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ランプを片手に異世界へ  作者: 烈斗
大蛇の誘い編
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第五十八話・夜空の向こう



中々寝付けなかった俺は夜風に当たって気分を落ち着かせようとこっそり屋根の上に登った。

そこには何とコロナもいた。

あいつ意外とお転婆だなぁ……。


「よ、よお、奇遇だな」


俺は、ぎこちなく挨拶を交わした。

そういえばこいつとはそんなに会話をしてなかったな。気絶してて目が覚めたら既に仲間になっていたというか……。


「ど、どうも……」


コロナもペコッとお辞儀をした。

生意気な使い魔のカラスは居なかった。


「あのカラスはどうしたんだ ?」

「クロスは寝てる……」

「そっか……」


き、気まずい……何話しして良いのか分からねえ……そういやワカバと二人きりになった時もこんな感じだったよな……。


「お前も眠れないのか ?」

「うん……ちょっと恐い夢を見て……」


俺は勇気を出して話題を振った。

するとコロナは小さな声で答えた。


「恐い夢…… ?」

「うん……。人間達が私とお母さんの住んでる家を囲んで、お母さんが裏口から逃がしてくれて……私はずっと走り続けた……」


ワカバから聞いたことがある。

コロナの語った夢は実際に起こった過去の記憶だった。

道理で闇ギルドにいたわけだ。


「どんなに頑張って走っても、足が重くて思うように進めなかった。お腹が空いて、転んだ時、目が覚めたの……」

「そうか……」


俺と似たようなもんか……。


「お前はどう思ってんだ ?人間のこと」


俺はコロナに聞いてみた。


「えっと……まだちょっと怖い……」

「そうか……気持ちは解るぜ」


俺はコロナの顔を見つめた。


「昔、父さんが何も言わず出ていったんだよ。小さかった俺は父さんを探すため、人間達の住む世界に足を踏み入れたんだ」

「それで ?」


コロナは真剣に話を聞いていた。


「この白い髪と牙、赤い瞳を不気味がられてな、人間のガキ共に囲まれてボコボコにされたんだ。今でも忘れねえ、あの時のやつらの敵意に満ちた表情……未だに夢に見る」

「私と同じ……」


俺は月を眺めた。


「そっから先は覚えてないんだが気付いたら洋館に戻ってた。リリィが泣きながら抱き付いてきたよ。あれからワカバと出会うまでずっと閉じ籠ってたんだ」

「ヴェルザードさん……苦労したんだね……」


俺は微かに微笑んだ。


「ヴェルで良いぜ」


コロナの固かった表情が少し柔らかくなってるのを感じた。


「俺は迷ってるんだ。人間と暮らせるのかどうか……お前もそうだろ」

「……うん……でも人間でも良い人はいるよ……ワカバお姉ちゃんとか……」


あいつは捕まっていた時もちゃっかりコロナを口説き落としていたもんな。

おっとりしてるのに抜け目のない女だ。


「確かに人間にも良いやつはいる。だが一度芽生えた憎しみや恐怖はそう簡単に拭えるもんじゃねえ……このパーティーにいる限り、俺達はずっと人間と関わり続けなきゃならねぇ……お前はそれに耐えられるか ?」


俺はコロナに問いかけた。



「……お母さんとロウが私に言ってくれたの……強く生きてって……だからね、例え何が起こっても、強く生きようって決めたんだ……」


コロナは俺の目をじっと見ながら言った。


「そうか……お前は強いな。流石闇ギルドで生きてきただけのことはある」


俺はコロナの頭を撫でた。


「二人ともこんな所で何をしてるんですか ?」


そこへ、ワカバが登って来た。


「えっ !?」


俺は驚き思わず飛び上がった。


「主、こいつもしやロリコンでは……」

「ええ……」


ワカバが若干引き顔になっていた。


「ち、ちげえよ !」

「冗談ですよ」


ワカバはニコッと微笑んだ。


「私もヴェルのことが気になって眠れなかったんです。一緒に居ても良いですか ?」


そう言うとワカバも屋根の上に座った。


「お、おう……」


ワカバはコロナと俺の真ん中に座った。


「二人とも眠れないんですか ?」

「あ、ああ……そんな日もあるさ」

「悩んだ時はちゃんと誰かに相談しないとダメですよ。ヴェルなんてあんなに美味しいご飯残すくらいなんですから」


ワカバは俺に指を指した。


「トマト食い過ぎただけだよ、それに大した悩みじゃねえ」


俺達は夜空を眺めた。星々がキラキラ宝石のように輝いていた。


「美しい……」


俺は思わず呟いた。それと同時に思い出した。いずれこの景色も竜族の侵攻により業火に包まれると……。


「あ、流れ星だよ」


コロナが天に向けて指を指した。

白く煌めく流星が落ちてくのが見えた。


「何してるんだお前 ?」


ワカバは目を瞑り、両手を強く握りながら腕を上に掲げていた。


「あ、流れ星が落ちてる間に願い事をすると願いが叶うんですよ」

「へーロマンチック !」


コロナが目を輝かせた。


「お姉ちゃん、何てお願いしたの ?」


ワカバは空を見上げた。


「皆とずっと仲良く居られますようにって……変かな……」

「ううん、素敵な願いだよ」

「流石主 !器が紺碧の海の如く広いですよ !」


コロナはワカバの手を取り、ニッコリ笑った。


「あぁ、お前らしい良い願いじゃねえの」


俺は頭をかきながら言った。


「ありがとう、二人とも」


ワカバは笑顔を浮かべた。その表情は、個人的に星なんかよりもずっと輝いて見えた。

この笑顔を消させるわけにはいかない。

俺の覚悟は決まった。


俺達は世が明けるまで、いつまでも星を眺めていた。




3日が過ぎ、俺とリリィはあの日ヒュウと会った場所に来た。


「随分早いじゃねえか。それで、決まったのか ?竜族と戦うのか、俺と一緒に来るか……」


ヒュウは俺に問いかける。


「ご主人様……」


リリィは俺の服をぐっと強く掴んだ。


「あぁ、決まったよ……俺の答えは……」


To Be Continued

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