表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ランプを片手に異世界へ  作者: 烈斗
vs竜族編
74/400

第七十二話・全てが石になる



リザードマンのザルド、ラミアのララと、順当に竜族の四天王は倒れていった……。

残るはメリッサとラゴンのみ……。


私とエルサはメリッサに勝負を挑んでいた。

メリッサは四人の中でもナンバー2の実力を持つと言われている。


「ララがやられるなんてね……正直侮っていたわ」


そう言いつつ、メリッサはまだ余力を残している様子だった。

まだ何か切り札を隠しているはず……。

私は唾をゴクンと飲み込んだ。


「メリッサ、君達竜族は何故戦いを起こすんだ !」


エルサはメリッサに問いかけた。


「何故ですって…… ?私達竜族はずーっと昔、古の大戦で敗れてからすっかり落ちぶれ、今日まで辺境の地で惨めに暮らしてきたのよ !でもそれも終わりよ、アンタ達をぶっ潰して、人間の町を支配して見せる !過去の栄華を取り戻すのよ !」


メリッサは激昂し、興奮した。


「君達の事情は解ったが……その為に多くの血が流れるのを黙って見過ごすわけにはいかない !全力で止める !」


エルサの目は本気だ。メリッサを強く突き刺すように睨み付ける。


「そう来なくちゃね、さあ、行くわよ !」


メリッサは深く深呼吸をすると走り出した。


「来るぞ、ワカバ !」

「はい !」


エルサの指示を受け、私は剣を強く握った。

エルサは剣を振り上げ、メリッサを斬りつけた。


「うっ……速いっ…… !」


メリッサは間一髪でかわしたがかすり傷がついた。

切られた髪の毛が宙を舞う。


「はあっ !」


エルサに続いて私も剣で斬りつけた。

メリッサは避けるだけで反撃をしてこなかった。


「やっぱりあのエルフよりは動きが鈍いわね」


メリッサに言われ、ムッときた私は更にスピードを上げ、メリッサに当たるまで何度も剣を振り回し続けた。

だがメリッサは踊るように避け続けた。


「そんな鈍い攻撃、当たるわけないでしょ !」

「ほう、ならばこれならどうだ !」


エルサは腰を低く構えると剣先から風を作り出した。


「はぁっ !」


エルサは目にも止まらぬ早さで鎌鼬(かまいたち)のようにメリッサの体中を切り刻んだ。


「ぐわぁぁぁっ !」


メリッサは全身から血を飛び散らせ、悲鳴を上げた。

そしてガクッと膝をついた。


「もしかして……この人……そんなに強くない…… ?」


リザードマンのような硬い鱗も逃げればラミアのように凶器のような尻尾もない……。

物理的なパワーも感じない、まるでか弱い女の子だ。

このまま行けば勝てるかもしれないという淡い希望を胸に抱いた。


「ワカバ、気が緩んでるぞ、油断するなよ」


エルサは私の慢心を見抜き、指摘した。


「ご、ごめんなさい……」


流石はエルサ、どんな時でも決して気を抜かない。

メリッサは下を向きながらニヤニヤ不気味に笑っていた。


「エルフ族……素早い身のこなしと鍛えられた腕力……優れた剣術……どれも厄介ね……でもこれ以上アンタに活躍はさせないわ !」


突然メリッサは立ち上がった。

私は戦慄し、身構えた。


「私の力、思い知らせてあげる !」


メリッサは自らの髪を触手のように伸ばし、私に襲い掛かった。

私は剣で防ごうとしたが、あまりの速さに動きをとらえきれなかった。


「くっ !」


私の前にエルサが立った。

メリッサの髪が蛇のような顔に変化し、エルサの首元に噛みついた。

エルサは私を庇った。


「怪我はないか……ワカバ……」

「エルサさん、何で……」


動揺する私に向かってエルサは微笑んだ。

私も何ともない様子を見て胸を撫で下ろした。


「うっ……」


急にエルサは苦しみだした。

胸をおさえ、顔が真っ青になっていく。


「エルサさん、大丈夫ですか !」


私は思わず身の毛がよだった。

エルサの体が灰色に染め上げられていく。


「ワカ……バ……にげ……ろ……」


エルサの足から徐々に広がっていき、やがて全身が石になり、石像のように固まってしまった。


「エルサさん !」

「ホッホッホッホ !どう ?私の力は ?あんなに強かったエルフの女が物言わぬ石像になったでしょ ?私は上位種竜族メデューサ、私の髪に噛まれたものは誰であろうと石になってしまうの」


メリッサは下卑た声で高笑いをした。


「エルサさん !エルサさん !お願い !目を開けてください !」


私は必死に呼び掛けた。

メリッサは不敵な笑みを浮かべながらゆっくり近寄ってくる。


「厄介なエルフの女を無力化したおかげで、後は鬱陶しい小娘だけになったわね」


どうしよう……元に戻す方法はあるのかな……。

私は目の前の友人が石にされ、どうしていいのか分からずパニックになっていた。


「主、こうなったら私を召喚してください !」


ランプの中でリトが語りかけた。


「で……でも……」

「あの女は危険です、このままでは主まで石にされてしまいますよ」


ここでリトを召喚するのは得策ではないのはわかっている。

だけどそんなこと言ってる場合じゃなかった。

私だけじゃない、メデューサの力で他の皆まで石にされてしまう……。


「分かりました…… !召喚 !イフリート !」


私はランプを掲げた。


「甘いわよ !!!」


メリッサは髪を無数の蛇の頭に変質させると蛇の口から青白い光線を吐き、ランプに浴びせた。


「しまった !」

「主 !」


金色だったランプは徐々に灰色に染められ、硬く重い石に変わり果ててしまった。


「あ……主……」


ランプの中にいるリトも石にされ、呻きながらも私のことを呼び、途絶えた。


「リト…… ?リト !」


私はランプに向かって何度も必死に呼び掛けたが返事は無かった。

私は茫然とし、へたりこんだ。


「あら、頼みのランプも石になり、万策尽きたって感じね」


メリッサは底意地悪く吐き捨てた。

私は涙を浮かべながらメリッサを睨んだ。


「何よその目は……弱いくせにムカつくわね、アンタも石になりな !」


メリッサの髪から光線が放たれた。


「まずい !」


少しでも当たれば石にされてしまう。

私は剣を盾にし、防ごうとした。

かろうじて光線を防ぐことが出来たが剣が段々と重くなってるのが伝わった。


「そんな…… !」


私の持つ剣はメリッサの光線を受けて石になってしまった。

こうも重くなっては使い物にならない。

私は剣を放り捨てた。


「あらあら、とうとう丸腰になっちゃったわね、どこまで逃げ切れるかしらぁ !?」


メリッサは髪から容赦なく光線を電撃のように浴びせた。

私は必死になって逃げ続けた。

何処までも広い採石場を縦横無尽に駆け回った。光線を浴びた地面が灰色の石に染め上げられていく。


「ホラホラ、避けてるだけじゃつまらないわよ !」


さっきと完全に逆転した。

今の私は逃げることしか出来ない。

迂闊に近寄れば光線を浴びて石になる……。

武器も使えず、リトを召喚出来ず、なすすべが無かった。

走り続けて体力も限界を迎えた。


「鬼ごっこはもうおしまい ?」


メリッサはゆっくりと恐怖を教え込むように近づいた。

そこで石にされたエルサに気付いた。


「邪魔な石ころね……壊しちゃおうかしら」


メリッサはニヤリと笑うとエルサに向けて髪を伸ばそうとした。


「あっ…… !ダメ !」


メリッサはエルサを壊そうとしている。

もし壊れてしまえばエルサは二度と元に戻らない。

それだけは絶対にやだ !

私はエルサの像の前に立ちはだかった。


「殊勝な心がけね !」


メリッサの罠だった。

隙をついて彼女の長い無数の蛇の髪が私の首、腕、胸、腰にきつく巻き付いた。

私は首を締め付けられ、息が出来なかった。


「んっ…… !」

「無様なものね、仲間も守れず、切り札も使えず、これが弱者の末路なのよ !」


メリッサは更にきつく締め上げた。


「かはっ…… !」


私は悶絶し、吐血した。

抵抗しようにも力が入らない。

蛇の舌が嘲笑うように私の頬と首筋を舐める。

気色が悪く、背筋が凍った。


「んっ……」


締め付けは更に強くなる。

喉が引きちぎられそうだ。

まずい……殺される…… !


「ワカバお姉ちゃん !」

「ワカバちゃん !」


ララを倒したコロナ達が巻き付かれてる私に気付き、駆け寄ろうとした。


「コロ……ナちゃん……ミ……ライ……ちゃん……こっちに来ちゃ……んっ……だめぇ……」


私は締め上げられながらも必死に声を出した。


「その通り !動いたらこの女を絞め殺す !アンタ達には何もさせないわ !」


私はメリッサに人質に取られてしまった。

ミライとコロナは何も出来ず、ただ黙って見てることしか出来なかった。


ごめんね……エルサ……ごめんね……リト……私のせいで……。


To Be Continued

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ