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ランプを片手に異世界へ  作者: 烈斗
最終章・七大魔王降臨編
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第三百六十三話・慈悲無き真祖の逆襲



真祖へと覚醒し、まるで別人のように姿を変えたヴェルザードは上空から魔王軍の大軍を見渡していた。

ただならぬ気配を感じ、エルサ達は安堵よりも警戒心が勝っていた。

兵士達もヴェルザードを警戒し、空を見上げながら武器を構えた。


「あれは……吸血鬼(ヴァンパイア)なのか…… ?」

「雰囲気がだいぶ変わったな……まさか目覚めたのか……」


軍を指揮する二大巨頭・トレイギアとゴブラはすぐに察した。

何らかの要因によって、ヴェルザードが覚醒し、真祖となったことを……。

特にトレイギアは真祖の存在を知識として持っていた。

この瞳で見るのは初めてで動揺が抑えられなかった。


「おーい! ヴェルザードー !無事なのかー !」


天を見上げながらマルクは大声でヴェルザードに呼び掛ける。

だがヴェルザードは見向きもしなかった。

そして地上へ向けて細長く綺麗な指を突き出し、空中に十字をなぞり出した。


十字架(ロザリオ)処罰(パニッシャー)


ヴェルザードは小声で呟く。

すると大地は大きく震動し出した。

魔王軍兵士やエルサ達は突然の揺れに困惑した。


カッ


次の瞬間、大地に巨大な十字が刻まれ、裂け目が発光し、地脈のエネルギーが大爆発し、激しく炎上した。

兵士達は爆発に巻き込まれ、絶叫しながら炎に包まれていった。


「何て無茶な真似を !」


名も無き一般兵達が容赦無く一掃される中、エルサやマルク達やトレイギア、ゴブラ率いる実力者達は何とか反応し、広範囲の爆発から逃れた。

たった一撃で逃げ遅れた数百を越える魔王軍兵士達は皆焼け焦げ、死体となって辺り一面埋め尽くすように転がった。


「くっ……パワーアップしてやがる…… !」

「間違い無い、奴は真祖に目覚めたんだ…… !」


冷や汗をかきながらトレイギアは確信した。

伝説の存在と思われていた真祖が目の前にいる……そして軍の大半をあっさりと壊滅させる程の絶対的な強さを持つ、破壊の王……。

魔王軍にとって危険極まりない存在になっていた。


「ヴェルザード! いい加減にしろ! 敵味方の区別もつかんのか !」


エルサは天を仰ぎながらヴェルザードに怒りをぶつけた。

周囲を顧みない無差別な攻撃……下手をすれば仲間達の命が危なかったからだ。


「待て、今のあいつは正気を失っている……かつて俺が魔獣化した時……いや、それ以上か……」


ヴェロスはエルサを静止しながら神妙な面持ちでヴェルザードを見つめた。

ヴェルザードは何の前触れもなく急降下し、大地へと降り立った。

凍りついたような冷酷な表情で周囲を見回す。


「ペルシア親衛隊、あの男は危険だ、即始末しろ」

「「「「は……はい !」」」」


トレイギアに命じられ、親衛隊の四人は震え抑えながらヴェルザードに戦いを挑んだ。

勝ち目なんてあるわけない、殺される……そんな恐怖を押し殺し、目の前の悪魔に攻撃を仕掛ける。


「このデカブツ、喰らえー !」


妖精(フェアリー)のフィンは人間の手のひらに収まる程のサイズを生かし、ヴェルザードの周りを飛び回り、鱗粉を撒き散らす。

だがヴェルザードにとっては痛くも痒くも無かった。

搦め手が通用するレベルでは無かった。


「こうなったら自棄なんだなぁ !」

「化け物め~ !」


クラッカーとワイドはそれぞれ武器を振り上げながら挟み撃ちにする形でヴェルザードに襲い掛かった。


ドゴッ


だがクラッカーとワイドはヴェルザードの目の前で前のめりに崩れ落ちていった。

ヴェルザードは何もしていない……いや、何もしていないように見える程の速いパンチが二人を一撃でKOしたのだ。


「嘘ですよね……」


パワーもスピードも、以前とはまるで別物と言える程に次元を超えており、並の魔族では触れることすら出来なかった。

一瞬で仲間達が次々と倒れ、リーダーのトールは震えが止まらなかった。

ヴェルザードはゴミを見るような冷たい眼差しでトールを睨み付けた。


「くっ……うわぁぁぁぁぁ !!!」


トールは取り乱し、普段の紳士ぶりが嘘のように無我夢中で剣を振るい、ヴェルザードを斬りつけた。

だがヴェルザードはトールの剣撃を全ていなし、逆に細いトールの首を根っこから鷲掴みにし、高く持ち上げた。


「うっ……ぐっ…… !」


トールはバタバタと暴れ、抵抗するがヴェルザードの腕に更に力が入る。

首がへし折れる程強く締め付けられ、肺が潰れるような感覚に襲われたトールは白眼を向き、口からは泡が溢れた。

これ以上は死ぬと言うところでヴェルザードは雑にトールを放り捨てた。

地面を転がり、ピクピクと痙攣したままトールは動けなかった。

ヴェルザードは横たわるトールには見向きもせずに次の標的をトレイギアとゴブラに切り替えた。


「まさか、粒揃いのペルシア親衛隊が全滅とはな……」

「想定外だ……」


二人は目の前の現実を直視出来ず、狼狽えるばかりだった。

ゴブラは意を決し、鍛え上げられた強靭な腕を振り上げ、ヴェルザードに向かって殴りかかった。


「うおおおおおおお !!!」


だが拳が振り下ろされる直前、ヴェルザードは黒い霧となってゴブラの目の前から消えた。


「くっ、何処だ !」


辺りを血眼で見回すゴブラ。

だがヴェルザードは気配を殺しながらゴブラの背後に回り込んだ。


「ゴブラ! 後ろだ !」


トレイギアが叫ぶも遅かった。

ヴェルザードはゴブラの丸太のように太い首筋に噛み付いた。

二本の鋭い牙が彼の皮膚に差し込まれる。


「ぐ、ぐわぁぁぁぁぁぁ !!!」


ヴェルザードはズルズルと勢い良くゴブラから血液を吸い上げた。

ゴブラの身体から急速に血液が奪われて行く。

絶叫を上げ、吸血から逃れようと必死に暴れるが全身に力が入らない。

やがてゴブラの顔は血の気が引いて真っ青になり、鍛え上げられた筋骨隆々の肉体が病人のように痩せ細ってしまった。


「う……あ……」


ヴェルザードは血を吸い尽くしたのか、ゴブラの首から口を離した。

ゴブラは声にならない呻き声を上げながら膝をつき、崩れ落ちていった。

ゴブリンロードの血を根刮ぎ吸血したヴェルザードは魔力を更に増幅させた。


「おのれ…… ! 図に乗るなよ! 」


トレイギアは激昂し、体内に宿る混血種の力を全て引き出したフルパワー形態へと一気に姿を変えた。

禍々しい漆黒の骸骨のような装甲に身を包む。


「ここで死ねぇぇぇぇぇ !!!」


猛然と襲い掛かるトレイギア。

ヴェルザードは目線を合わせようともせずに微動だにしなかった。

トレイギアの拳がヴェルザードの顔面目掛けて放たれる。

だが……。


ガンッ


「そ……ん……な……」


何もない所でトレイギアを覆っていた骸の鎧が突然粉々に砕かれた。

見えない拳圧がトレイギアの装甲をいとも容易く破壊した。


「がはっ…… !」


たった一発でトレイギアは宙を舞いながら吹っ飛ばされ、大の字に地面へと叩き付けられた。

以前はトレイギアに敗北したヴェルザードだったが完全に力関係は逆転してしまった。


「おのれ…… !」


最早トレイギアでは相手にならなかった。

二大巨頭は倒され、魔王軍は壊滅したにも等しかった。

だがヴェルザードから戦意が消えることは無かった。

何と次の狙いを仲間であるエルサ達に定めた。


To Be Continued

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