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ランプを片手に異世界へ  作者: 烈斗
憎悪の角編
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第四十話・ワカバを救え!



「あいつら遅いなあ……」


俺は女の子の絵を描きながら呟いた。


「稽古が長引いてるだけだろ? てかお前何描いてんだよ」


マルクは俺に興味ありげに話しかけてきた。


「別に何でもねえよ、ただの暇潰しだ」

「暇潰しの割には随分と気合い入ってんじゃん? てかうめえな」

「あんまジロジロ見んなよ」


マルクは面白がりながら俺の絵をマジマジと見ていた。


「つかこの絵の女、ワカバじゃね ?」

「はぁ!? ちげえし! 全然関係ねえし !」


俺はムキになって反論した。

結構実物より盛って描いたのに何故分かった…… !?


「はぁ~んそういうことか」

「どういうことだよ」


ニヤニヤしながらマルクは何かを察した。


「お前、ワカバのことがす」

「わぁー! わぁー !」


俺は顔を赤らめ、思わず叫んで声をかき消した。


「何々~? 見せて見せて~」


そかへ新入りのミライが興味津々に俺の絵を見ようと近づいた。


「おい、そんな大層なもんじゃねえから……」

「え~良いから見せてよ~」


ミライは強引に俺から絵を奪い取った。


「わぁ~可愛い~、これってワカバちゃん ?」

「おー正解~! お前も分かっちゃうか !」

「えへへ~」


マルクとミライはハイタッチをした。


「でも何でワカバちゃんなの~ ?」

「それはなぁー」


マルクはニヤリとしながら口を開こうとした。


「お前これ以上広めたらぶっ殺すぞ !」


俺はマルクの頬を引っ張って止めさせた。


「いてててて !!!」



そんなくだらないやり取りをしている中、

玄関の扉が開く音がした。


「あ、二人が帰ってきましたよ !」


リリィは急いで玄関に向かった。


「やっと帰ってきたか……」

「何だ嬉しいのか?」

「そんなんじゃねえよ!」


俺は一々からかうマルクに突っ込みを入れた。


「エルサさん!? どうしたんですか !?」


玄関からリリィの悲鳴が聞こえた。

何やらただごとではない様子だ。


「リリィ? 何騒いでるんだ…… ?」


気になった俺は玄関に向かった。

そこにはボロボロになって今にも倒れそうなエルサの姿があった。


「エルサ……何があった……ワカバは ?」

「す、すまん……私の……せいで……」


エルサは気を失い、倒れそうになった。

相当酷い傷だ。

彼女がここまでやられるなんて余程の相手だったのだろう。


「エルサ !?」

「エルサさん!しっかりしてください !」


俺とリリィは急いでエルサを抱き抱え、部屋まで運んだ。




暫くの間、リリィは付きっきりでエルサの看病をした。

流石は俺の侍女、手慣れたもんだ。

ベッドの上でエルサは深い眠りについていた。

身体中に巻かれたロープが痛ましかったが、命に別状は無さそうだ。


「んっ……ここは……」


暫くしてエルサは静かに目を覚ました。


「良かったぁ……今日は安静にしていてくださいね」


リリィはホッと胸を撫で下ろした。


「私は……そうか……ワカバを連れ去られて……それで…… !」


エルサは深刻な表情をしていた。


「な、なぁ……何があったんだ ?」


俺はエルサに事情を聞いた。


エルサの話によるとワカバは魔族の集団に襲われていたらしい。助けに入ったものの魔族のリーダーらしき男に一撃でやられ、ワカバを連れ去られたと……。


「ほんとうにすまない……。ワカバを一人にしたせいで…私も一緒に帰っていれば……」

「おいおい、あんま自分を責めるなよ……ワカバにはリトが居たんだし、あいつ自身も少しずつ強くなってる……想定外のことだったんだよ」


俺は悔しさに苛まれるエルサを慰めた。

誰にも予想出来る訳が無かった。


「だがワカバをあっさり拐ってエルサを一撃で倒すとかただの魔族集団じゃなさそうだな」


マルクは腕を組ながら考えた。


「やつらは人間を拐い奴隷にする闇ギルド…「憎悪(ヘイドリッド)(ホーン)」だ……間違いない……」

「最近噂になってる闇ギルドか ?」


俺達は驚愕した。

だが信じるしかなかった。闇ギルドクラスでなきゃこんなことにはならない。

現時点でそれしか可能性が無いからだ。


「ワカバちゃんは奴隷になっちゃうの…… ?」


ミライは不安そうに瞳を潤わせた。


「いや、それはないと思う……私が目にした魔族達は皆実力派揃いだった。私を倒した男もな……。そいつらがよってたかって一人の人間を狙ったんだ……。ただ奴隷が欲しかったとは考えにくい……」

「まさか……ワカバちゃんが召喚士(サモナー)でリトさんを召喚出来ることを知ってて……」

「その可能性が高いな……」


まさか魔人(イフリート)の噂が闇ギルドにまで広がっていたとはな……。

迂闊だった……。ワカバが狙われるわけだ。


「こうしちゃいられねぇな…。」


俺は立ち上がり、急いで外に出ようとした。


「待てよヴェル! 何処へ行くつもりだ!」


マルクが呼び止めた。


「決まってんだろ、助けにいくんだよ」

「そんなご主人様無茶ですよ! 居場所だって分からないし相手はエルサさんも倒した魔族なんですよ !?」

「俺は最上位種魔族の吸血鬼(ヴァンパイア)だぞ、そんなやつら屁でもないぜ」


こうしてる間にもワカバがどんな目に遭わされてるか分からない。

じっとしてなんかいられなかった。


「相手はリトや私ですら歯が立たなかったんだぞ……」

「関係ねえ、仲間を拐われて、黙ってることなんて俺には出来ない」


俺は振り向かずに行こうとした。

だが誰かが後ろから俺の肩を掴んだ。


「おいおい、お前一人にカッコつけさせねえよ」

「マルク……」

「ワカバを助けたいのはお前だけじゃねえ。皆同じだろ」


俺は皆の顔を見た。俺は柄にも無く熱くなっていることを自覚した。


「ご主人様、まずは作戦を立てましょう。相手はあの闇ギルドなんです」


リリィは真剣な表情で俺を諭した。


「すまん……冷静じゃ無かった……」

「気にすんなよ。にしてもあいつらら舐めた真似しやがって! 俺達がぶちのめしてやる !」


マルクは闘志を燃やしながらポキポキ指を鳴らした。


「でもどうやって助けるの~ ?」


ミライは不安そうに皆に問いかけた。


「それなんですよね……」

「やつらのアジトに乗り込んでワカバを救い出さなくてはならない……簡単なことではないな……」


全員頭を悩ませた。

魔獣と戦ったことはあれど闇ギルドという一つの組織と戦ったことなど今まで無かったからだ。


「そういえば、噂で聞いたんですけど闇ギルドの方達って人間以外は拐わないらしいですね」


リリィが口を開いた。


「あの盗賊団と真逆だったな」

「盗賊団って~ ?」


ミライはポカーンとしていた。いやお前盗賊達に拐われそうになったことあるだろ……。


「私も倒された後は特に何もされなかったな……」


エルサはエルフ族で高い戦闘能力を持ち、おまけに容姿端麗だ。

彼女を狙わないなんていくらなんでも不自然過ぎる。


「君何か失礼なこと考えてないか ?」

「いや、別に……」


女の勘とは種族関係なく鋭いものだ……。


「で~結局どういうこと~ ?」

「つまりよ、人間には容赦しないが亜人や他の魔族には危害を加えない連中ってことだぜ」

「なるほど~、よくわかんな~い」

「へへへ、わかんないか~」


何デレデレしてんだよマルク……。


「他の種族には優しいか……随分変わった闇ギルドだな」

「奴等なりの信念(ポリシー)があるってことじゃね ?」

「そっか、見えました! 突破口 !」


突然リリィが何かを思いつき手を叩いた。


「リリィ、何か名案が浮かんだのか ?」

「任せてください! 私は一流メイドですから !」


リリィはドヤ顔を決めながら胸を叩いた。





一方その頃、私は闇ギルドのアジトの地下牢に閉じ込められていた。


「そろそろ起きなさい」


何か声が聞こえる……。


「いつまで寝てるんですか!全く呑気なものですねぇ」


聞き覚えのある…不快感極まりない声……。

私は朦朧としながらゆっくりと目を開けた。


「おはようございます、お久しぶりですねぇ」


目の前に腕組をした見覚えのある男が立っていてニヤニヤしながらこちらを見ていた。


「お嬢さん ♪」


To Be Continued

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