第七十話・蛇姫の食事
マルクvsザルドは辛くもマルクの勝利に終わった。
だがダメージを受けすぎた為、救護班の手当てを受けることとなった。
ミライとコロナ、クロスはララとの戦いで苦戦を強いられていた。
「ホラホラ、近づけるものなら近づいてみなさい !」
ララは下半身の長い尻尾を自在に操り、鞭のようにしならせ、地面を叩き、挑発した。
「うへぇ~痛そう~」
迂闊に近寄れず、ミライ達は手をこまねいていた。
「ミライ、空に飛ぶぞ !」
クロスがミライに指示をした。
「分かったよ~」
ミライとクロスは翼を広げ、空を飛んだ。
「こら !飛ぶなんて卑怯よ !」
ララはカンカンに怒っていた。
「ふん、何とでも言え !黒羽根乱針 !」
「羽根乱針~ !」
ミライとクロスの放つ無数の羽根が矢のようにララに降り注ぐ。
「そんなの効かないわ !」
ララは尻尾を大きく振り回し、全ての羽根を一掃し、薙ぎ払った。
「どうしたの、これで終わり ?」
ララは空中にいる二人を見上げ、挑発した。
「あのラミア族の特徴である尻尾、厄介だな……」
「どうしよう、攻撃が効かないよ~」
そこにコロナが杖を掲げ、オレンジ色に光らせた。
「あらお嬢ちゃん、何をするつもりなの ?」
「大地の光 !」
コロナは杖で地面をつくとオレンジ色の光を発現した。
光は地面を這い、ララに向かう。
「子供なのに派手な攻撃、感心するわね」
ララは真正面から受け止めた。光がララを包み込もうとする。
「あたしの尻尾はそんな柔じゃないのよ !」
オレンジ色の光を浴びながらもララは耐えた。
「そんな…… !」
「竜族の持つ鱗は頑丈なの……よく覚えておくことね」
ララは地面を這いながらゆっくりコロナに近づいた。
「コロナァァァァァ !」
クロスは無数の羽根をララの無防備な背中に浴びせた。
「あんた達……いい加減降りてきなさいよ !」
ララは尻尾をバネにし、勢いよくジャンプした。
「何だと !?」
ララは宙を舞いながらイルカのように空を泳いだ。
「跳べるのはアンタ達だけじゃないってことよ !」
バァンッ
ララは空中でくるっと回ると尻尾の先端に力を込め、クロスとミライを叩き落とした。
「うわぁぁぁぁ !」「きゃああああ !」
二人は地面に叩き付けられた。
クロスは衝撃で元の小さいカラスの姿に戻ってしまった。
「よいしょっと」
ララは地面に着地した。衝撃で土砂が舞う。
「何か動いたらお腹空いちゃったぁ~どうしよっかなぁ~」
ララは落ちた二人を吟味していた。
「鶏肉も悪くないわねぇ~」
ララは涎を垂らしながらニヤニヤしていた。
「ミライお姉ちゃん !逃げて !」
悪い予感がしたのか、コロナは叫んだ。
「いたた~……動けないよ~……」
ミライは身動きが取れずにいた。
ララはミライのすぐそばまで近づいた。
シュルルル
ララの長い尻尾がねっとりミライの肢体に絡み付いた。
「ん~気持ち悪いよ~」
ミライは抜け出そうと抵抗するが拘束する力は強く、簡単にはふりほどけない。
「シ……銀の翼~ !」
ミライは翼を鋼鉄のように硬くし、内側から尻尾を切り裂こうとした。
「無駄よ、私の鱗はそんなガラクタじゃ切れないの……」
翼を硬化させても大して効果は無かった。
ララはゆっくりとミライの顔に近づいた。
「アンタってほんと可愛い顔してるわね」
ララはミライの耳元で囁いた。
「んっ……な、何がしたいの~……」
「うふふ……まあ見てなさい、蛇姫の吸血 !」
ララは口を大きく開けるとミライの首に噛み付き、牙を首筋に突き立てた。
「ひゃっ!」
ララはジュルジュル音を立てながらミライの血を吸っていた。
「ミライお姉ちゃん !」
「何これ~……力が……抜けていく~……」
ミライは血を吸われ、呻き声を上げた。
抵抗する力が徐々に弱くなっていく。
「ミライから離れろ蛇女 !」
カラスの姿になったクロスが一生懸命ララの尻尾を嘴でつついた。
「鬱陶しいわね」
ベシッ
蚊を叩くようにクロスを尻尾で薙ぎ払った。
「うわあっ !」
クロスは吹っ飛ばされ、無様に地面を転がった。
「ミライお姉ちゃんから離れて…… !」
勇気を振り絞り、コロナは杖を大きく振り上げようとした。
「何よ、やる気 ?」
ララは凍えるような目でコロナを鋭く睨み付けた。
「ひっ…… !」
蛇に睨まれた蛙……。コロナはララの眼光に囚われ、恐怖心から杖を降ろしてしまった。
まるで凍らされたかのようにコロナはその場から動けなくなった。
「そうよ、大人しくそこで見てなさい、あたしの食事をね」
ミライは何度も血を吸われ、ぐったりしていた。
いつもの天真爛漫さは消え、顔は真っ青になり、目は虚ろで変わり果てた姿となった。
「やめて……ミライお姉ちゃんに……ひどいことしないで……」
ミライは涙を浮かべながらララに訴えた。
「私はね、生物の生き血が大好物なのよ、人間のが一番好みだけどハーピーも悪くないわ」
無慈悲にもララは吸血をやめなかった。
まるで吸血鬼のようである。
コロナは仲間がやられているのをただ黙って見てることしか出来ずにいた。
悔しさと怖さから拳を震わせ、涙目になり
唇を噛み締めた。
「ごめんね……ミライお姉ちゃん……やっぱり私は……弱い……」
コロナはしゃがみ、すすり泣いた。
「……だい……じょう……ぶ……だよ~……」
その時、ミライは絞り出すように声を上げた。
「コロナちゃんは~……強いよ~……どんな辛い時も乗り越えてきたんでしょ~……だから、前を向いて……胸を……張って良いんだよ~……」
真っ青になった顔でミライは精一杯笑顔を浮かべ、うつ向くコロナに語りかけた。
「あら、まだ余裕みたいじゃない ?どこまで耐えられるかしら」
ララは容赦なくミライから血を奪う。
「うっ……コロナ……ちゃん……私は……信じてる……からね~……」
「ミライ……お姉ちゃん……」
コロナは覚悟を決めたのか、拳を強く握り、ゆっくりと立ち上がった。
「私が……ミライお姉ちゃんを……助ける !」
ミライは杖を掲げた。
「火炎球 !」
杖から火の玉を繰り出した。
火の玉は花火のように勢いよく飛び散り、ララの尻尾に燃え移った。
「熱っ !!」
ララは熱さに耐えられず、すぐにミライから離れた。
「ふーふー !何てことするのよ !乙女の命より大切な尻尾に !」
ララは焼けた尻尾に息を吹き掛けながら憤っていた。
「大丈夫 ?ミライちゃん……」
「へへへ……体に力が入らないよ~」
コロナはミライの元に駆け寄った。
ミライは力無く笑って見せた。
「癒しの雫……これ飲んで……」
コロナは杖から出した一滴の雫をミライの口に注いだ。
「わ~ !一気に元気出た~ !」
ミライは瞬く間に全快した。
失われた血液も取り戻せたようだ。
「ありがとね~コロナ~」
ミライは笑顔でコロナを翼で包み込むように抱き締めた。
コロナは照れて頬を赤く染めた。
「コロナ……頼む……僕にも癒しの雫を……」
クロスが横たわりながら震えた声で懇願した。
「わっクロス !待っててね !」
コロナは慌ててクロスの元に駆け寄った。
そしてクロスも無事回復することが出来た。
「すまないな、使い魔なのに……君に助けられてしまって……」
少年の姿になったクロスは自らの不甲斐なさを嘆いていた。
「いいよそんなの、気にしないで」
「そうだよ~仲間なんだから~助け合わないと~」
ミライはミライとクロスを翼で抱き寄せた。
「お、おい !」
クロスは少し照れていた。
「ぐぬぬ……あたしの拘束から脱出出来たくらいで調子に乗っちゃって…… !鼻に触るわね……でもあたしも、ハーピーの血を吸ったおかげでパワーアップしちゃったんだからね」
ララは戦闘の構えを取った。
「捻り潰してあげるわよ、三人まとめてね」
ララは不敵な笑みを浮かべた。
「皆~、もう一頑張りだよ~」
「うん !」
「ああ !」
ミライ達に緊張感が走った。
ミライ、コロナ、クロスvsララ……果たして
勝つのはどちらか…… !
To Be Continued




