第五十一話・リトの逆襲
遂に満を持してリトが参戦した。
リトは闇ギルドのボス・ロウに近寄る。
「さて、ロウさんでしたっけ?この前はよくも私をこけにしてくれましたね」
リトは静かに怒りを燃やしていた。
「くだらん、今の貴様は半精神体、俺の敵では無い 。実体強制解除 !」
ロウはリトに向かって斧を振った。風圧がリトを襲う。
「リト避けてください !」
私は力一杯叫んだ 。もしあの風をまともに浴びればリトは強制的にランプに戻されてしまう。
「残念でしたね」
しかし、風をまともに浴びたにも関わらずリトには何の変化もなかった。
「実体強制解除は使用者の魔力が対象者と同等かそれ以上の場合のみ効果を発揮します。しかし今の私はあなたを格段にも上回っているんですよ」
リトはアラジンパンツの埃を払った。
「私は実体化する度に力を取り戻しているんですよ、まだまだ全盛期には程遠いですけどね」
「それは面白い。久し振りに楽しめそうだな」
ロウは斧を構えた。
「ロウー !」
突然コロナがロウに向かって叫んだ。
「コロナ……」
ロウはコロナの方を見つめた。
「もうやめようよ、ロウ…… !これ以上悪いことしないで……誰かを傷つけないで !」
コロナは泣きそうになりながら必死に訴えた。
「コロナ、行き倒れていた貴様を拾ってやった恩を忘れたか……貴様などもう知らん」
ロウは冷徹に切り捨てると目を背けた。
「ロウ……」
「コロナちゃん……」
コロナの必死な叫びもロウには届かなかった。
泣きながらうなだれるコロナをリリィは優しく抱き締めた
「あなたは意外と恩着せがましい性格ですね、一番上司にしたくないタイプですよ」
「ほざけ、俺は役に立つものしか求めていないだけだ、あの小娘は魔女としての潜在能力が高かった。だから配下に加えた、それだけだ」
ロウは再び斧を構えた。
「魔人、貴様は強い。だからこそその力、我らのものにしてやる」
「やれるものならやってみなさい !」
ドゴォッ
リトはすぐさまロウの懐に入り込み、腹部にパンチをめり込ませた。
「くぅっ !」
ロウは少し苦しそうに顔を歪めた。
「なめるなぁ !牛魔剣・破壊斬 !」
ロウはすぐに反撃に入り、斧を紫色に発光させ、リトに斬りかかった。
だがリトは軽くかわした。
「当たればこの私でもダメージを受けそうですが、大振り過ぎて避けるのは簡単ですね」
「うぉぉぉぉ !」
ロウは斧を何度も力任せに振り回しリトに当てようとするがリトは涼しい顔でかわし続ける。
「エルサさんが一撃で倒された技ですからねぇ、かわすのが無難でしょう、どうやら私の方がスピードが上のようですね」
リトは脚を大きく振り上げた。
「きぇぇぇい!」
リトは回転しながらロウの顔面に蹴りを喰らわせた。
ロウはよろめき、後退りした。
「ちょこまかと……」
ロウはリトを睨み付けながら頬についた血を拭った。
「こんなものじゃありませんよ、主が受けた苦しみはねぇ !」
リトはロウに人差し指を向けた。
「指撃火炎弾 !」
指先から火の弾丸が無数に放たれた。
ロウは斧を振り回し、的確に弾く。
「その程度の技など、俺には効かん !」
「そうこなくては面白くありませんねぇ !」
二人の戦いはより白熱したものとなっていった。
ヴェルザード達はその様子を瞬き一つせずじっと見ていた。
「リトのやつ、ロウを子供扱いしてやがるな……」
「だがロウもまだ本気じゃねえぜ」
見たところリトが押しているようだった。
ロウは一旦距離を取った。
「これが伝説の魔人の力か……想像以上だな」
「あなたもミノタウロスにしては中々やりますねぇ」
リトはまだまだ余裕綽々だった。
一方ロウは疲労が溜まってる様子だった。
「俺には野望がある、それを果たすまでは、ここで破れるわけにはいかんのだ !」
ロウは高々と斧を振り上げた。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉ !!!」
ロウは気合いを入れ、大声を出した。ロウの全身から邪悪な紫色のオーラが溢れ、覆った。
そのあまりにも強大な魔力は大地をも揺るがす程だった。
「俺が何故闇ギルドのリーダーなのか教えてやる。答えは単純だ。俺が魔族最強だからだぁぁぁぁぁぁ !」
ロウは勢いよく斧を地面に突き刺した。
「リト避けろ !いくら君でもあれを喰らえば…… !」
エルサが危険を察知し、叫んだ。
「牛魔斧・巨光輪 !」
斧が邪悪な色に染まり、そこからロウの身長の5倍はある巨大なギザギザの光の輪が生成された。
「こ……これは……」
ヴェルザード達はそのあまりにも巨大な光の輪を見て戦慄していた。
「驚いたか……牛魔斧の最終奥義だ。どんな上位種族だろうと真っ二つに切り裂ける。魔人、貴様でも耐えられるかな ?」
「これがあなたの全力というわけですか……何だか燃えてきましたねぇ」
リトは寧ろ目を輝かせていた。
「そう言っていられるのも今のうちだ、喰らえぇぇぇ !」
ロウの叫び声と共に光の輪はリト目掛けて放たれた。
地面を抉りながら転がり、リトに向かってくる。
「ふっ」
リトは人差し指を光の輪に向け、標準を定めた。
「炎輪の抱擁です !」
リトは指で円をなぞり、炎の輪を生成した。
輪は巨大化し、ロウの放った光の輪に向かって放たれた。
地面を抉りながらぶつかり合う二つの光輪。
「すごい……炎輪の抱擁にこんな使い方があったなんて……」
私は感心していた。
「俺の最終奥義が破られるものか !」
「いえ、私の勝ちです !」
リトはニヤリと笑った。
すると炎の輪は瞬く間にロウの光輪を吸収するように包み込んだ。
ロウの光輪は完全に飲み込まれ、煙を発しながらタイヤのように回り続ける炎の輪だけが残った。
「馬鹿な……俺の光輪が取り込まれただと !?」
ポーカーフェイスのロウも流石に驚きを隠せずにいた。
「言ったでしょう。抱擁だと。私の炎は何もかも包み込むんですよ、さぁ !受け取りなさい !業炎大車輪 !」
炎の輪は大地を抉り、ロウ目掛けて飛んできた。
「こんなもの !」
ロウは斧を掲げ、炎の輪を止めようとした。
だが炎の輪の転がる威力は凄まじく、徐々に押されそうになっていた。何とか足に力を入れ、踏ん張った。
「この俺が…… !」
炎の輪の回転はますます速くなっていった。
「ぐぅぅぅっ !うわぁぁぁぁぁぁぁ !!!」
ボガァァァァン
ロウはとうとう押し負け、炎を全身に浴び、大爆発してしまった。
爆発で小さな小石や岩が散乱した。
「やったか !?」
エルサが叫んだ。
全員が息を飲みながら見守った。
やがて煙が晴れると、全身焼けただれた満身創痍のロウが立っていた。
「はぁ……はぁ……うっ…… !」
ロウはかなりのダメージを追ったのか、膝をついてしまった。息も切らし、限界のようだった。
「どうやら、私の方が上でしたね」
リトは膝をついたロウに近づき、見下ろした。
「ロウ !降参しよ !?これ以上戦ったら死んじゃうよ !」
コロナは必死にロウに声をかけた。
「黙れぇ…… !俺は負けん !負けるわけにはいかんっ !」
ロウはフラフラになりながらも何とか立ち上がった。
「流石は闇ギルドのボス、根性ありますねぇ」
リトは腕を組ながら感心していた。
「ですが終わりです、とっとと楽にして差し上げますよ」
リトは冷酷に告げるとロウの眼前に人差し指を向けた。
ロウはそれを静かに睨んだ。
「ロウさん、苦戦してるようですね」
謎の声が聞こえた。声の主はいつの間にかロウの背後にいた。
「ミーデ !?」
まさかのミーデの登場である。
「私がフライパンで気絶させたはずなのに !?」
リリィが一番驚いているようだった。
「まだ後頭部がヒリヒリしますねぇ、所でロウさん、ランプを奪われてしまい、申し訳ありませんでした」
ミーデは軽く頭を下げた。
「今はそんなことどうでもいい……それよりも丁度良い所に来た、お前も加勢しろ。口ではなく体を使って名誉を挽回するんだ」
ロウはミーデに向かって静かに言った。
「その通りですね 」
ザシュッ
突然ミーデは背後からロウの体を貫いた。
ロウは口から血を吐いた。
「き、貴様……何のつもりだ…… ?」
「私なりの名誉挽回ですよ、ロウさん」
ミーデは今までにないおぞましい程のゲス顔で言い放った。
To Be Continued




