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ランプを片手に異世界へ  作者: 烈斗
最終章・七大魔王降臨編
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第三百七十三話・復活のヒュウ



魔王城第一層の玄関ホールにて、レヴィ達は巨大な柱の影に身を潜めていた。

外での激しい戦いの音がホールにまで響いてくるのが伝わった。


「うう……八方塞がりですわ…… !」

「どうすりゃ良いんですかぁ…… !」


城の中には魔王サタン……外にはルシファー……何処にも安全な場所など無かった。

レヴィ達が恐怖に怯えている中、ヴェルゼルクはヒュウの亡骸を抱えながら何か怪しい動きをしていた。


「おっさん、何やってるんだゾ」

「彼を生き返らせるんだ……私の力で……」


ヴェルゼルクは家族を放ってまで死者を甦らせる為の研究をしていた。

全ては亡くなった妻を甦らせる為……。

だがその力を魔王に悪用され、数多くの兵士達を地の底から復活させるという大惨事を招いてしまった。


「私に残された魔力の全てを注ぎ、息子の親友を復活させる……それが私のせめてもの責任だ……」

「そんなこと……出来るんですか…… ?」


レヴィ達が見守る中、ヴェルゼルクはヒュウの亡骸をそっと地面に置いた。

そして自らの手を噛み、傷口から溢れる血に指をつけて絵具代わりにし、ヒュウの周辺に血を円陣を描いた。


「目覚めよ……我が息子の友……大蛇(ヒュウ)よ !」


次の瞬間、ヒュウの亡骸が紫色に発光した。

全身に紋様が虫のように這いずり回ったかと思えばヒュウの胸に空いた傷口が綺麗に消え始めた。

凍りついたように青白かったヒュウの肌は血色が良くなり、艶のある生き生きとした色へと変わった。


「ここは……」

「おおお !!!生き返ったっすー !」


意識を取り戻したヒュウを目の当たりにし、レヴィ達は思わず歓喜の声を上げた。

忌まわしき力と思われていた蘇生術が初めて意味を成した瞬間だった。


「俺は確か……後ろから何者かに撃たれて……」


戸惑いながらヒュウは辺りを見回し、自分の体をペタペタと触って確かめるが何処にも外傷は見当たらなかった。


「良かった……何とか成功した……」

「おい……」


緊張の糸が切れ、安心したのか全身から力が抜け、倒れそうになるヴェルゼルク。

蘇生術はそれ相応に負担が大きかったようだ。


「所でヴェルは……? あいつは何処に ?」

「それは……」


レヴィ達はヒュウに事情を説明した。

ルシファーによってヒュウが目の前で殺され、その怒りでヴェルザードが凄まじい力を覚醒させたことを。


「成る程……つまり俺は一回死んだのか……ダチを助けに来たつもりが……不覚……」


ヒュウは悔しそうに眉間にシワを寄せながら唇を噛み締めた。


「ともかく、ヴェルザードの親父さん、俺を生き返らせてくれてありがとよ」

「礼なんていいよ、俺にとって罪滅ぼしの一つに過ぎないからね……」


頭を下げるヒュウにヴェルゼルクは苦笑いをした。

そんな時、突然玄関ホールを一斉に走る複数の足音が城中に響いた。

ビクッと警戒するレヴィ達。

しかし、足音の正体は魔王軍兵士では無くかった。


「あいつら……」


エルサ達は城の外での戦いを終え、玄関ホールへと突入し、魔王サタンの待ち構える玉座の間を目指していた。

彼女達はレヴィ達に気付くことなく、脇目も振らずに第二層へと続く階段を登っていった。


「レヴィさん……僕らはどうします ?」

「暫くこの場で待機ですわ」

「その方が安全だと思うゾ」


ヒュウも甦ったばかりで身体が慣れていない。

ヴェルゼルクも魔力を使い果たし、疲弊しきっていた。

下手に動くより、柱を盾に身を寄せている方が遥かに安全だった。


「あいつらが魔王を倒してくれるのを祈るだけですわ……」




エルサ達は第二層、第三層と次々に突破していった。

侵入者を阻む番人が全くいないわけでは無かったが、城の外に兵を集中させた弊害か、城内に残った兵達の数は少なく、殆どもぬけの殻状態だった為、簡単に先に進めた。


そして、一行は第四層へとたどり着いた。

四層にはかつて倒されたはずの魔界四天王・デビッドとヒルデビルドゥが待ち構えていた。


「フフフ、また会ったな……無限(メビウム)結束(ユナイト)よ……」

「貴様らに殺された恨み、ここで晴らしてやる……」


余裕のある大物然とした態度のデビッドと対照的にヒルデビルドゥはエルサ達への恨みを隠すことなく剥き出しにしていた。

デビッドもヒルデビルドゥも、以前より遥かに強化されているように感じた。

一同は二人に警戒し、一斉に身構える。


「待て、こいつらは俺が相手をする」


エルサ達を制止しながらヴェロスが前に出た。


「俺も戦うぞ、丁度2対2だろ」


ヴェロスに続いてフライも前に出た。

向かい合うデビッド、ヒルデビルドゥとヴェロス、フライ……。

特に二人はデビッドと深い因縁があった。


「貴様ら……私に救われた恩を仇で返すか」

「寝言をほざくな……アンタは俺達を駒として利用してたに過ぎない……」

「悪いが寝返らせてもらう」


ヴェロスとフライは割り切った様子で敵意を露にした。


「愚かな……後悔することになるぞ」

「お前達のような幹部風情が、我ら魔界四天王に太刀打ち出来るわけ無いだろ」


デビッドは持っていた杖を構え、ヒルデビルドゥは懐からバタフライナイフを取り出して器用にクルクル回転させながら戦闘体勢に入った。


「お前達はとっとと先に行け」

「恐らくもうこいつら以外に四天王も幹部もいないだろ、真っ直ぐ進めばすぐに魔王の元にたどり着く」


フライの勘は当たっていた。

ここは魔王の部屋までの最後の砦だ。

貴重な戦力がここに来て減ってしまうのは痛かったが、これ以上全員が足止めを喰らうよりはマシだった。


「分かった……ここは任せた」

「下克上見せてやれよ !」


エルサ達はデビッド、ヒルデビルドゥの相手をヴェロス、フライに託し、階段へと登っていった。


「さて……けじめをつける時が来たようだな」

「そのようだ」


ヴェロスとフライは殺気を放ちながら戦闘の構えをとった。

フライはハンマーを持ち上げ、ヴェロスは腰を落とし、両腕を狼の腕へと変化させた。

四天王と元幹部……。

四人は静かに向かい合いながらバチバチと火花を散らせた。


To Be Continued

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