第六十八話・四人の竜族
私達の前に現れた四人の竜族。
彼らは他の竜族達とは違う、異様な雰囲気を醸し出していた。
「最後に残ったのはたったの4人か……」
「いや、油断するな、この4人……他の倒れたやつらとは別格だぞ……」
エルサは警戒心を強め、皆に注意を呼び掛けた。
「ほう、誇り高き竜族が揃いも揃っておねんねとは何事かと思えば……人間共の中に魔族やエルフが混じっていたとはなぁ」
一人の竜族の青年が前に出た。
「何だ、裏切り者とでも言いたいのか ?」
ヴェルザードは青年に挑発した。
「まさか、それより俺はワクワクしてんだ、人間は弱くて話にならねえが魔族が相手なら俺も楽しめそうだからよぉ !」
青年は嬉しそうに語っていた。
「ラゴンは相変わらずね」
「ま、ラゴンらしいけどな」
隣にいた竜族の女は呆れていた。
男の名はラゴンと言うらしい。
「人間が弱いだと…… ?見くびるなよトカゲ共 !」
堅固な山猫のメンバーが憤っていた。
「何だてめえらは」
「俺達は泣く子も黙る最強騎士団!堅固な山猫だぁ !俺はリーダーのイリス !」
「俺はモーテ !」「俺はベンガーだ !」
三人は大声で自己紹介をした。
「俺達は貴様ら竜族から町を守るため、ここに来たのだ !覚悟しろトカゲ共 !」
リーダーのイリスは啖呵を切ると剣を構えた。
イリスは後ろのミライをチラッと見た。
「見ていてください、ミライさん、我々の勇姿を貴女の瞳に焼き付けて見せますから !」
「頑張ってね~」
呑気なミライは堅固な山猫に向かって手を振った。
「大丈夫かよあいつら」
「弱くはないんだ……弱くは……」
エルサは苦笑いをしていた。
「人間には興味ねえんだよ……やれやれ、まずはゴミ掃除から始めねえとな」
「待て、ラゴン」
大男がラゴンの肩を掴んだ。
「こいつらは俺がやる」
「ザルド、やる気みてえだな」
ザルドと名乗る男が前に出た。
「こういう輩には恐怖を体に刻み込んでやると有効だぜ」
ザルドはポキポキと指を鳴らした。
「貴様が相手か……よし、モーテ、ベンガー !行くぞぉ !」
「「おおー !」」
堅固な山猫達は一斉にザルドに斬りかかった。
ガキン
三人の剣はザルドの体に命中した。
ザルドは反撃も避けもしなかった。
ただじっとしていただけだ……。だが三人の剣はザルドの体に当たったまま動かなかった……。
「何…… !?」
パリンッ
三人の剣はいとも簡単に折れてしまった。
「そんな……俺の愛剣が…… !」
リーダー・イリスは酷く落胆した。
「おいおい、笑わせないでくれよ、いくら俺の鱗が硬いからって、脆すぎるだろ」
ザルドはクスクス笑いが止まらなかった。
「まあいい、今度は俺の番だな !」
ザルドはグッと力を込めると肉体が一回り大きくなり、全身が緑色の鱗に覆われ、爪は鋭く発達し、顔が巨大なトカゲのように変化した。
「俺はリザードマンのザルドだ !覚悟は出来たか ?」
ザルドは3人を脅すように凄んだ。
「り、リザードマンだと…… ?何かと思えば下位種族か……驚かせやがって !」
イリスは震えながら罵倒した。
「本当に下位種族なのか……その身を持って思い知れぇ !」
ザルドは腕を振り上げた。
「馬鹿 !逃げろ !」
ズバアッ
エルサが叫ぶも遅く、ザルドは一瞬のうちに爪で3人の体を切り裂いた。
「え……」
三人は何が起こったのか理解できないまま血を吹き出させ、倒れた。
「そんな……堅固な山猫が……あっさり……」
兵士の一人が唖然とした。
「これで分かったろ ?人間は相手にならねえんだよ」
ザルドは手に付いた血を舌で舐めとった。
「エルサさん……あの人……この前の大蛇より強そうなんですけど……」
私は怖くてエルサに密着した。
「リザードマンは下位種族……。だがこいつは想像以上の破壊力を持っている……恐らく突然変異の個体だろう……」
エルサはそう分析した。
「ほう……てめえ、中々見所があるじゃねえか」
「あん ?」
ザルドの前にマルクが現れた。
「半魚人じゃねえか」
ザルドはマルクを上から見下ろし、ニヤリと笑った。
「俺は半魚人最強の男マルク !トカゲと魚……どっちが強いか試してみようぜ」
「面白いじゃねえか」
ザルドとマルクは互いに睨み合った。
「ま、マルク殿、我等も加勢を……」
兵士の一人が声をかけたが
「馬鹿野郎、命を粗末にするもんじゃねえ、引っ込んでろ !」
マルクは振り返り、一蹴した。
「その通り、お前ら雑魚共は指を加えて観戦してろ」
マルクとザルドに言われ、兵士達はその場から少し下がった。
「良い判断ね、雑兵がいくら集まっても餌になるだけ……貴方達人間共の命運はこの半魚人を始め、数人の魔族達に託されてるのよ」
髪の長い女の一人が私達を見回した。
「それにしても、随分と可愛らしい娘達ね……ほんとに強いのかしら」
どうやら私やミライ、コロナの事を言っているらしい。
女はイラついた様子だった。
「大丈夫ですよ、姐さんの方が可愛いです !」
「そういうフォロー要らないから」
もう一人の女が励ましていた。
二人はまるで姉妹のようだ。
「とにかく、あたしはあの娘達が気に入らないわ、特にあの小娘 !大して強くなさそうだし、清楚ぶってて鼻につくし、完膚なきまでに叩き壊してあげる」
女は私を指差しながら睨み付けた。
私はゾッとし、剣を構えた。あまりの迫力に肩が震える。
「案ずるな、私がついてる、いざという時は私が君の盾になる」
エルサは震える私の肩をポンと優しく叩いた。
「エルサさん……」
私は何とか落ち着きを取り戻した。
「アンタはエルフ族 ?他の小娘達よりは強そうね……しかも結構鍛えてて良い体してんじゃない」
髪の長い女はエルサを舐め回すようにじっくり見回した。
「気色の悪い女だな……ワカバ、二人で戦うぞ」
「はい !」
エルサは剣を静かに抜いた。
「私の名前はメリッサ……竜族の中でもナンバー1の実力を持つ女戦士よ」
メリッサは不敵な笑みを浮かべながら戦闘の構えをとった。
「姐さんもやる気みたいですね !じゃあ私も !」
もう一人の女は力を込めると両足がピッタリくっつき、下半身は長い蛇の尻尾へと変化した。
「私はラミアのララ、丁度お腹が減ってるの、今日のお昼御飯は貴方達で良いわね ?」
メリッサを姐さんと慕う女・ララはミライとコロナ、クロスに目をつけた。
「ひっ…… !」
コロナは思わず杖を握りしめた。
「あら~お嬢ちゃんそんなに怯えちゃって可哀想~……でも安心してね、一瞬で終わらせてあげるから……」
ララは物凄い形相でコロナを威圧した。
「ひいっ !」
コロナは涙目になり目を瞑った。
「大丈夫だよ~コロナちゃん」
震えるコロナをミライは翼で包み込んだ。
「一人じゃ怖くても……皆がいれば怖くないよ~」
ミライは優しく微笑んだ。
「ミライ……お姉ちゃん……」
コロナは少し安堵した。
「そうだ、それに僕が君を守る、あんな蛇女に君を食べさせたりなんかしない」
クロスはキッとララを睨んだ。
「あの僕むかつくわね……良いわ、全員まとめて餌にしてあげるんだから !」
ミライ、コロナ、クロスとララの戦いが始まった。
残されたのはラゴンとヴェルザードだけだった。
「お前が竜族の親玉か……」
「みたいなもんだな、正確には村長の息子ってだけだが……それでも里の中では一番強いぜ」
ラゴンはヴェルザードの瞳を見ていた。
「その赤く禍々しい瞳……吸血鬼だな」
「ああ」
「偵察ドラゴンによると、ヒュウを倒したのはお前のようだな、道理であいつが敗れるわけだ」
ラゴンはフフッと苦笑いをした。
「仇をとるつもりか ?」
「死んでないんだろ ?だからそういう考えはねえさ……。んなことより俺は強いやつと戦うのが楽しみでしょうがねえんだよ !」
ラゴンは胸を踊らせていた。
「だからよ、俺を楽しませてくれ、吸血鬼 !」
「戦闘種族の鑑だなお前……良いだろう……お望み通り戦ってやるよ」
ヴェルザードはゆっくりと深呼吸をすると、低く腰を下ろし、構えをとった。
両者から緊迫した空気が流れる。
「無限の結束と竜族…… !勝つのはどっちだ…… !」
兵士達が固唾を飲んで見守る中、私達の本当の戦いが始まった !
To Be Continued




