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ランプを片手に異世界へ  作者: 烈斗
vs竜族編
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第六十四話・竜の里



ここは、人の住む町から遠く離れ、豊かな自然に囲まれた竜の里。

少数の竜族達が暮らしている。




「親父、体の具合はどうだ ?」


とある大きな民家にて、一人の若い竜族の男が床に伏せてる老人に話しかけた。


「ああ、今日はとても気分が良い……」


老人は穏やかに答えた。


「そうか、それは良かったぜ……ほらよ、朝飯だぜ」


若い男は老人にお粥を差し出した。


「おお、すまんな、ラゴン」

「良いってことよ」


ラゴンと呼ばれる男はニコッと微笑んだ。


「じゃあ俺は外に出て筋トレしてくるからな、ゆっくり休んでろよ」

「気を付けるんだぞ」




ラゴンは家を出ると


「ん~ !空気が美味しいぜ~ !」


腕を伸ばし、深呼吸をした。すると小鳥程の大きさの小型のドラゴンが飛んできた。


「よ、偵察ご苦労 !」


小型のドラゴンは手紙を男に渡した。


「何々……ヒュウが捕まった !?あいつ……とうとうバレちまったのか…… !だがあのヒュウを捕まえるとは人間共も中々侮れねぇなあ……何か切り札を隠し持ってるに違いねえぜ」


ラゴンはブツブツ手紙を読んでいると、一人の竜族の女がやって来た。


「ラゴン、おはよう」

「よ、メリッサ」


女はラゴンに声をかけた。


ラゴンは先程の老人……村長の息子で竜族の中で最も高い戦闘能力を持つ男だ。普段は気さくな好青年だが戦闘になると人が変わったように狂暴になる。


「アンタ何読んでんの ?まさかラブレターとかじゃないわよね ?」


彼女の名はメリッサ。ラゴンの恋人である。一途だが嫉妬深い性格がたまに傷だ。


「ちげえよ !これ !ヒュウが人間共に捕まったんだよ !」

「嘘 !ヒュウが !?あいつ大蛇(ヒュドラ)なのよ !?」


メリッサは大変驚いていた。


「こりゃ人間界を落とすのも楽じゃ無さそうだな」


ラゴンは腕を組んだ。


「ラゴンさーん !大変でーす !!」


そこへ、一人の竜族の男が血相を変えてやって来た。


「西の森で、魔獣が現れました !ザルドさんとララさんが交戦中です !」


男は息を切らしながら報告した。


「魔獣か、あいつらだけでも何とかなりそうだが、人間界を攻める前に、軽く体を動かしておくか」

「ラゴン、加勢しに行くの ?」

「ああ !」


ラゴンは笑顔でサムズアップを決めた。




西の森に現れた魔獣は25メートルはあり、蜂のような姿をしていた。禍々しい羽を羽ばたかせ、ドリルのように鋭く巨大な針をぎらつかせていた。


「はぁ……はぁ…… !こいつ、中々手強いぜ…… !」

「迂闊に近づけばあの毒の餌食になるわ……」


リザードマンのザルドとラミアのララは魔獣相手に手こずっていた。


「苦戦してるようだな !」


翼を羽ばたかせながら颯爽とラゴンが降り立った。その腕にメリッサを抱き抱えていた。


「ラゴン !」

「部下が助けを求めてたからな」


ラゴンとメリッサはザルド達の元に駆け寄った。


「へぇ、あいつが今回の魔獣ね」

「はい姐さん。数人の竜族達が負傷しました」


ララはメリッサに説明した。


「ラゴン、どうするよ」

「決まってるじゃねえか、なぶり殺す」


ラゴンの目付きが変わった。まるで獲物を絶対に逃さない殺し屋のような目に……


「行くぜ !」

「おう !」


四人がかりで戦闘が再開された。


ヴィィィィィン


耳障りな羽音を響かせながら魔獣は巨大な毒針を突き刺そうと向かって来た。


「まずあの針を何とかしないとねぇ !はぁっ !」


メリッサは自らの髪を無数の蛇の首へと変化させた。


「喰らいな !」


無数の蛇の口から青白い光線が放たれ、魔獣の毒針に命中した。

するとみるみるうちに針は灰色に染まっていった。


「あたしの光線を喰らうとたちまち石になるのよ !」


メリッサの種族はメデューサ。髪の毛は無数の蛇で構成され、噛みついたり光線を浴びせた相手を石化させる力を持つ。


魔獣は自慢の毒針を石に変えられ、重さに耐えきれず、バランスを保つのに精一杯で動きが鈍くなった。


「次はあの羽を引きちぎってやるぜ !」


ザルドが前に飛び出た。


「オラァッ !」


ザシュッ


ザルドは高くジャンプすると魔獣の肩に乗っかり、自慢の爪を振り上げ、魔獣の羽を切り裂いてしまった。

魔獣は羽を失い地面に叩き落とされ、無様に地を這いつくばった。


「今よ、ララ !」

「はい !姐さん !」


今度はララが魔獣に近づいた。


「たっぷりお返ししてあげる !」


ララは下半身の長い尻尾を利用し、魔獣に絡み付き、全身を拘束した。

毒針を無効化され、羽を奪われ、抵抗しようともがくも、締め付けは更に強くなるばかりだった。


「どう……何も出来ないまま絞め殺される気分は……今の貴方はただの餌よ……」


ララは魔獣の耳元で囁いた。


「相変わらずドSだなぁララ !」

「私の妹分なのよ、当然でしょ」


メリッサはドヤ顔を決めた。


「さて、最後は俺の番だ」


ララは尻尾をほどき、拘束を解除した。

魔獣は文字通り虫の息だった。

ラゴンは魔獣のすぐそばまで近づいた。


「俺達の仲間が受けた傷は、こんなもんじゃすまねえぞ」


力なく横たわる魔獣の頭をラゴンは踏みつけた。


「もっと遊んでやるよ」


ラゴンは長く研ぎ澄まされた凶悪な爪を構えた。


「オラオラオラァ !!!」


ズシュッズシュッズシュッ !


ラゴンは何度も爪で無抵抗の魔獣の体を切り裂き、突き刺し、これでもかと言うほどいたぶった。


ラゴンの種族はかつて地上を支配したドラゴンの血を引く竜族・ドラゴニュートである。

人と変わらぬ姿でありながら爪に角、翼、尻尾とドラゴンの面影をその身に残した種族である。


魔獣の体から緑色の液体が辺り一面に撒き散らされた。


「うわぁ、容赦ねえなぁ」

「私以上のSだよ……」

「ほんと悪趣味なんだから……」


他のメンバーも引いていた。


「ふう……あれ、もう動かねえぞ」


ラゴンは魔獣の体を揺さぶったがピクリとも動かなかった。


「死んじまったか……拍子抜けだぜ……このまま死骸残してもしょうがねえし、火葬すっか !」


ラゴンは息を大きく吸い、


ボォォォォォォォォォ


魔獣だったものに向かって炎を吹き掛けた。

魔獣だったそれは激しく燃え盛り、あっという間に黒い炭になり、粉々に砕け散った。


「よし、終わりだぜ !」


ラゴンはガッツポーズを決めた。


「お疲れ、ラゴン」

「俺達のコンビネーションは最強だな」

「魔獣なんてもう相手にならないね」


皆戦いが終わり、勝利を喜び合っていた。


「それにしても、最近増えたな、魔獣」


ザルドが呟いた。


「確かに……ちょっと変よね」

「天変地異の前触れかも」


ララはメリッサに抱きついた。


「ま、どれだけ現れようと関係ねえ、俺達が倒してやるぜ」

「流石ラゴン、頼りになるわね」


メリッサは腕を組ながら感心していた。


「さ、里に帰って親父に報告しようぜ、俺腹ペコでさ」

「私も」


こうして、ラゴン達は里へ帰った。




「親父 、ただいま !」


四人は里に戻り、ラゴンの家に入った。


「おお、お帰り」


ラゴンを迎えたのは父親にしてこの竜の里の村長・ラゴラス。

高齢の影響で体が弱り、いつも床に伏せてる。


「ラゴラス村長……」


ラゴン以外の三人はラゴラスの前で膝をつき、頭を下げた。


「親父、今日は西の森で暴れていた魔獣を倒したぜ」

「ほう、ご苦労であったな」


ラゴラスはニコッと微笑んだ。


「所で親父、これを読んでくれ」


ラゴンは手紙をラゴラスに渡した。


「ふむふむ……何と……ヒュウが……」

「あいつの偵察がバレちまった以上、俺達の計画が人間共にバレるのも時間の問題だ」

「下手したら向こうから攻めてくる可能性もある !」


ザルドは懸念した。


「親父、今こそ人間共に戦いを仕掛けるべきだとは思わねえか ?」

「うむ……」


ラゴラスは腕を組ながら考えた。


長い間、大戦に敗れた竜族は人里離れた辺境の地に追いやられ、ひっそりと暮らしてきた。


「しかし……人間達もこの数千年の中で我々の想像もつかない技術を身に付けていったはず……迂闊に攻めいって逆に数を減らせば、種の存続が困難になるぞ……」


ラゴラスは頭を悩ませた。


「何を保守的なことを…… !竜族の発展は、俺達の長年の夢だったじゃねえか !その為に辛酸をなめながら今日まで歯を食い縛って生きてきたんじゃねえか !」


ラゴンは昂っていた。


「ちょっと落ち着いて……」


ラゴラスは咳き込んだ。


「村長 !大丈夫ですか !」


ララが急いでラゴラスの背中をさすった。


「やれやれ……年には勝てんな……」


ラゴラスは落ち着くと空を見上げ、自嘲した。


「兎に角俺は行くぜ……一世一代のチャンスは今しかねえんだ……」


ラゴンはそういうと出ていった。


「ラゴン待って !」


メリッサが後を追いかけた。




ラゴンは外に出ていた。

すぐにメリッサが追い付いた。


「……親父はもう長くない……」

「ラゴン……」


ラゴンはセンチメンタルになり、下を向いていた。


「だから親父がくたばる前に、俺達竜族の野望を果たしてやりてえんだよ……」

「その気持ちは皆同じよ……」


メリッサはラゴンの背中にそっと抱きついた。


「俺達誇り高き竜族が、いつまでもこんな所で燻ってるわけにはいかねえだろ……何なら俺一人でも……」

「一人で行く必要はないわ……」


メリッサの言葉を聞き、振り返ると、ザルドとララを始め、何十人もの竜族達が立っていた。


「ラゴン、お前の言う通りだ。俺達はお前に従うぜ」


ザルドは笑顔でサムズアップを決めた。


「お前ら……」


ラゴンは目を丸くした。


「後悔すんなよ、これは種の繁栄をかけた戦いだぜ」

「100も承知さ !」


ラゴンはフッと嬉しそうに笑うと前を向いた。


「行くぜお前らぁ!竜族の力 !人間共に思い知らせてやれぇ !」

「おおおおおおお !!!」


ラゴンは高らかに宣言した。


ラゴンを先頭に大勢の竜族達は里を降り、人間の住む世界へと向かった。


To Be Continued

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