まるで悪役だ。


「リト……なの……」


私は掠れた小さな声でリトに話しかけた。

リトは何も言わず、振り返り、私の顔を見るとニヤリと不気味な笑みを浮かべた。


怖い……いつものリトじゃない……。


「まさかこんな切り札を用意していたとはなぁ !まだまだ物足りなかったんだ、お前は何処まで俺を楽しませてくれるかな !?」


高揚した様子のラゴンは翼を広げ、加速し、リトに突進した。


「ウオオオオオオオオオ !!!」


ピンッ


一瞬のことだった。

リトは人差し指でラゴンの額を凸ピンであっさりとふっ飛ばした。


「ヌオワァァァァァァァ !!!」


ラゴンは岩盤に叩きつけられ、砂煙が舞い上がった。

岩盤は粉々に吹き飛んだ。


「なんて……力だ……」

「強い、強すぎるよ~」


ミライ達はリトのけた外れの強さに唖然としていた。


「よくもラゴンを !石にしてやるわ !」


メリッサは髪を逆立て、青白い光線を放った。

リトは人差し指をビンと伸ばし、黒い熱線を放ち、相殺した。


「そんな……くっ……うわぁぁぁぁぁ !」


メリッサは錯乱し、髪を触手のように伸ばし、リトを拘束しようとした。


「こうなったら、直接流し込んで石にしてやる !!!」


リトはニヤリと笑うとメリッサの髪の猛攻を簡単にかわし、まんまと距離を詰めた。


「ひっ……」


リトに見下され、あのメリッサが恐怖で萎縮した。

リトは腕を伸ばし、メリッサの首を絞め、持ち上げた。


「うぐっ……」


メリッサは首を締め上げられ、苦しそうに足をジタバタさせた。

リトは無慈悲に握力を強めた。


シュルルル


「姐さんを離せ !この化け物 !」


突然満身創痍のララが長い尻尾をリトに絡みつかせた。


「姐さんだけは……傷つけさせない…… !」

「ララ……っ !」


ララはは先程の戦いで動けない程のダメージを負っていたがメリッサを救うため、体にむち打ち、リトに立ち向かった。


「デリャアアア !!!」


メリッサの首を掴んでいる腕にボロボロのザルドが噛みついた。


「てめえの腕を食い千切ってやる !!!」


ザルドの牙は鋭く深く食い込み、簡単には離れない。


リトはララに全身を巻き付かれ、ザルドに腕を噛まれているにも関わらず、全く動じていなかった。


「アンタの魔力、残らず吸い尽くしてやるよ !蛇姫(ラミア)吸血(ドレイン) !」


ララはリトの首筋に噛みつき、血を吸い始めた。


「まずいよ~いっぱい吸われたら動けなくなっちゃう~ !」


ミライが心配そうに叫んだ。

リトはなおも微動だにしなかった。


「あいつ……何考えてやがる……」


ヴェルザードは掠れた声で呟いた。


突然リトの体に異変が起きた。全身から湯気が発生したのだ。

前に見たことがある……。全身の体温をマグマのように上昇させる高熱体質(ヒートボディ)だ……。


「あつっ !」

「舌がっ !」


あれだけ執拗に食い下がっていたララとザルドは熱さに耐えられずあっさり離脱した。

リトはその隙を逃さず、メリッサを投げ飛ばし、怯む二人を蹴り、岩場に叩き付けた。


「「「ぐはあっ !」」」


リトの腕力、脚力は比べ物にならないほど強化されており、たった一撃で三人は身動きが取れなくなってしまった。

メリッサ、ザルド、ララは岩盤に磔にされ、気を失った。


「すごい……一人で三人を……」


コロナは目を丸くした。魔人の強大な力を目の当たりにしたからだ。


リトは攻撃の手を緩めることは無かった。

人差し指を三人に向けると、指先に魔力を集中させた。


「くっ……ここまでか……」


まもなく指撃熱線(フィンガーヒート)が発射される……その時


ドゴォォン !


巨大な岩石が投げ飛ばされ、リトの後頭部に直撃し、粉々に砕け散った。

リトは無傷の様子で、ゆっくりと後ろを振り向いた。


「はぁ……はぁ……」


岩石を投げ飛ばしたのは先程吹っ飛ばされたラゴンだった。

ラゴンはだいぶ息が上がっている様子だった。


「やべえ……やべえよ…… !こんなやべえ奴がこの世に存在してたなんてなぁ !興奮と恐怖でよく解らねえことになってやがる !」


ラゴンは高揚しながらも手が震えていた。

リトは無言でラゴンの方に目を向けるとゆっくり近づいていった。


「こいつだけは別格だ……間違いねえ……こいつこそが……かつて古の時代、ありとあらゆる種族を蹂躙し……破壊と殺戮の限りを尽くした伝説の魔人……イフリートだ !」


リトはラゴンを睨み付け、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。


「俺も本気にならねえとな !うおおおおおおおお !」


ラゴンは腰を低く落とし、拳を強く握ると力を込めた。

全身が硬い鱗に覆われた。

ラゴンの顔が人のものから凶悪な竜の顔へと変貌していった。


「どうしよう……あの人の魔力がとても大きくなった……」


コロナは身を震わせた。

ラゴンの姿は完全に竜に近くなった。


「始めようぜ !魔人イフリート !!!」


ラゴンは雄叫びを響かせると翼を大きく広げ、リトに向かっていった。


To Be Continued

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