表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ランプを片手に異世界へ  作者: 烈斗
憎悪の角編
47/400

第四十五話・三人の意地



「はぁぁぁっ!!!」


マルクとゴード、一進一退の攻防戦が続いた。


「何が半魚人(マーマン)のリーダーだ!てめえみたいなのはなぁ!井の中の蛙、大海を知らずって言うんだよぉ!」


ゴードは攻撃の手を緩めない。


「内輪でイキッてるのはてめえの方だ!」


マルクは力むとスピードを上げ、ゴードを圧倒した。


「何ィ!?」


ゴードは一瞬怯み、距離を取った。


「俺の実力は村一番だと思っていた。だが俺より強いやつはゴロゴロいた。それを思い知ったからこそ、もっと強くなりたいと思ったんだ。」


マルクは深く深呼吸をすると腰を低く構えた。


「さ、一気に決めるぜ」

「お前との戦い、楽しめたぜ。だがこれで終わりだ」


ゴードもマルクの雰囲気を感じとり、腰を落とした。

緊迫した空気が流れる。


「「ウオオォォォォォォォ!!!」」


マルクとゴードは互いに向かって剣を振り上げ、走り出した。


カキンッ!


マルクのヒレとゴードの双剣が交差した。

二人は静止したまま動かない。


「成る程……大事なのは向上心か……俺は……ロウの隣に居るだけで……満足しちまってたぜ……」


ゴードは自嘲すると静かに倒れ伏した。

勝者はマルクだ。


「俺はもっと強くなる……こんな所で負けるわけにはいかねえんだよ……!」


マルクは腹に負った傷を押さえながら膝をついた。傷口から痛々しく血が滴り落ちた。


「ちょっと、休憩が必要かもな……」




エルサはなおもオーバのベアハッグに苦しめられていた。


「ぐわぁぁぁっ!!!」

「どうしたんだ!?さっきまでの威勢は!」


オーバの締め上げる力は更に強くなる。


「女!あの小娘を助けたいと言っていたな、お前には無理だ!ロウにも負け、俺にすら勝てないようじゃ、お前はヒーローにはなれん!」


エルサの抵抗が弱くなっていった。


「そろそろ終わりだな、観念して俺の女になるがいい!」


オーバはとどめを刺そうと最後に力を強めようとした。


「これが君の限界か」


エルサは落ち着いた声で呟いた。


「何?」

「君の力がどれ程のものか確かめてみたが、ここまでが限界のようだな。」


さっきまで苦しんでたのが嘘のようにエルサは平然としていた。


「馬鹿な……。俺に締め上げられて、無事だった者は居ないはず……!」


オーバは激しく狼狽していた。


「いい加減離せ!はあっ!」


エルサは目一杯力を込め、オーバのベアハッグから脱出した。


「私は君には負けないし、君達のリーダーにリベンジを果たす!」


エルサは剣をオーバの腹に突き立てた。


「ま……待て……!」

「ゲスが……地の果てまでぶっ飛ぶが良い!!!」


エルサは剣先に魔力を込めた。


神月颶風(ムーンハリケーン)!!!」


エルサの剣から巨大なハリケーンが放たれた。

オーバの巨体があっさりと地を離れ宙に浮き、勢いよく空高く飛んでいった。


「ぎゃああああああ!!!」


オーバは遠くまで飛ばされ、やがて流星のように頭から地上へ落ちていった。


「ごふっ!?」


物凄い衝撃と共にオーバの頭は地面に突き刺さった。

オーバは地面に埋まりながら間抜けな格好でピクピク痙攣していた。


「猪頭野郎が……」


エルサは静かに剣を鞘に納めた。




俺は自らの血液を鋭い剣に変えた。

ガギの持つ棍棒に対抗するためだ。


「お前は他のやつらより高い魔力を持ってるからな、本気でやらねえと死ぬ!」


俺は深紅(ディープレッド)邪剣(セイバー)を振り上げながらガギを斬りつけた。

ガギは棍棒で俺の攻撃を防ぐ。


「お前……武器……使いなれてない……不利……」


ガギは棍棒を豪快に振るった。棍棒は俺の腹に直撃した。


「ぐほぁ!」


俺はモロに喰らい、顔を歪めながら吐血した。

だが俺は歯を食い縛り痛みを堪え、ガギの脇腹に一撃を叩き込んだ。


「グゥっ……!」


ガギは苦しそうに呻いた。


「どうだ、血で出来た剣の味は……うっ」


俺は目眩がして立ち眩んだ。

今の俺は血が足りない状態、長引くのは危険だ。


「うぉぉぉぉ!!!」


俺はガギの懐に飛び込み、何度も斬りつけた。

ガギの身体から血飛沫が舞った。


「調子に……乗るな……!」


ガギは腕に力を込めると棍棒を大きく振り、俺の全身に打撃を加え続けた。


「くぅっ!」


全身の骨が砕けるような重い痛みだ。

俺は吹っ飛ばされ、地面に突っ伏した。


「はぁ……はぁ……」


俺は息を切らしながら立ち上がろうとした。

ガギさんはその暇すら与えず頭上を棍棒で叩きつける。


「うわぁぁぁぁ!!!」


俺は再び地面に転がった。

普通の人間ならとっくに死んでるな。


「お前……俺に……勝てない……。」


ガギは倒れ伏した俺を見下ろしながら冷たく言い放った。


ゴードやオーバのような小物と違い、明らかに強い。更にこいつを上回るボスも控えてると言うのに……。


俺は握り続けた血の剣を見つめた。剣は僅かだが欠け始めていた。


「こいつも俺も……そろそろ限界が近いな……。」


俺はゆっくりと血を流しながら立ち上がった。


「俺は、ワカバを助けなきゃならねぇ……こんな所で這いつくばってる場合じゃねえんだよ……。」


俺は震えながらも矛先をガギに向けた。


「しつこいの……嫌いだ……。」


ガギは棍棒を大きく振りかぶった。


「次こそ……叩きおる……」


俺はガギに向かって駆け出した。


「ウォォォォォォォ!!!」


吸血鬼(ヴァンパイア)は己の魔力を純粋な怪力(パワー)に変換する。

俺は自分の魔力の殆どを血の剣に注ぎ込んだ。


「無駄だ……死ね……!」


ガギは棍棒を俺に向けて振り下ろした。


「でやっ!」


俺は血の剣で逆に棍棒を綺麗に切り落とした。


「何……!?」


ガギは目を見開いて驚いた。


「ウオラァァ!!!」


俺は血の剣でガギの急所を一撃で斬り伏せた。

血の剣は限界を迎え、粉々に砕け散った。


「はぁ……はぁ……」


ガギの背中から大量の血が吹き出した。


「ぐおおおおおお!!!」


ガギは大声で絶叫をすると膝をつき、ゆっくりと倒れた。倒れた衝撃で地響きが鳴った。


「はぁ……はぁ……。」


遂に3人の幹部は倒れた。

俺は満身創痍になりながら懐をまさぐった。

すると綺麗なトマトが出てきた。

俺は大きく口を開け、豪快にトマトにかぶりついた。


「やっぱトマトはうめえな……」


俺はそう満足気に呟くと大の字になって倒れ、空を見上げた。



To Be Continued

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ