第四十二話・ワカバ救出作戦
「私達をこのギルドに入れてください !」
闇ギルドのアジトに着いた私達は門番をしていたオークの方にお願いしました。
怪しまれずに潜入をするためです。
「えぇ……いきなりだなぁ……てかお前達魔族なの? 人間とかじゃあないよねぇ ?」
オークさんは困惑した様子でした。
「まさか、私は使い魔の蝙蝠です、人間ではありません」
私は証拠を見せるため、オークさんの目の前で小さなこうもりに変身しました。
「おお! 可愛い !」
オークさんはテンションが上がっていました。
見た目によらず可愛いもの好きのようです。
私はすぐに人型に戻りました。
「私は~鳥人だよ~」
ミライさんは大きく翼を広げました。
「うーむ……魔族ならうちのギルドに入る資格はあるが……女の子かぁ……」
「良いじゃないか! 歓迎するぞ」
オークさんの後ろから一回り大きい別のオークさんがやってきました。
「お、オーバさん……! 良いんですか?そんなあっさり決めて…… !」
「うちは魔族大歓迎だからな、それに可愛い娘達じゃないかぁ」
オーバさんと呼ばれる人はデレデレしながら鼻の下を伸ばしていました……。
「俺はハイオークのオーバ。憎悪の角の幹部の一人だ」
「私はリリィと申します。メイドをしていました。炊事、洗濯、食事は任せてください」
私は深々と頭を下げた。
「私は鳥人のミライ~空を飛ぶことが得意なんだ~宜しくね~」
「ハッハッハ! うちは男ばかりでむさ苦しかったからなぁ! 華があった方が良い! これからも宜しくな !」
オーバさんは闇ギルドの人にしては気さくで良い人そうでした。
何はともあれ、私は闇ギルド・憎悪の角に潜入成功しました。
ワカバちゃん! 必ず私達が助けに行きますからね !
リリィとミライが闇ギルドの潜入に向かった頃、俺とマルクとエルサも後から闇ギルドに向かっていた。
「地図だとこの通りだが……」
エルサは慎重に地図を眺めていた。
「なぁ、ほんとにこの道で合ってるのか ?」
俺はエルサに話しかけた。
「あぁ、多分合ってると思う。あいつらの言うことが合っていればの話だが……」
堅固な山猫がアジトを探し当てたと聞いてるが、本当に信用して良いものか……。
「堅固な山猫って、前に俺が返り討ちにしたやつらか ?」
マルクが俺に聞いてきた。
「あぁ、そうだ」
「おいおい大丈夫かよ。あいつら上手いこと言って戦いには参加しないつもりか ?」
あの三人は咬ませだからな……役割的にはこれが適任だろ。
「それよりも作戦は判ってるか ?」
エルサは確認を取った。
「勿論分かってるさ」
俺は素っ気なく答えた。
作戦はこうだ。リリィ達が闇ギルドに入りとけ込む。その後、俺とマルクとエルサが堂々と闇ギルドにケンカを売る。
当然多くのギルドメンバー達が駆り出されるだろう。そして手薄になった隙にリリィ達が囚われたワカバを救いだすという寸法だ。
「本当に上手く行くのか…… ?」
俺はこの作戦に未だ懐疑的だった。リリィもミライも女の子だ。よりによってあいつらに潜入させるなんて……。
リリィはいざという時は超音波が使える。ミライも鳥人としてはまだまだ未知数だ。それでも……。
「心配いらねえよ。その闇ギルドは他の亜人や魔族には優しいんだろ ?」
マルクは俺の肩を組んだ。
「あいつらだって弱いわけじゃない、けどよ……。」
もし潜入だとバレたら殺されてもおかしくはない。
「ネガティブ思考は良くないぜ。あの二人を信じろよ、それに潜入なんて器用な作戦、俺らみたいな脳筋には務まらねえよ」
確かに、俺らは嘘が上手い方ではないしな……。あまり後ろ向きに考えるのも良くないか……。
「はぁ……。所でエルサ、怪我は大丈夫なのか ?」
「心配ない。エルフは並外れた回復力を持っている。それに、今こうしてる間にもワカバは酷い目に遭わされているかも知れないんだ。大人しく寝てるわけには行かない……」
口では強がっているがどう見ても本調子には見えなかった。
「ま、あまり無理すんなよ」
俺は小声で話した。
「そうだぜ、いざという時は俺らに任せときなって」
マルクはドンと胸を叩いた。
「ふっ……頼もしいやつらだな」
エルサは微かに微笑んだ。
「待ってろよワカバ……」
俺は内の中で呟いた。
例え何十人もの魔族が襲ってこようとも全員返り討ちにしてやる。
俺は伝説の魔族…吸血鬼……。
この俺に不可能はない。
暫く進むと巨大で禍々しい闇ギルドのアジトが見えた。
「やっと着いたか……」
「ほう……随分とご立派な建物じゃねえか」
「結構金かけてそうだな、壊してくれと言ってるようなもんだぜ」
俺とマルクは圧倒されながらも内心小躍りしていた。
「あの中にワカバが囚われてる……」
エルサは険しい表情をした。
「で、どうすんだリーダー」
マルクはエルサに判断を委ねた。
「決まっている。正面から宣戦布告だ !」
エルサは剣を構えた。
「よっしゃあ! 片っ端から魔族共を血祭りに上げてやるぜぇ !」
マルクは肘のヒレをペロッと舐めた。
「まずはほんのご挨拶だ」
とりあえず俺は前に出た。
「おいおいヴェル、何を仕掛けるつもりだ ?」
俺は自らの爪で腕を引っ掻いた。そして傷口から流れた血を宙に浮かせた。
「おぉ! お前いつの間にそんな能力を !」
マルクは顎が外れる程驚いていた。
「吸血鬼は自らの血液を自在に操る力があるんだ」
「流石伝説の魔族だぜ……」
俺は宙に浮いた自分の血液を砂粒程の小さな球状に凝縮した。
「血の弾丸 !」
俺は血で出来た球を指で弾いた。
血の球は風を切り裂く勢いで飛んでいき、敵のアジトの壁にぶつかり、穴を開けた。
凄まじい轟音が響いた。
「なんつー威力だよおい……」
マルクは冷や汗をかきながら呟いた。
「さて、向こうは突然の出来事でパニックになってるだろうな。ギルドメンバー総動員でこちらに向かってくるぜ」
「そいつらを迎え撃つというわけだな」
間も無く大勢の魔族達がこちらに向かってきた。
「意外と準備が良いんだな」
「さ、始めるぜ」
俺達は戦闘態勢に入った。
「かかってこいよぉぉぉぉぉ !!!」
To Be Continued




