第六十六話・竜の舞
いよいよ竜族達と戦う時がやって来た。
竜族を倒すため、私達「無限の結束」を始め、「堅固な山猫」等の様々な騎士団や傭兵達が集まり、遠征に出かけた。
私達の騎士団からはヴェルザード、エルサ、マルク、ミライ、コロナ、クロスが戦いに参加している。リリィには留守番を頼んだ。
私達はとある採掘場を目指し、歩いていた。
「地図によると、竜族達は竜の里を降りた後、この採石場への道を通り町を目指すだろう……我々は町への進行を食い止める為、ここの採石場でやつらを迎え撃つ」
エルサは地図を指差し、改めて皆に説明した。
「この場所なら広くて戦いやすいしな」
ヴェルザードは腕を組ながら納得していた。
「でも怖いよね~……竜族って~……」
ミライはソワソワしていた。
「心配いりません !貴女のような可憐な歌姫は、我々堅固な山猫が全力でお守り致します !」
堅固な山猫のリーダーがミライを口説いていた。
「ありがと~頼りにしてるね~」
天然なミライは軽く笑顔で返した。
「はう~天使だ~」
リーダーはミライの笑顔に悶えていた。
この距離感、アイドルとファンだな……。
「たく、呑気なもんだぜ、なぁクロス」
「ああ、ここから先は想像もつかない激戦になるかも知れんというのに……コロナも気を引き締めろよ」
クロスはコロナに声をかけた。
「うん……皆の足を引っ張らないよう……頑張るよ……」
「お前はまだガキなんだ、無茶はすんなよ、俺が前に出て敵をぶっ倒してやるからよ」
マルクはコロナに笑顔を向けた。
「うん」
コロナはマルクに微笑みかけた。
乱暴そうなマルクの意外な一面が見えた。
意外と子供の面倒見が良さそうだ。
「主……」
ランプの中からリトが私に話しかけてきた。
「どうしたんですか ?」
「悪い予感がするんです……何となくですが……」
リトの声のトーンがいつもより低かった。
「リト……大丈夫ですか ?」
「すみません主、何というか、落ち着かないというか……胸騒ぎがするんです……」
いつもは自信家だが、今日のリトは元気が無い。
まさか、夢のことが関係してるんじゃ……
「何だお前、竜族相手にビビってんのか」
ヴェルザードがリトを挑発した。
「ヴェル !」
私はヴェルザードを睨み付けた。
「ふっ、何を戯言を……竜族等この伝説の魔人であるリト様の敵では有りませんよ !10秒で灰にして差し上げます、ハッハッハ !」
リトは高笑いをした。
「ま、お前に限ってビビるなんてありえねえしな」
ヴェルザードは腕を頭の後ろに組んだ。
私には何処か無理してるように感じた。
「リト、あまり無理はしないでくださいね。私だって少しは強くなったんですから、私も精一杯頑張ります」
私はランプに微笑みかけた。
「主に心配されるなんて、この私も焼きが回りましたね……」
リトは自嘲気味に話した。
「ふーっ……やっと着いたー !」
そうこう雑談しているうちに、私達は採掘場に辿り着いた。
広い空間が支配し、、巨大な鉱山がそびえ立っていた。
特撮でよく見かけるものより遥かに広大で、私はその絶景に圧倒された。
「すごい迫力ですね……」
「ああ、戦場にはもってこいだぜ」
エルサは前に出ると遠くを見つめた。
「エルサさん ?」
「もうすぐこの場所に、やつらがやってくる……」
エルサの表情は険しかった。
「ここを決戦の舞台とし、町への侵攻を止めてやる……」
「そうですね、エルサさん……私も足を引っ張らないように頑張ります !」
「逞しくなったな、ワカバ」
エルサは優しく微笑んだ。
「なあヴェル、どっちが多く竜族を倒すか勝負しようぜ」
「挑むところだ、勝つのは俺に決まってるがな」
「あぁん ?やってみねぇとわかんねえだろぉ !?」
ヴェルザードとマルクは勝負をするらしい。
男子はそういうの好きだなぁ……。
「おいエルサ、あれを見ろよ、何か飛んでるぜ」
「何だ…… ?」
堅固な山猫のリーダーが空に向かって指を指した。
「ん…… ?」
目を凝らしてよく見ると無数の何かが翼を広げ、こちらに向かってきているのが分かった。
「まさか……竜族 !?」
エルサは警戒心を強め、剣を抜いた。
他の騎士や傭兵達も呼応するように武器を構えた。
空を飛行してる無数の何者かは彼方から火を吹いた。
「皆 !避けろ !」
エルサが叫んだ 。
騎士や傭兵達は盾を構え、彼方からの攻撃を防いだ。
「ちっ、いきなりかよ !」
マルクやヴェルザードは火の雨を難なく避け続けた。
「きゃっ !」
私やコロナは思わず目を瞑り、頭を覆った。
だがエルサが前に出て火の攻撃を防いでくれた。
「ありがとう、エルサさん……」
「気にするな、それより、次が来るぞ」
攻撃が止むと竜族達は次々と地上に降り立った。
その数は数十人に及んだ。
思ったより少ないな……。
「おいおい、相当の数の人間がいるじゃねえか」
「こりゃ狩りがいがあるってもんだ」
竜族達は口々に言い合った。
「さて、人間共、わざわざこんな所にまで足を運んでくれるとは、覚悟は出来てるらしいな」
「俺達の餌になる……アヒャヒャヒャ」
竜族達は皆腹を抱えて笑っていた。
「こいつらが竜族か……いけ好かない連中だな……」
エルサは竜族達を睨み付けた。
「エルサ殿、俺達は全部で100人以上はいる !数では俺達が有利だ」
「ああ、だが油断するなよ」
エルサは騎士の一人に忠告をした。
「では……皆、行くぞおおおお!」
騎士や傭兵達は剣を取り、一斉に竜族達に向かっていった。
「数では勝ってると思ってるようだなぁ !それは思い違いだぜぇ !」
「俺達竜族は戦闘種族 !人間共とは出来が違うんだよぉ !」
竜族達も攻めに入った。
鋭い爪や角、強靭な尻尾、凶悪な牙を武器に持つ竜族は一人一人が高い戦闘能力を有していた。
「ぐわぁぁぁっ !」
この竜族達は謂わば尖兵。しかし明らかに人間達が圧されていた。
硬い鱗が剣を簡単に通さない上、敵の攻撃が鋭く、一撃で致命傷に至るレベルなのだ。
「どうしたどうした !その剣や鎧はただの飾りかぁ !?」
竜族の一人が爪を振り上げ、一人の騎士を切り裂いた。
「ぐはぁっ !」
騎士の男は鎧を砕かれ、血を吹き出しながら崩れ落ちた。
「おのれ 竜族め !我々が相手だぁ !」
堅固な山猫の面々が無数の竜族達相手に剣を奮った。
「うおおおおお !」
ズバッ
彼らは勢いに任せ、ゴリ押しで一人の竜人を切り伏せた。
「お前達も臆するな !根性で乗り切るのだ !」
「おおおおおおおおおお !」
堅固な山猫のリーダーの言葉に呼応し、騎士達は戦意を取り戻し、反撃に出た。
次々と倒れていく竜族達。
「あいつら、かませのくせにやるじゃねえか、俺らも戦うぜ !」
「美味しいところは俺が頂く」
ヴェルザードとマルクが負けじと走り出した。
「おい !やれやれ、仕方のないやつらだ……ワカバ、私達も行くぞ」
「はい !」
私とエルサも剣を構えるとヴェルザード達の後に続いて走り出した。
竜族との戦いはまだ始まったばかりだ。
To Be Continued




