第五十五話・未来へ繋げ、二人の願い
ようやく長編が終わりました……。
思ったより長くなりましたね……。
激しい激闘の末、闇ギルド「憎悪の角」のボス・ロウは死亡した。
その後、駆け付けた衛兵達により、幹部のオーバ、ゴード、ガギを始め、全ての闇ギルドメンバーが連行された。ついでに奴隷にされていた凍える鳥籠の頭・ローヴを含む盗賊団達も捕まった。
闇ギルドに拐われ、奴隷にされていた人達は全員無事に保護された。
ただ、憎悪の角に協力していたとされるミーデは神器・牛魔斧を持ち去り、行方を眩ました。
事実上、憎悪の角は壊滅した。
コロナとクロスも一度は衛兵達に連れてかれたが年齢が幼いこともあり、事情聴取で終わり、すぐにこちらに戻ってきた。
超魔獣ミノタウロスと戦ってくれた古代の魔獣コダイは私やリトになついていた。
このまま自然に返すのもどうかと思い、リトと同じように魔法のランプの中に吸収することにした。
コダイはリトのように正式に私の召喚獣になった。
長かった戦いがようやく終わった。
闇ギルドから帰還した私達はしばらくの間、エルサの家で体を癒していた。
皆激しい戦いで怪我を負っていた。
私はコロナの魔法で完全に回復していたが念のため休むことになった。
特にヴェルザードは吸血鬼の命の源である血液を消耗したせいで危なかった。
「あの……コロナっていいます……魔女です……宜しくお願いします……」
コロナはモジモジしながら私達の前で自己紹介をした。
「僕はコロナの使い魔、クロスだ。物心ついた時からコロナに仕え、守ってきた。宜しく頼む」
クロスは高圧的に自己紹介をした。
「改めて宜しく頼むぞ、二人とも !」
エルサはコロナとクロスの肩をポンポン叩いた。
色々あったけど皆も大歓迎だった。
この日から、無限の結束に二人の仲間が加わった。
はずだった……。
「大変です !」
ある日、リリィが血相を変えて皆を集めた。
「どうしたんだよリリィ」
ヴェルザードは寝起きの声だった。
「コロナちゃんが何処にもいないんです !」
「はぁ !?」
リリィの話によると、朝起きたらコロナとクロスの姿が何処にも無かったとのことだ。
コロナはてっきり無限の結束に入ったものだと思っていたけど……。心の何処かではまだ完全に受け入れていないということか……。
「どうしよう……あんな小さい子が……もし何かあったら…… !」
リリィは真っ青になっていた。
「心配し過ぎだぜリリィ。ちょっと散歩に行ってるだけだろ ?」
ヴェルザードはリリィを宥めた。
「私、探してきますよ 」
私は外に出ようとした。
「馬鹿野郎 !お前1人で行かせられるかよ !」
「その通りだ !また闇ギルドの連中に捕まったりしたらどうするつもりだ !」
「そうだよ~危ないよ~」
ヴェルザード、エルサ、ミライが一斉に止めた。
「大丈夫ですよ……リトも居ますし」
私はランプを見せた。
三人とも懐疑的にランプを見つめた。
「ちゃんと守ってあげられるの~」
「この前みたいに油断するんじゃねえぞ ?」
「やはり心配だな、私達も同行するか」
「貴方達そこまで私を信用できないんですか !」
ランプの中でリトは怒っていた。
「大勢で押し掛けるのは却って逆効果だと思いますし、私、コロナちゃんの行き先に心当たりがあるんです」
私は心配する皆を説得した。
「む……そうか……」
エルサは渋々納得しながら腕を組んだ。
「危なくなったらランプ投げ捨ててもすぐ逃げろよ」
「おい」
リトは低い声で突っ込んだ。
私とリトは外に出てコロナの居そうな場所を探した。
「主、本当にコロナの居場所が分かるんですか ?」
「はい、勘ですけどね」
そうこうしてるうちに私は人気の少ないある草原にたどり着いた。
「あ、主、居ました !」
そこには二つの小さな長方形の石が地面に突き刺さっており、可愛らしい花が添えられていた。
黒いフードの少女が石の前で座っていた。
「探したよ、コロナちゃん」
私は後ろからコロナの肩をポンと叩いた。
「ひっ…… !ってお姉ちゃん ?」
コロナは一瞬警戒したがすぐに私だと気づき、安堵した。
「貴様、何故この場所が分かった」
クロスは私を睨みながら言った。
「コロナちゃんが逃げるならここかなーって思ってね」
私はコロナの隣に座った。
「何故隣に座るんだ !連れ戻しに来たんじゃ無かったのか !?」
「別に良いじゃないですか、歩き疲れたから休憩とるだけですよ」
「相変わらず変わった小娘だ」
クロスは呆れた様子だった。
「…………」
私とコロナは目の前の石を静かに見つめていた。
暫く沈黙が続く。
そよ風が包み込むように吹いていた。
「お母さん……ロウ……二人とも大好きだったのに……私を置いて……」
コロナは寂しそうに口を開いた。
「私と関わったら……皆不幸になる……」
「それで今日出ていこうとしたんだ……」
コロナはフードを深く被り、心を閉ざしていた。
「私はそうは思わないな」
私はコロナの隣に寄り添った。
コロナは私の目を見つめた。
「二人とも、幸せだったと思うよ。コロナちゃんっていうかけがえのない宝物と出会えたから……」
「嘘だ…… !」
コロナは首を横に振った。
「私なんか……宝物じゃない……私は……」
私は震えるコロナをそっと抱き締めた。
「コロナちゃん……あなたは大切な宝物なんだよ。だからお母さんとロウはコロナちゃんに未来を託したんだよ。」
コロナは母とロウが残した言葉を思い返していた。
「お願い……コロナちゃん……生きてね…… 」「元気に……強く生きろよ……」
コロナの頬を涙がつたった。
「私……生きてて……良いのかな……」
「コロナちゃん……」
村の人間に怖れられ、忌み嫌われ、闇ギルドが唯一の居場所だった少女。
自分を肯定出来なくて当然だった。
「コロナちゃんは生きてていいんだよ、誰かがそれを願ってくれてるんだから」
「…………」
コロナは嗚咽をもらした。私はコロナの頭を優しく撫でた。
「どんなに迷惑をかけても、どんなに失敗してもいい。コロナちゃんは生きてていいんだよ、誰も不幸になんかならないから……」
コロナは我慢出来ず、私の胸に飛び込み、大声で泣いた。
ずっと耐えてきたんだな……。
クロスも静かに涙を流していた。
この日、コロナにとってかけがけのない新たな居場所が出来た。
彼女はこの先、真っ白な未来をひたすら進み続けるだろう。二人の願いを繋ぐために……。
私はミーデ。魔法のランプの回収には失敗しましたがミノタウロスの魔力をふんだんに吸い尽くした神器・牛魔斧を手に入れることは出来ました。
全くあの牛野郎は口だけで大したことありませんでしたね。
私は薄暗い宮殿に戻ってきました。今回のことをあの方に報告する為です。
「ミーデです、ただいま戻りました」
私は膝をつきながら声を張り上げました。
「うむ、ご苦労だったな」
そこへ、長い杖をつきながら白髪の老人がやってきました。私の師匠・魔導師デビッドです。
「神器・牛魔斧を回収しました」
私は斧を両手で差し出しました。
デビッドはそれを静かに受け取りました。
「ほう、底知れぬ魔力を感じるぞ……まるで生きているようだ……ミーデよ、お手柄であったな」
「お褒めに預かり、恐悦至極でございます」
私は深々と頭を下げました。
「各地に散らばった神器も残り3つ……いずれはあの方復活のため、魔法のランプを手にするのだぞ」
「承知しました」
デビッドは斧を眺めながらニヤリと笑っていました。
To Be Continued




