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ランプを片手に異世界へ  作者: 烈斗
最終章・七大魔王降臨編
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第三百六十九話・二人の堕天使



「くそおおおおおお !!!」


ヴェルザードに残された翼を切り落とされ、共に地上へと落ちていくルシファー。

この瞬間、彼の脳裏に忌まわしき過去の記憶が過った。

魔王になる前、天使長として戦いに明け暮れた日々……。

そしてかつての友に裏切られた悲しい思い出を……。




「何故だ……何故僕は罪人になっているんだ……僕が何をしたと言うんだ……」


遥か数千年前のこと……。地上では知性の無い凶悪な魔物達が蔓延っていた地獄のような時代……。

天界に住む天使族と呼ばれる者達はか弱き種族を脅威から守る為、日々魔物との戦いに明け暮れていた。

ルシファーは天使族達を束ねる天使長を任されていた。

カリスマ性と圧倒的な強さを誇り、天使族達から慕われていたルシファー。

だが彼は重大な禁忌を犯してしまった。



いつものように地上に降り、凶悪な魔物からか弱き種族を守っていたルシファー。

そこで後に「人間」と呼ばれる二人の男女と出会う。

二人は空腹で餓死寸前だった。

心優しかったルシファーは二人の事を放っておくことが出来ず、地上人に干渉してしまった。

天界でしか取れない禁断の果実を二人に渡すという愚行を犯した。

当時の人間は無力で知識も力も持ち合わせておらず、いつ絶滅してもおかしくなかった。

だが天界の食べ物である禁断の果実を口にした事で、二人の男女は世界を塗り替える程の膨大な知識を手にしてしまった。

結果、九死に一生を得た二人は果実の恩恵を受け、後に高文明の礎を築き上げる事になるのだが、ルシファーのしでかした罪はあまりにも大きかった。

地上の歴史を己一人の独善的な自己満足によって狂わせてしまったからだ。




大罪人となったルシファーは天使長の座を降ろされ、処刑される事となった。

だがこれは死刑では無い。

彼にとっては地獄で死ぬことよりも屈辱的だった。


大罪人ルシファー、処刑の日だ。

断頭台の前で拘束され、身動きの取れない状態にされたルシファー。

彼の横には親友であり、天使長へと昇格した男、ミカエルが立っていた。


「ミカエル……僕は何も悪い事はしていない! 信じてくれ !」


みっとも無く許しを乞うルシファー。

汗だくで目には涙が溜まっていた。

だがミカエルは憐れむような目でルシファーを見下ろすだけだった。


「ルシファー、君の事を尊敬していた……この世で最も誇れる友だと思っていた……だが君は……緩やかに進化するはずだった地上を己の身勝手な偽善によって滅茶苦茶に狂わせた……その罪は重い……本当に残念だ」


ミカエルは剣を握るとルシファーの背中目掛けて勢い良く振り下ろした。


「ぎゃああああ !!!」


あまりの激痛にルシファーはこの世の物とは思えない絶叫を上げ、辺り一面が血の海に染まる。

ルシファーにとって、天使族にとって、命よりも大切な翼が片方切り落とされた。

これが、罪を犯した天使族への罰だった。


「君はもう天使族では無い、地上で醜く地べたを這いながら無様に過ごせ、二度と天界に足を踏み入れるなよ」


ルシファーはミカエルによって天界を追放された。

天使族の資格を剥奪され、二度と天界へは戻れなかった。

何も無い荒れ果てた大地に一人取り残され、怒りと悲しみに震えながら地べたを這いずるルシファー。


「……許さん……ミカエルめ……天使族共め……貴様ら全員皆殺しにしてやる! この地上に住む全ての命を僕の下僕にしてやる! 僕はもう天使族では無い! 今日から僕は魔王になるんだ ! 」




ルシファーは血の涙を流しながら天を仰ぎ、復讐を胸に誓った。


彼は手始めに地上に蔓延る魔族達を片っ端から倒し、力を見せつけた。

地上で元天使長である彼に敵う者はおらず、圧倒的な暴力の前に屈し、次々と彼に忠誠を誓った。

短期間のうちに大勢の魔族達を従え、理想の軍団を作り上げるルシファー。

だがたった1人、彼に刃向かう者がいた。


「貴様、見掛けぬ顔だな……」


ある時、1人の男がルシファーの前に現れた。

黒いマントを翻した精悍な顔付きの青年だ。

一目で今まで倒してきた他の魔族共と次元が違う事が分かった。


「僕に何の用だ、下僕になる為に志願しに来たのか ?」

「まさか、その逆だ、貴様を我の下につかせてやりたいと思っているのだ」

「傲慢だな……」


ルシファーはその男に激しい嫌悪感を抱いた。

天界の住人だったルシファーに敵う者が地上に存在するはずが無い。

無謀にも彼の噂を聞き付け挑みに来た愚かな魔族だろうと高を括っていた。

だが、そんな彼の認識は瞬く間に変わった。




「はぁ……はぁ……馬鹿な…… !」


三分も経たないうちに勝敗はついた。

ルシファーは男に手も足も出ず、仰向けになって倒れた。

天界の住人が地上に住む者に敗北した。

……その事実が彼に屈辱を与えた。


「何者なんだ……貴様は…… !」

「ふむ……素晴らしい強さだったぞ……貴様、名はなんと言う ?」


マントについた埃を払いながらサタンは仰向けに倒れるルシファーに尋ねた。


「僕の……名は……ルシファーだ……」

「ルシファーか……気に入った……貴様、我の仲間になるがよい、断ればその場で死ぬことになるが ?」


上機嫌な様子の男。

ルシファーはそれが気に喰わず、悔しさに身を震わせながら歯軋りをした。


「ふん、さっさと殺してくれ、これ以上生き恥を晒したくはない……」

「ほう……」


男は深呼吸をするとルシファーの手を取り、無理矢理立ち上がらせた。


「貴様、とてつもない怨みを抱えているな」

「…… !」


男はルシファーの抱いている天界への強い復讐心を即座に見抜いた。

ルシファーの正体が天界の住人だと言うことも男は理解していた。


「その復讐に、我も手を貸してやろう……このままでは死ぬに死に切れんだろう ?」

「断る……貴様の手など借りん !」

「そう言うな、我も貴様と同じ、天界に復讐したいと思っておるのだ」

「何だと…… ?」


ルシファーは驚きのあまり言葉が出なかった。

この男もルシファーと同じく、元天使だった。

天界のやり方が気に喰わず、反旗を翻したが制圧され、首謀者だった彼1人だけが地上に落とされ、堕天使になった。


「共に天界を滅ぼす為、まずこの地上世界を征服しようでは無いか」


男は友好的でルシファーに握手を求めた。

ルシファーは暫く考えたが、彼の握手を受け入れた。


「僕だけでは無かったのだな……」

「仲間が増えて心強いだろ」


男はサタンと名乗った。

こうして、地上に降り立った二人の堕天使は手を組み、後に全世界を震撼させる大組織・魔王軍を造り上げるのであった。


To Be Continued

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