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ランプを片手に異世界へ  作者: 烈斗
vs竜族編
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第七十五話・本当の絶望



魔力を失い、ヴェルザードは地上へと落ちていった。


「このままじゃ……落ちる……はぁっ !」


ヴェルザードは地面に落下する寸前、闇霧(ダークスモッグ)を使い、自分の体を霧に変え、衝撃を和らげた。

ヴェルザードは落下して死ぬことは防げたが、今ので魔力を使い果たしてしまった。


「くそ……血が……血が足りねえ……」


ヴェルザードは悔しそうに砂を掴みながら地面を這いつくばった。

全身は焼け爛れ、血だらけで服はボロボロ。痛々しい姿だった。


「……もう終わりかよ……つまんねえな」


落胆した様子でラゴンはヴェルザードのそばへ降り立った。


「ヴェル !」


倒れているヴェルザードに気付き、私は彼の方を見て叫んだ。


「戦いの最中に余所見してんじゃないわよ !」


しまった !


再びメリッサの髪が私の体を拘束した。


「ワカバちゃん !」


捕まった私に気をとられたコロナ、ミライもメリッサの髪の餌食となった。


「うっ……捕まっちゃった~」


私達はメリッサの髪に捕らえられ、身動きが取れなくなってしまった。


「離してください !」


私は抵抗し、髪を引きちぎろうとしたが拘束する力は強く、びくともしなかった。


「離すわけないでしょ ?さて、このまま全員石にするのは容易いけど、その前にラゴンがあのいけ好かない吸血鬼(ヴァンパイア)を殺す所をアンタ達に見せつけてあげるわ」


メリッサはラゴンの方を見ながら暗黒微笑を浮かべた。


「ヴェル……逃げてください !」


私は必死でヴェルザードに呼び掛けたが、魔力が尽き、血を失い、ボロボロになったヴェルザードは動くことすらままならない状態だった。


「くっそぉ……俺は……無力だ……」

「何勝手にリタイアしてんだ ?もっと遊ぼうぜ !」


ラゴンは倒れているヴェルザードの無防備な背中に爪を突き刺した。


「ぐわぁぁぁぁぁっ !」


ヴェルザードは背中から血を噴き出し、絶叫した。


「やめてください !ヴェルはもう戦えません !」


私はラゴンに向かって必死に訴えた。


「無駄よ、ラゴンは一度スイッチが入ったら止められないわ、自分の気に入ったおもちゃが壊れるまでね」

「そんな……」


ラゴンは高笑いしながら何度もヴェルザードの背中に爪を突き刺し、血が噴き出すのを見て興奮していた。

その様は狂気に満ちていた。

ヴェルザードは腕を伸ばし、苦痛に満ちた表情で悲鳴を上げ続けた。


「やめて…… !もうやめてよ…… !」


私は何も出来ず、涙を流すしかなかった。


「そこまでだ !」


突然小さなカラスがラゴンの背後に嘴を突き刺した。


「あ ?」


ラゴンは水を差され、怒りに満ちた表情で後ろを振り向いた。

ラゴンの背中を突き刺したのはメリッサの髪から逃れたクロスだった。

拘束される寸前にカラスの姿になることでかわし、ずっと息を潜めていたのだ。


「クロス !」

「クロスくんの敵う相手じゃないよ~ !逃げて~ !」


ラゴンの背中から血が滴り落ちた。

クロスは小さなカラスの形態から少年の姿に変身した。


「てめえみてえなガキが、俺に勝てるわけねぇだろ」


クロスの体は震えていた。だがその目は怯えてなどいなかった。


「所詮はカラスと竜……実力差は歴然……それでも僕は戦わなきゃいけないんだ !」


クロスは翼を広げ、低空飛行で加速し、ラゴンに向かっていった。


「はぁぁぁぁぁぁぁ !!!」

「甘い !」


ラゴンは無情にも尻尾を一振りし、クロスを軽くあしらった。


「うわぁぁぁぁぁぁ !」


なぎ払われたクロスは一撃でのされ、地面に叩きつけられ、小さなカラスの姿に戻ってしまった。


「クロスー !」


コロナは泣き叫んだ。本当は今すぐ駆け寄りたかったがメリッサの髪がそれを許さない。


「ふん、雑魚が……興が削がれたなぁ、まあいい、これ以上続けても無意味だし、とどめを刺すか !」


ラゴンは再びうつ伏せになっている血塗れのヴェルザードに視線を向けた。

そして爪をギラリと光らせ、大きく振り上げた。


「あばよ !吸血鬼(ヴァンパイア) !」


ラゴンは腕を降り下ろし、ヴェルザードを爪で切り裂いた。


だが、ヴェルザードの姿はそこにはなかった。


「あん ?」


ラゴンが爪で切り裂いた瞬間、ヴェルザードは霧となって消えた。


「あいつ……何処行きやがった ?」


ラゴンはキョロキョロと辺りを見回した。


ズシャッ


ラゴンの背中を何かが突き刺した。


「つっ……」


ラゴンは二度も背中を突き刺され、流石に堪えていた。

闇霧(ダークスモッグ)で霧になり、ラゴンの背後に回り込んだヴェルザードは残された力で赤剣(レッドナイフ)を作り出し、一矢報いたのだ。


「まだそんな力が……」

「はぁ……はぁ……吸血鬼(ヴァンパイア)を……なめるなよ……」


ヴェルザードは既に限界を越えていた。

拳に力が入らなくなり、血の短剣を地面に落とし、そのまま大の字になり、仰向けに倒れた。

僅かな魔力を絞り出し、今度こそ本当に力尽きたのだった。


吸血鬼(ヴァンパイア)……大した男だったぜ……お前のことは一生忘れねえかもな」


ラゴンは倒れたヴェルザードを見下ろした。


「今度こそ終わりだぜ」


ラゴンはゆっくりと腕を振り上げた。

このままじゃ……ヴェルザードは死ぬ…… !


「あばよ !!!」


ザンッ




「おん ?」


ラゴンが爪を一振りした瞬間、私はヴェルザードの前に立った。

竜の爪は私の体を容易く切り裂いた。

傷口から血が勢いよく噴き出した。辺り一面は赤く染まった。


「ワカ……バ……何……で……」


私はメリッサの髪を強引に引きちぎり、ヴェルザードを庇い、かわりにラゴンの攻撃を受けたのだ。


「いったぁぁぁぁぁ !!!」


髪を引きちぎられ、メリッサは痛みから悶絶していた。

ミライとコロナは髪の拘束から解放された。


「ワカバちゃん !!!」「お姉ちゃん !!!」


ミライとコロナはすぐに駆けつけた。

私は膝をつくとゆっくりと倒れた。


「ワカバちゃん、しっかりしてよ !」

「お姉ちゃん……死んじゃやだよ…… !」


二人は倒れた私を抱き締め、泣き崩れた。

コロナは(ヒーリング)しの(ドロップ)を何度も使用した為、もう使うことは出来なかった。


「人間のくせに……弱いくせに……俺を……庇いやがって……」


ヴェルザードは悔しさから唇を噛み締めた。


「女を傷つける趣味はねえんだけどなぁ……」


私を斬りつけたのは不本意だったのか、ラゴンは困惑した様子だった。


マルク、ヴェルザードは重傷を負い、エルサ、リトは石にされ、私もラゴンの爪で切り裂かれた。

仲間は次々に倒れ、無限(メビウム)結束(ユナイト)は絶望的な状況にあった。


「だがこれで俺達に刃向かう者達はいなくなった……人間共ぉ !選択肢を二つやるぜ !」


ラゴンは戦いを見守っていた兵士達に呼び掛けた。

兵士達はラゴンを睨み、一斉に武器を構えた。


「ここで戦って皆仲良く死ぬか……降伏し、俺達竜族の支配下となるか……どちらか好きな方を選べ」


兵士達は答えを決められず、迷っていた。

いくら兵士達が束になっても全滅は免れない……。

このまま、竜族によって侵略されてしまうのか……その時……




ピカッ


私の懐から転がっていた石になったランプが突然光りだした。


「眩しい !」


この場にいる全員が眩しさから目を覆った。

石になったランプはピキピキとヒビが割れ、ゆっくりと剥がれ落ちた。


「何…… ?」


石が全て剥がれ落ち、ランプは元の状態に戻った。

そしてランプの口から禍々しい黒い煙が発生した。


「ちょっと……何が起きたって言うのよ……」


やがて煙の中から、一人の青年の姿が現れた。


「……リト……」


薄れいく意識の中……青年の後ろ姿を見て私はリトの名前を呟いた……。

その姿はいつものリトではなかった。


髪は真っ黒に染まり、筋肉は膨張し、邪悪な黒いオーラを身に纏っていた……。

明らかにいつもと違う……。

まるで夢で見たもう一人のリト……。


「こんなもんを隠し持ってやがったのか……こりゃまだまだ楽しめそうだぜ」


ラゴンはリトの姿を見て高揚していた。

リトは何も言わず、ただ不気味に笑みを浮かべていた。


To Be Continued

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