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ランプを片手に異世界へ  作者: 烈斗
最終章・七大魔王降臨編
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第三百七十二話・ミーデの最期



「ぬおおおおおおお !!!」


無我夢中で杖を振り回すミーデ。

だがその動きはまるで素人のように覚束無く、私の目には止まって見える程だった。

だけど私はどうしても反撃するのに躊躇してしまい、防戦一方になっていた。


「どう……しました…… ! 弱っている私を攻撃出来ないのですか……甘いですねぇ……舐めているのですが…… !」


ミーデは挑発をしながらなおも出鱈目に杖を振り回す。

私はミーデの杖を見切りながら一歩ずつ後退していった。

だが……。


「きゃっ !?」


足元に転がっていた小石に躓き、私は思わずバランスを崩してしまった。

その隙を突き、ミーデは私のみぞおちに杖を叩き付けた。


「はぐっ…… !」


痛みが電流のように走り、私はそのまま大の字になって地面に倒れた。

ミーデはフラフラとよろめきながら倒れた私に近付き、震える手で杖を振り上げた。


バシッ バシッ バシッ バシッ


「この! この! この! このぉ !」


ミーデは目を血走らせながら馬乗りになり、無抵抗の私に容赦なく杖で何度も叩き付けた。

けれど鎧に守られてるお陰でそこまでダメージは無かった。


「くっ…… あぐっ……ぐっ……きゃあっ !」

「今の貴女なら……簡単に私を……殺せたものを……! 愚かですねぇ !」


ミーデは勝ち誇ったように高笑いする。

だが何度も叩き付けているうちに手に持っていた杖はポキッと折れた。

舌打ちをするとミーデは折れた杖を放り捨てた。


「貴女の……その甘さ……ずっと気に入らなかったんですよ……この手で……今度こそ葬って差し上げますよ…… !」


ミーデは震える両手で細い私の首根っこを掴み、ギュッと締め付けようとした。

だがミーデの体力は残っておらず、思ったより力が入ってなかった。


「ちきしょお……ちきしょお…… !」

「う……はぁっ !」


隙を見て私は馬乗りになっていたミーデを蹴り上げ、勢い良く吹っ飛ばした。

埃にまみれながら地面を転がり、咳をしながらゆっくり立ち上がろうとする。


「う……ぐう…… !」


だがミーデは胸が潰れるような感覚に襲われ、苦しそうに胸を抑えながら悶えた。

そのあまりにも痛々しい姿に敵ながら可哀想に思えてきた。


「もうやめてください……! これ以上貴方を苦しめたくないんです…… !」


私は必死に呼び掛けるが、ミーデは満身創痍になりながらも立ち上がってくる。


「ぐう……ぬおおおおおおお !!!」


震えながら拳を振り上げ、私に向かって殴りにかかるミーデ。

その気迫はボロボロとは思えない程に真に迫っていた。


(こうなったら……やるしかない…… !)


私は覚悟を決め、剣を構えながら迫り来るミーデの動きを見据え……。


ズバシャッ


繰り出された拳を紙一重で避け、僅かな隙を突き、急所を一撃で斬りつけた。

もうこれ以上苦しまなくて済むように、致命傷を負わせた。


「ぐ……ほぁ……」


急所を斬られ、大量の赤い液体が傷口から溢れて地面に広がる。

遂にミーデは私に向かって前のめりに寄り掛かり、崩れ落ちた。


「ミーデ……」

「はぁ……はぁ……魔王……様……」


ミーデの横顔を見ると目には赤い血が混じった涙が浮かんでいた。

声にならない呻き声を上げながら、震える手を伸ばす。


「私は……貴方様の……お役に……立てましたか…… ?」


ここに居るはずのない相手に虚しく問い掛けるミーデ。

視界はボヤけ、彼の意識は朦朧とし、目の前にいる私の事すら認識していなかった。

今まで憎たらしいゲスな笑顔しか見たことが無かった……。

初めて目にした涙を流すミーデの悲しい表情……。

どれだけ利用されようとも、どんな目に遭おうとも、最後には捨てられるだけだとしても、ミーデの魔王に対する忠誠心は本物だった……。


「貴方は……魔王の役に……立てたと……思います……」


私は囁くような声でミーデの問い掛けに応えた。

ミーデは私の言葉を聞きと安堵の表情を浮かべた。


「魔王様……」


ミーデは遂に力尽き、闇の粒子となって天へと昇っていった。

私を異世界へと連れ去り、運命を狂わせた因縁深い男はこの世を去った……。

酷いことも沢山された……それでも彼を憎み切れなかった……。

私は彼の最後を看取り、複雑な思いを抱きながら天井を見つめた。


「……そうだ……ホムラさんが心配してる…… ! 早く行かないと…… !」


油を売っている暇は無かった。

私は立ち上がると剣を振りかざし、切っ先から光の刃を放ち、天井に穴を開けた。


「はっ !」


私は地面を蹴り上げて高くジャンプし、天井に出来た穴に向かって飛び上がり、地上を目指した。




一方ヴェルザードとルシファーは魔王城からだいぶ離れた位置にある川沿いで倒れていた。

死力を尽くした激闘の果てに勝利を掴んだのはヴェルザードだった。

穏やかに流れる川を眺めながら二人は黄昏れていた。

戦いが終わり、二人の間には敵対心では無く、奇妙な友情が芽生えていた。


「地上人に負けるとは……僕も落ちたものだな……」


仰向けに倒れながらルシファーは呟いた。

そう言いながらもルシファーの顔は晴れ晴れとしていた。


「んなことねえよ、お前は今まで戦った奴等の中で一番強かった」

「フォローなどいらん、余計惨めになるだけだ」


ルシファーはヴェルザードの言葉に思わず苦笑いをした。


「これで……六人の魔王が敗れた……だがまだ安心するのは早い……最後の一人が残っている……」

「ああ、魔王サタンのことだな」


憤怒を司る最凶の魔王……その名はサタン。

七人の魔王の中でも特に高い魔力とカリスマ性を秘めていた。

そして本来の実力はルシファーすらも凌駕する。


「お前の仲間達が城に突入したが、サタンには勝てない……返り討ちに遭うだけだ」

「そうだな……俺も加勢しにに行きたいが、もう動けねえ……」


真祖に覚醒したことで身体に負荷をかけ過ぎた反動でヴェルザードは急激に体力を消耗していた。

今の彼は戦う所か、歩くことも出来なかった。


「あいつらが上手いことやるのを信じるしかねえ……」

「おめでたい男だ……だがお前達はサタンの恐ろしさ……本当の狙いを知らん……」


ルシファーはヴェルザードをからかうように笑い、意味ありげな含みを持たせながら呟いた。


「ご主人様ー !」


息を切らしながらリリィがやって来た。

長距離を走ったのか、フラフラで今にも転びそうになっていた。

遠目から戦いに勝利した様子のヴェルザードを見てリリィは安堵の表情を浮かべた。


「リリィ……」


ヴェルザードはやつれた顔でリリィに微笑みかけた。

彼女がいなければヴェルザードは力を暴走させ、取り返しのつかない惨劇を招く所だった。

彼女には一生頭が上がらないだろう。



ヴェルザードはルシファーに勝利するもこれ以上の戦闘は不可能の為リタイア。

地下通路でミーデを倒したワカバとホムラは皆の後に続き、魔王城に向かっている。

エルサ達は城に乗り込み、サタンのいる玉座の間を目指して進んでいた。

魔王軍との長き戦いもいよいよ終盤戦へと突入していく。


To Be Continued

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