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ランプを片手に異世界へ  作者: 烈斗
憎悪の角編
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第四十八話・悲しみを包み込め



私達が潜入していることが魔女のコロナと使い魔クロスにバレてしまいました。


「ロウの役に立ちたいんだろ、コロナ」

「う、うん……」


コロナは静かに頷きました。


「ならば、やることは一つだ」


コロナは杖を構えました。

子供とはいえ、闇ギルドの幹部クラスです。気を抜けません。


「ねえ、ワカバちゃんは何処にいるの~ ?」


ミライさんが二人に問いかけます。


「ワカバ…… ?さてはあの小娘のことか ?あいつなら今頃壮絶な拷問を受けている。いずれ苦痛と絶望に耐えきれず心を壊し、我々の忠実な操り人形となるだろう」


クロスは残酷な真実を告げました。

そんな……ワカバちゃんがそんな目に遭っていたなんて……一刻も早く助けないといけません!


「私達はワカバちゃんを助けます!だから邪魔しないでください!」


私は箒を構えました。


「成る程、小娘の仲間だったのか、ならば話は早い、奴隷達を解放した裏切り者達をさっさと排除するぞ!」


クロスに言われるとコロナは杖を上に掲げました。


「え……えい…… !」


杖は赤く光ると炎の球が数個出現しました。


火炎球(ファイアボール) !」


炎の球は勢いよく私達に襲いかかりました。


「うわぁぁっ」


ミライさんは翼を広げると高く飛び、上手くかわしました。


「よし、貴様の相手は僕だな、同じ翼を持つ者同士、優劣を決めようではないか」


クロスも黒い翼を広げ、ミライさんに向かって飛びかかりました。


「私にはこれがあるんですよ!」


一方私は胸元からフライパンを取り出すと、


カキーンッ!


豪快に振り回し、炎の球を遠くまで跳ね返しました。


「このフライパンは護身用に作られた特注品なんですよ!」


私はドヤ顔を決めました。




「でやっ!」


クロスは脚の鋭い鉤爪を駆使し、ミライさんを狙います。


「うわっ、そんな痛いのやだよ~」


ミライさんは必死にかわし続けます。


「逃げてるばかりでは僕には勝てないぞ !」


工場の中を広く飛び回る二人。


「こうなったら~、羽根乱針(シャトルラッシュ)~ !」

黒羽根乱針(シャトルラッシュ) !!」


ミライさんとクロスはお互いに無数の羽根を飛ばしました。

白と黒の羽根がぶつかり合い、相殺します。


「うう~、互角だよ~」


ミライさんは焦っていました。


「互角…… ?僕はコロナを守るため、使い魔と馬鹿にされながらも必死に修行し強くなった。貴様と一緒にするなぁぁぁぁ!」


クロスはミライさんを捕らえ、高く上昇しました。


「離して~ !」


ミライさんはじたばたと抵抗しますが強い力で押さえられています。


「このまま落としてやる!」


クロスはミライさんを羽交い締めにしたまま回転し、急降下しました。




コロナは杖を掲げました。今度は白く光っていました。


旋風(ウィンドー)(ダンス) !」


コロナの周りから複数の旋風が出現しました。

旋風は私を切り裂こうと襲いかかってきました。


「うっ…… !」


私は箒を構えて盾にしましたが防ぎきれません。

複数の風が挟み撃ちにし、私の逃げ道を塞ぎ、服を切り刻みます。

顔中にも擦り傷がつきました。


「あっ !せっかくのメイド服がボロボロに…… !」


私は少しショックでした。


「よし……いける !」


コロナは再び杖を掲げました。今度はオレンジ色です。


大地(アース)(リライト) !」


コロナはオレンジ色に発光した杖をコンと地面に突きました。


すると杖を突いた位置から地面が割れ、オレンジ色の光が地面を這うように私に迫ってきました。

私は旋風に阻まれ、逃げられませんでした。


「キャアアアアア !!!」


私はオレンジ色の光をまともに喰らい、吹っ飛ばされました。

私は思い切り地面に叩きつけられました。


「炎、風、土……まさか……」


コロナはまたも杖を上に掲げ、青く発光させました。


水流(アクア)(リング)!」


杖から縄のように細長い水が流れ、私を縛り上げました。使い魔である私はそれほど頑丈ではありません。ダメージを受け、身動きが取れませんでした。


「うっ ……!」


炎、水、土、風……。4つの属性(エレメント)の魔法を使えるなんて……。この子、凄まじい潜在能力を秘めています……。


「私は負けられない…… !ロウの足手まといにはなりたくない !」


コロナは必死な形相で叫びました。その顔は何処か悲しげでした。


ヒュードォォォン!


コロナの近くで何かが落ちる音が響きました。

煙が晴れると仰向けになって倒れたミライさんとそれを見下ろしながら彼女の顔面を脚で鷲掴むクロスの姿がありました。

思い切り地面に叩き落とされたようです。


「勝負あったな、所詮僕らの敵では無かったのだ」


クロスはコロナの側によると頭をそっと撫でました。


「よくやったな、コロナ」


コロナはフードを深く被り、うつ向きました。

クロスは満身創痍の私達に向かって言い放ちました。


「諦めろ内通者共 !貴様らに小娘は救えない。小娘は心を失い、闇の世界の住人となる !貴様らに出来ることは何もない !」


私は静かに呟きました。


「わ……私……達は……たとえこの身体がどうなっても……ワカバちゃんを助けます……!あの人は、ご主人様を……私達を……外に連れ出してくれました……まだ恩返しも出来ていませんから……」


ミライさんもフラフラになりながらゆらりと立ち上がりました。


「そうだよ~、私は、ワカバちゃんに助けられたんだ~。今度は私がワカバちゃんを助ける番なんだよ~。」


クロスは呆れた様子でした。


「まだ立ち上がるのか、いい加減諦めろ !」


私は深く息を吸い込みました。


「ミライさん、耳を塞いでください」

「え、うん!」


ミライさんは戸惑いながらも両手で耳を塞ぎました。


キュイイイイイイイン


私は大きく口を開け、超音波を放ちました。


「きゃっ !何 !?」

「何て酷い音だっ……!」


コロナとクロスは顔を歪めながら思わず耳を塞ぎました。

コロナは持っていた杖を手放しました。


「わっ !」


私は水の渦から解放されました。


「ミライさん、今です !」

「よし、いっくよ~ !」


ミライさんは隙をついて翼を広げながらクロスの方へ突撃しました。

翼は徐々に銀色に染まっていきました。


(シルバー)(ウイング)~!」


スパッ !


ミライさんは鉄の鎖さら引きちぎる銀色の翼で棒立ちのクロスを切り裂きました。


「がはぁっ !」


クロスは流血しながら仰向けに倒れました。

力尽きたクロスは小さなカラスの姿に戻ってしまいました。


「そんな…… !クロス …… !」


コロナは相方を倒され、オロオロしています。


「さ、後はあなただけですよ」


私はフラフラになりながらもジリジリと迫りました。


「うっ……」


コロナは怯えながら後ずさりをし、小石に躓いて尻餅を突きました。


「ひっ……」


コロナはすかさず腕で顔を覆いました。



「……大丈夫ですよ……」


私はしゃがむと震える少女をぎゅっと抱き締めました。


「な、何で……」

「だってこんなに幼いのに、とても無理してるようでしたから……」

「え…… ?」


コロナは戸惑っている様子でした。


「私には何となく分かります。あなたが人を傷つけることを嫌う優しい子だってこと……」

「そんなこと……私のせいでお姉さんがあんな目に……もう私は闇から戻れない……」


コロナは目に涙を浮かべていました。


「誰だって失敗はあります。これから取り戻していけば良いんです。それにワカバちゃんは強い心を持っています。絶対に悪には負けませんよ」


私はコロナの頭をポンと撫でました。


「……何故だ……敵であるコロナにそこまで……」


クロスはカラスになった状態で呻きながら問いかけました。


「私達の目的は誰かを倒すことじゃありませんから。それに味方は多い方が良いじゃないですか」


ミライさんは両手でクロスを掬い上げました。


「お、おい !」

「君って結構可愛いんだね~」

「やめろ !俺はそういうキャラじゃない !」


クロスは照れながら突っ込みました。


「ねえコロナちゃん。お願いがあります。ワカバちゃんのいる所へ案内をしてもらえますか?」


コロナは黙ったままでした。


「ワカバちゃんは大切な私の友達なんです……絶対に助けたいんです !お願いします…… !」


コロナは暫く沈黙をしていましたが、やがて決心したのか、ゆっくりと呼吸を整え、口を開きました。


「わ、分かった……、教える……」

「良いのか !?コロナ !」


コロナはうつ向いてた顔を静かに上げました。


「あのお姉さんが言ってたの……私達と一緒に行かない?って……」

「ワカバちゃん……」

「もうお姉さんが苦しんでる姿は見たくない……だから助ける」


コロナの決意は固かったようでした。


「分かった……僕はコロナに従う……」


クロスも素直に言うことを聞きました。


「よし、ワカバちゃん !もう少しの辛抱ですよ !私達が必ず助けにいきますから !」


コロナ、クロスを味方につけた私達は、誰も居なくなった工場を後にしました。


To Be Continued

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