第三百八十九話!最終決戦 リトvsサタン
「暴食の力……」
サタンは、仁王立ちで天を見上げながら呟く。
その時、巨大な透明な二枚の羽がサタンの背中を突き破るように生えた。
サタンは羽を広げ、大地を蹴立て、空へと飛び上がった。
「空中戦ですか……負けませんよ」
バーニングリトは静かに不敵な笑みを浮かべると、不死鳥の巨大な翼を広げ、空高く飛び立ち、サタンを追った。
二体の巨人は戦いの大舞台を果てしなく広がる大空へと移す。
空全体が暗黒に広がる巨大な異次元への穴に覆い尽くされている中、巨人同士の一騎討ちが始まった。
「はぁぁぁぁぁぁぁ !!!」
「うおおおおおおおお !!!」
衝撃波で雲を蹴散らし、縦横無尽に大空を駆け回りながら両者は空中を繰り広げる。
ドオオオオオン
巨体と巨体がぶつかり、拳が互いの顔面を突き刺すように直撃する。
轟音を轟かせながらいくつもの花火が空中で舞い散った。
「うおおおおおおおお !」
激しい攻防の末、バーニングリトは力の乗った渾身のパンチをサタンの腹に叩き込んだ。
汗が飛び散り、苦しそうに呻くサタン。
バーニングリトは更に強烈な蹴りの一撃を加え、巨体を数キロまで吹っ飛ばした。
風を突き破るように衝撃波を巻き起こしながら吹っ飛んでいくサタン。
巨大なベルゼブブの羽を羽ばたかせ、何とかバランスを保つ。
「ぬおおおおおおおおお !!!」
ビリビリビリ
獰猛な雄叫びを上げ、サタンは手のひらを広げながら赤黒い禍々しい稲妻を連続で放った。
バーニングリトは竜の首のようにうねりながら迫り来る電撃をコダイの太く長大な尻尾で振り払い、弾き飛ばした。
「極炎の爆烈球 !」
バーニングリトは両手を上に掲げ、直径30メートル程の巨大な溶岩の塊を発動させ、サタンに投げつけた。
「嫉妬の力ァァァァァァァ !!!」
サタンは咄嗟に光線を放つ構えを取り、両手から勢い良く水のブレスを噴射させた。
だが巨大な溶岩の塊はレヴィアタンの水流すらも蒸発させ、全く衰える事なくサタンに迫っていった。
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁ !!!」
巨大な溶岩の塊が激突し、悲鳴を上げるサタン。
壮絶な爆発に巻き込まれ、ベルゼブブの羽も焼失し、サタンは地面へと落下していった。
ズシィィィィン
50メートルの巨体が空高くから落下し、火山が噴火したかのような凄まじい爆発音が鳴り響いた。
大地は荒れ狂う波のように震動し、巨大なクレーターが生まれた。
「ぐぬぬ……」
恨めしい表情で空を睨み付け、大量の土砂がまとわりついた身体でゆっくりと起き上がるサタン。
遥か上空ではバーニングリトが巨大な炎の翼を広げながらサタンを見下ろしていた。
「イフリート……我は決して倒れぬぞ……野望を果たすまで……我こそがこの世界……いや、全ての世界をこの手に収めし完全たる支配者なのだから…… !」
サタンの周囲に濃密で恐ろしく強大な魔力が集まっていく。
身体中にかつてない膨大な魔力が溜まり、出口を求め、獣のように体内で暴れ狂う。
やがて七つの色が混ざり合って混沌とした禍々しい巨大なオーラがサタンの巨体を包み込む。
「全ての力を……我ら七人の魔王の力を……貴様にぶつける !」
両手を突き出し、上空に向けてエネルギー波を放つ構えを取るサタン。
「七大罪の破壊砲 !!!」
傲慢、嫉妬、色欲、強欲、怠惰、暴食、そして憤怒……。
七つの魔力の波動が融合し、莫大なエネルギー波となって天を穿つように解き放たれた。
「穿孔放射 !」
バーニングリトの華奢ながらも巨大な指先から閃光が放たれた。
長大な熱線は直線を描き、上へと突き上げてくる禍々しい巨大なエネルギーの波と激突し、激しい爆発を巻き起こした。
そしてリトの放った熱線は七色の歪んだ巨大な波を突き破り、サタン目掛けて一直線に急降下し、彼の左胸を槍のように突き刺した。
ドスッ
一瞬でサタンの表情が凍りつく。
恐る恐る己の胸に手を当てると、手のひらは真っ赤な血に染まっていた。
サタンの左胸には巨大な穴が開き、向こう側の景色が鮮明に写っていた。
「あ……あぁ……」
サタンは言葉を失い、呻き声を上げるので精一杯だった。
全身が硬直し、棒立ちのまま石像のように全く動かない。
「さようなら、サタン……」
リトが小声で呟いた瞬間、漆黒の皮膚に覆われた巨人の身体に僅かにヒビが入った。
度重なるダメージで崩壊しかかっていた巨人の身体は心臓を貫かれた事で遂に限界を迎えた。
やがてヒビは瞬く間に全身に広がり、サタンの巨体はゆるやかに音を立てて崩壊していった。
建物のように崩れ落ち、巨大な黒い肉片が瓦礫となり、広範囲に渡って散乱した。
魔界を統べる最強の支配者にして、世界全てを巻き込んだ元凶は、想像を絶する戦いの末、ようやくリトの手で倒された。
気の遠くなるような、長きに渡る戦いは終わった。
私達の完全勝利だ。
「勝ったぞおおおおおおおおおお !!!」
暫しの静寂を打ち破り、エルサが天を衝く勢いで勝利の雄叫びを上げた。
他の皆もエルサに続き、歓声を轟かせた。
勝利に酔いしれ、笑う者も入れば、泣くものもいた。
「リト……やっと……終わったんですね……」
私は空を見上げ、涙を目に浮かべながら上空に佇む赤き巨人を見つめた。
巨人は穏やかな表情でゆっくりと頷き、緩やかに地上に降り立った。
肉体は眩い光に包まれ、元の三体の召喚獣へと戻っていった。
「主……」
合体を解いたリトは満面の笑みで真っ先に私に向かって飛び込んでいった。
私も涙を流しながらリトの元へ駆け寄った。
シュルルル
だがその時、私の腰に黒い影がロープのように強く巻き付いた。
「きゃっ ?」
「主 !」
咄嗟にリトが手を伸ばすも遅く、二人の仲を引き裂くかのように影は私を引き摺っていった。
「きゃああああ !」
私は抵抗しようにも力を使い果たしたせいで動くことも出来ず、悲鳴を上げながら謎の強い力に引っ張られていった。
「主ぃぃぃぃぃぃ !」
To Be Continued




