第六十九話・半魚人vsリザードマン
無限の結束と四人の竜族の戦いの幕が切って落とされた。
マルクvsザルド
私、エルサvsメリッサ
ミライ、コロナ、クロスvsララ
ヴェルザードvsラゴン
対戦カードは以下の通りだ。
「オラァッ !」
「ウオラァッ !」
ガキキキキキィンッ
マルクとザルドはヒレと爪で互いに斬り合っていた。
ヒレと爪が弾かれる度に火花が飛び散った。
「やるじゃねえか半魚人 !人間なら一撃でノックアウトだぜ !」
「余裕ぶっこいてんじゃねえ !」
マルクは勢いをつけ、回し蹴りを決めた。
「甘いぜ !」
ザルドは尻尾を自在に操りマルクの片足を絡め取った。
「何ぃ !?」
「こいつには耐えられるかな ?」
ザルドは強靭な尻尾でマルクを宙吊りにして持ち上げると思い切り地面に叩きつけた。
「ガハァッ !」
地面がめり込む程の衝撃を浴び、マルクは吐血した。
「リザードマンは全身が武器なんだぜ !全てを引き裂く爪 !全てを跳ね返す鱗の鎧 !全てを砕く牙 !全てを投げ飛ばす尻尾 !俺に死角はねえ !」
ザルドは豪語した。
「確かに……厄介だな……」
マルクはゆっくりと立ち上がった。
「ほう、てめえも案外タフなんだな」
ザルドは嬉しそうにほくそ笑んだ。
「てめえ程じゃねえがな……俺もそれなりに場数を踏んでんだよ !」
マルクは走り、ザルドと距離を詰めた。
「でぇぇぇぇや !」
マルクは腕を大きく振り上げた。
「学習しないやつだ !」
ザルドは太く長い尻尾を振り上げ、マルクを狙った。
「魚人水刃 !」
マルクは腕を十字に組みながら擦り、衝撃波を放った。
ズバッ
水の刃がザルドの尻尾を切断する。
「ぐおおおおおお !」
ザルドは尻尾を斬られ、悶絶した。
尻尾の断面から血が滴る。
「いてて……水の刃とはな、とんでもねえ切れ味だぜ」
「俺は水属性だからな、これくらい朝飯前よ」
マルクは得意気に胸を張った。
「だが尻尾を切断したからってイイ気になるなよ……はぁぁぁ……」
ザルドは力を全身に込めた。
すると斬られた尻尾の断面から新たな尻尾が生えてきた。
「再生出来るんだよ、俺達竜族はなぁ !」
「まあ知ってるけど」
「何ぃぃぃ !?」
ザルドは意外な反応に思わず目が飛び出るほど驚いた。
「この前戦った大蛇の野郎が散々再生しまくってたからな、もう見飽きたぜ」
「くそおおお……間抜けなリアクションを期待してたのにぃぃ……」
ザルドは悔しさから歯ぎしりをした。
「まあ良い、だがお前は俺の体が再生できるだけだと思っているな ?」
ザルドは急に不敵な笑みを浮かべた。
「どう言う意味だ」
「いずれ分かるぜ」
「どうでも良い、続きをやろうぜ !」
マルクは腕をクロスした。
「魚人水刃 !」
マルクは再び水の衝撃波を何度も放った。
「そんな攻撃、もう効かねえ !」
ザルドはものともせず、自慢の爪で弾き返す。
「当たらなきゃどうってことねえな !」
「やっぱ遠距離攻撃は厳しいか !」
マルクは一旦攻撃をやめ、正面からザルドに殴りかかった。
「ウオラァァァ !」
野獣のように叫びながらマルクは握った拳をザルドの顔面に喰らわせる。
ザルドの顔がめり込み、歪む。
「良いパンチ持ってんじゃねえか」
「こんなもんじゃないぜぇぇ !オラオラオラァ !」
スピードはマルクの方が上だった。
マルクはザルドに反撃の隙を与えず、連続で攻撃を叩き込む。
ザルドは抵抗出来ず、ひたすらサンドバッグになり殴られ続けた。
「す、すげえ……」
「あれが他種族同士の戦いか……」
他の兵士達は呆気に取られていた。
「これでフィニッシュだぁ !」
マルクが腕を振り上げた瞬間……
シュルルル
「何ッ !」
背後から何者かがマルクの首を締め付けた。
「くっそぉっ、何だ、新手か…… !」
マルクは首に絡み付く何かをほどこうとするが締め付ける力は益々強くなるばかりだった。
「この太い触手みてえなのは……まさか…… !」
マルクはすぐに理解した。
「そう、さっきてめえが切り落とした俺の尻尾だぜ」
ザルドはゲスな笑みを浮かべた。
「んな馬鹿な…… !」
「たとえ斬られようと、俺の尻尾は暫くは動き回れる……しかも明確な意思を持ってなぁ !」
斬られた尻尾がマルクの動きを封じる。
ザルドはゆっくり近付いた。
「今のお前は無防備……裸も同然だ……さて、お返しと行こうか !」
ザルドは腕を大きく振り上げると、鋭利な爪でマルクの体を切り裂いた。
「ぐわあああっ !」
避けることも守ることも出来ず、マルクはまともに喰らってしまった。
マルクの体から血飛沫が舞う。
「オラオラどうしたぁ !」
ズバッズバッズバァッ !
ザルドは無抵抗のマルクを何度もその剣より鋭い爪で引っ掻き続ける。
マルクの体が血に染まる。
「ひでぇ……」
「何てやつだ……」
兵士達は敵のあまりの残虐さに憤りを感じていた。
「もう我慢出来ねえ、俺達も加勢するぞ !」
兵士達は武器を取り、ザルドに向かっていった。
「うおおおおおお !」
「雑兵共が、邪魔だぁ !」
ザルドは鬱陶しそうに尻尾を振り回した。
風圧だけで兵士達を吹き飛ばした。
「うわぁぁぁぁぁぁ !」
もはやマルクを助けられる者は誰もいない。
「うっ……」
マルクもの体も限界を超え、力無く膝をついた。
「卑怯なんて思わないでくれよ ?これは人間共と俺達竜族の戦争……殺し合いなんだ……」
ザルドは膝をつくマルクを見下ろした。
「楽しかったぜ、半魚人……せめててめえの肉を俺の成長の糧にしてやるぜ !」
ザルドは口を大きく開け、無数の鋭い牙が露になった。
「あばよ半魚人 !!!」
ザルドは上から勢いよくマルクを噛み砕こうとした。
ガブッ
「ふがあっ !?」
マルクを噛み砕こうとしたザルドの口は何故か斬られた尻尾に噛みついていた。
「ほへは……ほへほ…… 」
マルクは自分の尻尾で口を塞がれ、ふがふが言いながら困惑していた。
「……この俺がトカゲの餌だと……死んでもごめんだぜ……」
マルクはよろめきながらもゆっくりと立ち上がった。
全身を切り刻まれ、血塗れになった姿は痛々しかった。
「いてえな、悲鳴をあげたくなるくれえ身体中が痛い……だがこの痛みこそが、生きてることを実感できる……」
マルクは拳を強く握った。
「とは言え俺も限界だ……一撃で決めさせてもらうぜ」
マルクはフラフラ倒れそうになりながらも大きく深呼吸をした。
「は、はひをふふひは ?」
ザルドは牙が尻尾に根強く食い込み、離すことが出来ずにいた。
「うおおおおお !魚人水砲 オオオオオオオオ!!!!」
マルクは口から水のブレスを噴射した。
「オオオオオオオオオオオオ !!!」
水のブレスはザルドに直撃した。水圧がザルドを押し潰す。
「ウオオオオオオオオオオ !!!」
ザルドは耐えきれず、水圧に押し負け、岩盤まで勢いよく吹っ飛ばされた。
「ガハァッ !?」
ザルドは岩盤に叩きつけられ、土砂が舞った。
「この俺が……」
ザルドは小声で呟くと意識を失った。
「はぁ……はぁ……」
マルクは息を切らしながら膝をつき、うつ伏せに倒れた。
「ちっ……思ったよりダメージが……一人倒すだけでこの様とは……俺も……まだまだだな……」
ボロボロになり、地面に寝転びながらマルクは自嘲した。
「マルク殿おおおおお !」
後方に控えていた兵士達が倒れたマルクに駆け寄った。
「大丈夫ですか !今手当てしますよ !」
「へへっ助かるぜ……後は頼んだぜ……お前ら……」
マルクは兵士達に担がれ、運ばれていった。
一方、ミライ、コロナ、クロスとララとの戦いが苛烈を極めていた。
「3対1だからって勝てると思ってるの ?」
ララは余裕綽々な様子だった。
「やってみないと分からないよ~ね~コロナちゃん~」
「うん !」
ミライとコロナは苦戦の真っ只中だった。
「コロナちゃん~、頑張ろうね~」
ミライはコロナに微笑みかけた。
「うん、私も負けてられない…… !」
「その意気だ、コロナ !」
「ふん、気に入らない、全員私の胃袋で溶かしてやるわ」
ララはゲスな笑みを浮かべた。
ハーピー、魔女、使い魔とラミア……果たして勝つのはどちらなのか……。
To Be Continued




