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ランプを片手に異世界へ  作者: 烈斗
最終章・七大魔王降臨編
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第三百八十一話・復活のリト



「お久しぶりです、主」


私の目に映ったのは、鍛え抜かれた上半身、白いターバンを頭に巻き、濃い青に染まったアラジンパンツを履き、焼けた小麦色の肌をした青年……。

私は思わず目を疑った。

目の前にいるこの青年は私が会いたいとずっと願っていた人……。

間違いない、リトだ !

あまりにも唐突で私は現実を受け入れ切れず、頭がパンクしそうになっていた。


「主、しっかりして下さい !」


リトは両手で私の顔をくしゃっと持ち上げた。


「これは現実です、主の瞳に映っている私は本物です! 正真正銘、イフリートのリトですよ」


リトは屈託無い笑顔を浮かべた。

私は彼の笑顔を見た瞬間、涙が止まらなくなった。

リトは泣きじゃくる私を優しく抱き締めた。


「リト……生きてたんですね……」

「ええ……長い間、ご心配をおかけしました……」


リトは噛み締めるように私の耳元で囁いた。

リトは魔王サタンの手によって塵一つ残さずに消されてしまっていた。

彼がどういう経緯を経て復活したのかは分からない。

だけど今はリトにもう一度会えたことが嬉しくてたまらなかった。


「イフリート……死に損ないめ……どんなカラクリで蘇ったのか……是非我に教えてもらおうか」


サタンは震える声でリトに問いかけた。

リトの復活祭想定外だったらしく、平静を保つので精一杯だった。


「教えて差し上げましょうか……確かに私は貴方に倒され、光の粒子になるまで分解されました……しかし、粒子となって空気中を漂い、ずっと主の側に寄り添いながら力を蓄えていました……そしてホムラさんの最後の灯火を浴び、フルパワーの炎の魔力を余すことなく吸収し、無事に本来の肉体を取り戻したというわけです !」


リトは私を抱き寄せながら復活した経緯を語った。

ホムラは自爆したんじゃない、最後の力を使ってリトに力を与え、希望を繋いだんだ……。


「成る程……あの女狐め……やってくれたな……しかし、いくら復活した所でまた消してしまえば良いだけの話よ……今度は粒子すら残さず、魂すらもこの世から消してやるぞ」

「やれるものならやって見てください」


リトは不敵な笑みを浮かべながら立ち上がった。


「主、毒に侵されているのですね……待っていてください」


リトは私に向かって手をかざし、金色に輝く粒子を流し込んだ。

すると全身に侵食していた毒が消え、脱力感や苦痛が嘘のように無くなり、楽になっていった。


「あ……ありがとうございます」

「主はここで休んでいて下さい、魔王サタンと決着をつけます」


リトは笑顔でそう告げるとスッと立ち上がり、サタンの方へと向かっていった。


「待ってください、私も戦います……」


私はよろめきながらも何とか立ち上がり、リトの隣に並び立った。


「主、無理をなさらない方が……」

「私はホムラさんに託されたんです……あの人の遺志を継いで、最後まで戦いたいんです…… !」


私の決意は揺るがなかった。

ここまで来て黙って見てるなんて出来なかった。

リトは少し驚いてはいたがすぐに笑顔になった。


「粒子になってずっと側で見守っていましたが、本当に逞しくなられましたね」


リトは嬉しそうに私の瞳を見つめ、微笑んだ。


「これは運命か……数千年前のあの時も、我と最後まで戦ったのは、伝説の勇者と一人の魔人だった……」


サタンは剣を構え、私とリトを睨みながら戦闘体勢に入った。


「だが数千年前とは違う、勝つのはこの我だ !」

「貴方には好き放題やられましたからね、今まで溜まりに溜まった鬱憤、全部ぶつけて差し上げましょう !」


リトは闘志の炎をメラメラと燃やし、魔力を高めていた。

部屋全体は両陣営による睨み合いでピリピリとした重苦しい空気に支配された。

数千年の時を越え、因縁の対決が今始まろうとしていた。


指撃熱線(フィンガーヒート) !」


リトは人差し指をサタンに向け、指先から熱線を放った。

常人の目に追えない速さで放たれた熱線だったが、サタンは剣を振るい、あっさりと弾いた。

だがサタンは違和感を覚えた。

熱線を弾いたつもりが、剣を握った腕がビリビリと痺れた。


(今の熱線、威力も速さも格段に上がっている……もし直撃していれば危なかったな……)


リトが予想を越えたパワーアップを遂げたことを知り、警戒心を持ち始めるサタン。

汗が頬を伝い、緊張で顔の筋肉が強張った。


「はぁぁぁぁぁぁぁ !!!」


リトは弾丸のよりも速く加速し、一瞬でサタンとの距離を詰めた。

あまりにも速過ぎるリトの姿はサタンの目にすら捉えられず、急接近を許してしまった。


ドゴォッ


リトは見えない速さで拳を繰り出し、サタンの腹に重いパンチの一撃を炸裂させた。

サタンは全身に痛みが振動と共に伝わり、思わず苦悶の表情を浮かべながら嘔吐しそうになった。


(何だこいつ……以前森で会った時よりも強くなっているだと……! 動きも……拳の重さも……熱線の威力も……何もかもパワーアップしている…… !?)

「驚いているようですねサタン……私は貴方によって分子レベルまで破壊された……しかし、痛みつけられた筋肉が回復しながら成長し鍛え上げられるように、私の肉体も以前よりも遥かに頑丈に再構築されていったのです !」


リトは得意気に語ると怯んでいるサタンの顎を掴み、長い脚を斧のように振り上げ、彼を宙へと吹っ飛ばした。


「ぐほぁっ !」


空中を舞いながら口から赤い液体を漏らすサタン。


「今です主 !」

「やぁぁぁぁぁぁ !」


私は床を強く蹴り、高くジャンプすると宙を舞って身動きの取れないサタンに追撃を叩き込んだ。


「ぐはぁっ !?」


風をぶった斬るように振り下ろされた剣が脳天に直撃し、床へと叩き落とされるサタン。

落下した衝撃で床が砕け、煙を巻き起こしながら破片が四方八方に飛び散った。

私とリトが共闘したのは今日が初めてだったが、我ながら息の合ったコンビネーションだと思った。


「おのれ……イフリートォ !」


サタンは散々攻撃を喰らい続けたことに逆上し、色欲(アスモデウス)の力を発動させた。片腕を蛇のように変質させ、触手のように伸ばし、リトの首に巻き付かせた。


「リト、気を付けて下さい! そいつ、毒を持ってます !」

「心配ご無用です」


リトはニヤリと笑うと蛇の牙が首筋に噛みつく前に全身に黒いオーラを燃え上がらせた。

瞬く間に筋骨隆々に肉体が膨れ上がり、肌は更に黒く染まり、凶悪な見た目へと変貌した。


「ぬおおおおおおお !!!」


闇の力を全面に引き出した魔人形態へと変身したリトは溢れんばかりのパワーで無理矢理首に巻き付いた蛇の首を引きちぎった。


「ぐおおおおお !」


ひきちぎられた腕の断面から壊れた蛇口のように血を噴出させ、雄叫びを上げるサタン。

だが激痛に苦しんでいる暇を与える程リトは優しくは無かった。

発情する獣のように息を荒げながらドスドスと地響きを鳴らし、リトはサタンに突進した。


「ヌオオオオオオオオオオ !!!」


リトは肥大化した手のひらでサタンの頭を鷲掴みにして軽々と持ち上げ、何度も床に叩きつけた後、近くの壁まで突進した。

サタンの頭を壁に押し付け、咆哮を上げながら駆け抜けていく。

サタンは絶叫し、壁は一直線に削り取られていった。

スタミナが切れるまで走り終えたリトは乱暴にサタンを放り投げた。


「おのれぇぇぇぇ !」


頭から血を流し、大ダメージを受けながら激怒するサタン。

空中でバランスを取り、何とか体勢を立て直す。


強欲(マモン)の力…… !」


サタンはマモンの力を借り、身体能力の一部を極限まで底上げした。

パワー重視の魔人形態に対抗し、サタンは攻撃力のみを限界値まで上昇させた。


「きえあぁぁぁぁぁぁぁ !!!」


声にならない叫びを上げ、大きく拳を振り上げるサタン。

リトも負けじと絶叫しながら巨大なパンチを繰り出す。

轟音を響かせ、大気を震わせながらぶつかる拳と拳……。

競り負けたのはリトの方だ。

激しい拳の打ち合いに負け、床を削りながら壁際まで弾き飛ばされるリト。


「ハッハッハッハ !所詮どれだけ力をつけようと、我に勝つことは出来んのだ !!!」


息を切らしながら高笑いをするサタン。

しかしマモンの能力を使った反動で大きな負荷がかけられ、肉体は悲鳴を上げていた。


「はぁぁぁぁぁぁぁ !!!」


今度は私が風を纏い、剣を握り締めながらサタンに挑みかかる。


キィン キィン キキィン


剣と剣が擦れ合う度に青白い火花が飛び散り、金属音がメロディを奏でた。

風と一体化し、瞬きする暇も無いくらいの速さで剣を振るい、サタンを攻め立てる。

信じられないくらいに身体が軽い !

リトが生きていたという安心感と仲間達の想いを受け継いだ使命感が私を突き動かしていた。

サタンは肉体の疲弊も合間って、私の剣を防ぐので手一杯だった。


「ぐっ……この我が…… !」


次第に追い込まれるサタン。

腕の痺れが限界を迎え、少しずつ後退していく。


竜巻烈空(トルネードフィースト) !」


私は竜巻の範囲を限界まで絞って圧縮し、ドリルのように鋭い回転を帯びた突きを放ち、サタンの脇腹を抉った。


「ぐおおおおおおおお !!!」


腹を貫かれたサタンは絶叫し、傷口から勢い良く血を噴出させた。

サタンの表情から余裕が消えていくのが伝わってくる。


「貴様ァ !」


サタンはがむしゃらに剣を振り回し、感情のままに私に反撃を仕掛けた。

しかし我を忘れているのか、剣の動きも出鱈目で簡単にさばくことが出来た。

しかし、私はそれが罠だと言うことに気が付かなかった。


暴食(ベルゼブブ)の力」


突然サタンの背中に巨大な蝿のような羽が生えるのが見えた。

私は警戒して動きを止め、防御の構えを取った。

しかし、その際の僅かな隙が命取りとなった。


「油断したな勇者よ! 貴様を吸収してやるぞ !」


サタンの腹は巨大な漆黒の穴が浮かび上がっていた。

穴から発生する引力は凄まじく、サタンとの距離が近かった私は吸い込まれそうになった。


「うっ……しまった…… !」


足に力を入れ、何とか踏ん張ろうとするも強大な引力の前には抗いようが無く、徐々に足が引っ張られていった。


「フハハハハ! 虚空の闇に抱かれるが良い !」

「くう…… !」


ブラックホールに匹敵する強力な引力に晒され、限界が訪れたのか、足も地面から離れようとしていた。

万事休す……と思われたその時 !


ドゴッ


「がっ !?」


青白く燃え上がる巨大な弾丸が一直線に飛び出し、サタンを殴り飛ばした。

壁際まで吹き飛ぶサタン。

私はベルゼブブの引力の解放され、地面にへたり込んだ。


「り……リト……」

「無理をしないでって言ったじゃないですか」


間一髪の所で私を助けてくれたのはリトだった。

いつの間にか全身に青いオーラを纏い、肉体も通常より引き締まった細身になり、髪も青く染め上がった蒼炎形態になっていた。

リトは呆れながらも私の腕を引っ張り、立たせた。


「うぬぬ…… !」


破壊された壁からサタンがふらつきながら姿を現す。

その目は度重なる被弾、激痛、屈辱による殺意に満ちていた。

リトと私は顔を見合せ、再び戦闘の構えを取った。

最後の魔王・サタンとの戦いもいよいよクライマックスを迎えることになる。


To Be Continued

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