表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ランプを片手に異世界へ  作者: 烈斗
最終章・七大魔王降臨編
372/400

第三百七十話・傲慢-プライド-



「くっ……ここは……」


意識を取り戻したルシファーは呻き声を上げ、キョロキョロと辺りを見回した。

周辺の大地はひび割れ、隕石が落ちたかのように巨大なクレーターが出来ていた

ルシファーはヴェルザードと取っ組み合いになりながら地上へと落下したことを思い出した。

背中の翼は消え、全身に痛みが走り、かきむしるように無様に地に這いつくばる。

5000メートルはある高さから落下したにも関わらず、ルシファーもヴェルザードも致命傷には至らなかった。

片や元天使族……片や真祖……人智を超えた桁外れの耐久性の賜物だろう。


「まさか……二度も地に落とされるとはな…… !」


よろめきながらも何とか立ち上がるルシファー。

頭を強く打ったのか、脳が揺れるような感覚に襲われていた。

目の前にはうつ伏せに倒れているヴェルザードの姿があった。


「僕を嵌めたつもりだろうが……残念だったな……」


ニヤリと邪悪な笑みを浮かべ、魔剣を大きく振り上げ、とどめを刺そうとする。

だが次の瞬間、ヴェルザードの身体は再び霧となり、ルシファーの視界から姿を消した。


「おのれ……そのような小細工、何度も通じると思うな !」


苛立ちを露にし、ルシファーは全身に青いスパークを走らせ、電撃と一体化して空中を高速で移動した。

ヴェルザードが姿を見せる位置まで先回りし、背後に回り込んだ。


「ちっ…… !」

「どうした、万策尽きたか !」


ルシファーの先制攻撃がヴェルザードに命中する。

翼を切り落とされたとは言え、落下のダメージを感じさせない程にまだまだ力を残していた。


雷光神空(ライトニングゴッド) !」


魔剣に溢れんばかりの雷の魔力を注ぎ、青白い光を放ちながら目にも止まらぬスピードで剣を振るい、ヴェルザードを滅多切りにする。


「うっ……ぐっ……ぐわぁぁっ !!!」


血飛沫が舞い上がり、苦悶の声を上げるヴェルザード。

あまりの速さに反撃する暇も無く、全身を切り刻まれていった。


電撃打(エレクトストライク) !!!」


ルシファーは拳に電撃を纏わせ、閃光を放ちながらヴェルザードの懐に光線よりも速いパンチを命中させた。

衝撃に耐え切れず、風圧と共に岩盤を次々に破壊しながら吹っ飛ばされていくヴェルザード。

ルシファーは更に追撃を加える為、電撃を全身に帯びたまま加速し、ヴェルザードの後を追った。


「やられっぱなしで終わるかよ !」


ヴェルザードは砕けた岩盤に埋もれながらも踏み止まり、体勢を立て直す。

光の速さで迫ってくるルシファー。

悪魔のような狂気に満ちた形相で剣を振り上げる。


「ぬおおおおおおお !!!」


ドゴオッ


「がふっ !」


剣が振り下ろされた瞬間、ギリギリの所で見極め、紙一重でカウンターを決めた。

血で固められた鉄よりも硬いグローブを嵌めた拳がルシファーの腹筋を抉る。

苦痛に顔を歪め、ルシファーの動きが一瞬止まった。


「オラァッ !」


ヴェルザードは長い足を振り上げ、渾身の一撃でルシファーを遠くまで蹴り飛ばした。

瓦礫や砂埃を巻き上げながら遠くの川沿いまで吹っ飛ばされるルシファー。

やがてヘドロのような異臭漂う川へと落下し、水飛沫を巻き上げた。


「ぐっ…… ! おのれ…… !」


逆転に次ぐ逆転……。

どちらが優勢なのかが分からなくなるくらい一進一退の激しい攻防戦が続いた。

川の水によって全身を濡らし、息を切らしながら立ち上がるルシファー。

そしてヴェルザードも彼の居る地点まで追い付いた。


「はぁ……はぁ……」


休む間もなく長時間の戦闘により、二人の体力は流石に限界を迎えつつあった。

疲労と苦痛を堪え、肩で呼吸をしながら互いを睨みつける両者。


「どんな気分だ、地上の人間に追い込まれるってのは……」

「ほざけ、姑息な手段を用いなければ戦えない下等生物め……」


ルシファーは深呼吸をしながら両手で剣を構える。

ヴェルザードはそれに合わせるように腰を低く落とし、獣のような姿勢をとる。

ピリピリと緊迫した空気が周辺を支配する。


「「はぁぁぁぁぁぁぁ !!!」」


両者は声を張り上げながら互いに向かって飛び出した。

水飛沫がバシャバシャ音を立てて跳ね上がる。

残された力を振り絞り、全力を込めて相手にぶつけ合う。


キィンッ キキィンッ


再び繰り広げられる怒濤の接近戦。

ルシファーが一心不乱に剣を振るい、ヴェルザードは必死にさばきつつ、隙を見て反撃を狙う。


「はぁっ !」


ズバッ ズババッ


ルシファーの剣がヴェルザードの防御を崩し、胴に深く一撃を刻む。

ヴェルザードは胸から大量の血が漏れ、川を己の血で赤く染めた。


「くっ…… ! うおおおおおお !!!」


斬られた激痛を強引に堪え、ヴェルザードは拳を握り、ルシファーの顔面を激しく殴打した。

脳が揺れる程の重い攻撃を何度も浴びせ、ルシファーの動きを鈍らせた。


「この僕が……ここまで追い詰められるのは……本当に久し振りだ…… !」


地上の者に追い込まれ、ボロボロになることは天界で育った彼にとってこの上ない屈辱のはずだった。

だが不思議とルシファーは嬉しそうに頬を緩ませていた。

立場など関係ない、ただ純粋に戦いを楽しんでいた。


「はぁぁぁぁぁぁ !!!」


ルシファーは魔剣ルシファーに残された魔力を全て注ぎ込んだ。

次の一撃で勝負を着ける気だ。

魔剣はバチバチと電撃を帯びて激しくスパークし、オーバーヒート寸前と思えるくらい熱くなっていた。


「これが僕の全力だ、受けてみろ !」

「おもしれえ !」


ルシファーはヴェルザードから距離を取り、力の限り剣を振り上げた。

切っ先に青白い電撃が集まっていく。


傲慢雷神撃(プライドギガサンダー) !!!」


背負い投げをするかのようにかつてない勢いで剣を振り下ろし、最大出力の電撃を纏った斬撃を放つ。

ヴェルザードの中に避けるという選択肢は無かった。


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ !!!」


強大な雷の斬撃が迫る中、ヴェルザードは空気を振動させる程の雄叫びを上げ、全身に力を込めた。

再び彼の背中から巨大で神々しい竜のような翼が生え、全身が赤い閃光に包まれる。


真破滅十字架(オリジンルインロザリオ) !!!」


ヴェルザードは指で十字をなぞり、血のように紅に燃え上がる巨大な十字型のエネルギーを作り出し、ルシファーに向かって放った。

巨大な十字のエネルギーがルシファーの放ったフルパワーの電撃と激しくぶつかり合う。


バチバチバチバチ


拮抗する二つの強大なエネルギー。

だがやがてヴェルザードの放った十字のエネルギーが電撃を飲み込み、川を一瞬で干上がらせる程の爆発を引き起こした。


「くっ……うおっ !」


脳に響く程の爆発音と周辺を包み込む煙……。

爆発の衝撃に巻き込まれながら後退をするルシファー。

黒い煙に覆われ、視界を遮られる。


「おのれ…… ! 」


ルシファーは剣を一振りし、一瞬にして煙を払う。

だが彼の視界にヴェルザードの姿は無かった。


「はぁ……はぁ……一体何処に……」


息を切らしながら辺りを見回す。

だがルシファーは上から迫る気配に気が付かなかった。


「しまっ !?」


ヴェルザードは爆発に乗じて霧となって煙の中を泳ぎ、真上からルシファーに奇襲を仕掛けた。

ルシファーに飛び掛かり、大地へと押し倒す。

馬乗りにされ、抵抗する力は既にルシファーには残されてなかった。


スンッ


ヴェルザードは手刀をルシファーの喉元に突き立てた。

このまま突き刺せば彼の息の根は止まる。

だがヴェルザードはそれをしなかった。


「何故……とどめを刺さない……僕は……君の親友を殺したんだぞ……」

「……とどめを刺した所で……あいつが生き返るわけじゃねえ……それに、勝負は着いた、これ以上続ける理由もねえ……」


ヴェルザードはニコッと微笑むと突き立てた手刀を引っ込め、ルシファーから離れた。

ルシファーは何も言わずに仰向けのまま空を見上げた。


「僕の……負けか……」


To Be Continued

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ