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ランプを片手に異世界へ  作者: 烈斗
最終章・七大魔王降臨編
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第三百七十六話・磔



「良かったなぁ貴様ら、伝説の勇者様が哀れな貴様らを助けに来て下さったぞ」


サタンはふてぶてしく玉座にふんぞり返り、ワインの注がれたグラスを手に邪悪な笑みを浮かべていた。


私はあまりにも酷い光景を目の当たりにし、目を疑った。

これは夢であってほしいと何度も願った。

エルサ達は奮戦虚しくサタンに敗北し、完膚なきまでに叩きのめされたのか、全身ボロボロでぐったりと気を失っていた。

それだけでは飽きたらず、七本の巨大な十字架に磔にされ、晒し者にされていた。


「ひ……酷い……どうして……」


私は怒りと悔しさで全身を震わせ、涙が止まらなかった。

サタンはそんな私を嘲笑うかのように階段をゆっくりと降りていった。


「土足で城に乗り込んで来た挙げ句我の部下達を壊滅させたのだ、当然の報いであろう」


サタンの後ろに控えていたペルシアは気まずそうに私を見つめていた。


「我とルシファーを除く五人の魔王を倒したことは評価するが、我の敵では無かったようだな」


エルサが磔にされている巨大な十字架の柱に触れながらサタンは憎たらしくほくそ笑んだ。


「今すぐ皆を解放して !」


私は今までに無い殺意に満ちた眼光でサタンを睨み、刃を向けた。


「そう殺気立つな小娘よ、何も殺すつもりはないさ、だがそれなりに利用させてもらう」


サタンはそう告げると片手を伸ばし、天井へと掲げた。

その瞬間、城全体が激しく震動した。


「な……何 !?」


バランスを崩さないよう、私とホムラは互いに肩を支え合った。

一方、城の外では異常事態が起こっていた。

遥か上空で雷鳴が轟いたかと思えば、空に亀裂が入り、やがてガラスのようにパリィンと割れてドーナツ状の穴が生まれ、裂け目からは赤紫に歪んだ空間が露になった。


「何が起こったか想像もつくまい……いや、異世界からやって来たお前なら、理解出来るかも知れんな……」


サタンは懐から水晶を取り出し、私に見せつけるように突き出した。

水晶には空に起こっていた異変が映し出されていた。

私はその光景に見覚えがあった。

かつて現実の世界でミーデは空にブラックホールのようなものを作り出し、私は異世界へ続く異空間と引きずり込まれた。

その時の現象に酷似していた。


「誰が発見したか分からんが、この異空間への穴を通れば別の世界へ移動することが可能……我は今いる世界の支配が完了した後、この穴を利用して別の世界にまで手を伸ばそうとした……だが異空間へ続く穴は不完全ですぐに閉じてしまう……ミーデに持たせた水晶の力ですら時間に限りがある……空を埋め尽くす程の巨大な穴を生み出すには大量の魔力が必要だった……」


サタンは自らの野望を語り終えると口角をつり上げ、指をパチンと鳴らした。

すると磔にされていた皆の様子が急変した。


「「「くっ……うわぁぁぁぁぁぁ !!!」」」


突然磔にされた皆は一斉に苦痛に顔を歪ませ、絶叫を上げながら悶えた。


「な……何を…… !」

「まあ見ていろ、こやつらの魔力を天へと捧げるのだ !」


七本の巨大十字架からそれぞれ色鮮やかなオーラが充満し、吸い上げられるように天へと昇っていった。

オーラが煙のように天井へと上昇する度に全員は苦しそうに悲鳴を上げた。


「皆に何をしたんですか !」

「ククク……こいつらの魔力を無理矢理吸い上げて天空に開いた次元の穴に注がせ、更に巨大化させているのだ、二度と閉じぬようにな」

「そんな事をしたら、皆が…… !」


魔力を無理矢理奪われ続け、皆の顔色が見るからに悪くなり、急速にやつれていった。

次第に叫び声すらも弱々しくなっていった。


「あっ……はぁ……ち……力が……抜ける……」

「く……くる……苦しいっ……」


サタンは悦に入りながら捕らわれた皆が苦しむ様を眺めていた。


「ククク……早く救出しないと最悪、命を落とすかもな」

「そんなこと……させません…… !」


私は歯を食い縛りながらサタンを睨み付け、刃を向けた。

このままでは皆が危ない、一刻も早くサタンを倒さなければならなかった。


「さあ、勇者の力を継承した娘よ、その力、我に見せてみよ !」

「はぁっ !」


私は無我夢中で走り出し、加速しながらサタンに向かっていった。


「全く、あの娘って意外と感情的だったのね……」


ホムラは呆れつつも私の後に続き、サタンに立ち向かっていった。


「やぁぁぁぁぁ !」


キシィンッ


私はサタンとの間合いを詰め、素早く剣を振り上げる。

だがサタンは剣で私の一撃を受け止めた。

両者の力が拮抗し、緊迫した膠着状態が続いた。


「絶対に……貴方だけは許さない…… !」

「その殺意に満ちた瞳と反抗心……益々気に入ったぞ……我の女に相応しいでは無いか」


私に睨み付けられながらもサタンは余裕の表情で舌舐めずりをした。

後方からホムラが刀を構えながら急接近してくる。


「二人で来ようとも同じことよ、我に奇襲は通じぬ」

「わかってるわ、小細工も搦め手も通用しないことは」


ホムラは最初からサタンを狙ってはいなかった。

脇目も振らず、風を巻き起こしながらサタンを横切り、後ろにそびえ立つ七本の巨大な十字架に向かっていた。


「はぁっ !」


ホムラは炎を纏った刀でエルサが磔られている十字架を斬りつけた。

だが見えない結界に守られ、刀はあっさりと弾かれた。


「無駄だ小娘、我を怯ませぬ限り、そやつらには手出し出来んぞ」

「……そのようね……」


ホムラは覚悟を決め、今度こそサタンに攻撃を仕掛けようと刀を構えた。

だがそれまで傍観していたはずのペルシアが彼女の前に立ちはだかった。


「サタン様、この娘は私に任せてください」

「ふん、黙って見ていれば良いものを……まあ良い、精々頑張れよ」


サタンはつまらなそうに吐き捨てると剣を握った腕に力を込め、私を引き離した。

私は力任せに吹っ飛ばされ、床を削りながら後退し距離をとった。


「はぁ……はぁ……」


この男……やはり強い……リトを一瞬で消し飛ばし、七人が束になっても敵わなかっただけのことはある。

だけど私だって、魔王を倒す為にここまで強くなったんだ……。


「貴方を倒して、皆を助けます !」


私は気を引き締めると再び刃を構え、サタンに向かって宣言した。


「その意気だ……かかって来るが良い……」


七人のうちの最後の魔王・サタンと勇者の力を受け継いだ私……。

太古から続いた因縁を終わらせる為、いよいよ最後の戦いが始まろうとしていた。


To Be Continued

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