表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ランプを片手に異世界へ  作者: 烈斗
最終章・七大魔王降臨編
364/400

第三百六十二話・悲しみの覚醒



復活した四天王カミラを撃破したヒュウ達。

だが、勝利の余韻に浸っていて背後の存在に気が付いていなかった。

ヒュウは背後にいた何者かの攻撃を喰らい、ヴェルザードの目の前で倒れた。


「ヒュウ……嘘だろ……」


茫然と固まるヴェルザード。

あまりに突然の出来事に頭の理解が追い付いていなかった。

ヒュウの胸を貫いたのは一人の若き青年だった。

突如現れた青年は冷徹な雰囲気でこちらを見下していた。

彼こそが六人目の魔王にしてナンバー2の実力を持つ最強の男……傲慢の魔王ルシファーだった。


「る……ルシファー……様……」

「無様だな……サタン配下の四天王……折角取り戻した命、無駄にするな」


傲慢の魔王ルシファーは息も絶え絶えで這いつくばっているカミラを見下ろしながら吐き捨てた。


「そんな……ルシファー……様がやって来るなんて……」


レヴィ達は再び柱に隠れ、戦々恐々としていた。

四天王すら霞む程の強大な魔力を肌で感じ、立ち向かうという気力すら奪われた。


「侵入者は排除した……問題無い……」


ヴェルザードは倒れたヒュウを抱き抱えながら必死に呼び掛ける。

だがルシファーの光よりも速い一撃はヒュウの心臓を確実に射抜いていた。


「おい……ヒュウ !」


ヒュウは顔面蒼白で目が見開いたまま、一切の反応が無く、ぴくりとも動くことは無かった。

触れた肌は冷たく、生気を感じなかった。

あの一撃により、ヒュウの命の灯火はあっさりと消え去った。

その事がヴェルザードを絶望へと叩き落とした。


「あ……ああ……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ !!!」


現実を受け止められず、天井を仰ぎ、発狂して絶叫を上げるヴェルザード。

その目には溢れんばかりの涙が滝のように流れていた。


「そんな……あのヒュウさんを一撃で……」

「なんて無慈悲なんですの……」


ルシファーの冷酷さに心の底から震え上がる三銃士達。

近くにいたヴェルゼルクもあまりに辛い状況に耐えきれず、嗚咽を漏らしていた。


「さあ部屋に戻れヴェルザード、それとも、今ここでこいつの元へ送ってやろうか」


ルシファーはなおも友の亡骸を抱き締めながら泣き続けるヴェルザードにゆっくりと近付き、警告を言い渡す。

重苦しい空気が玄関ホール全体を支配する。


「う……うぐっ……くおおおお…… !」

「ん ?」


突然、ヴェルザードの身に異変が起こった。

発作が起こったのか、苦しそうに胸を抑え始める。

それだけでは無い、体温が急激に上昇し、肌は紅く染まり、全身から蒸気が出ていた。


「ヴェルザードの奴……何が……」

「おい、ヴェルザード……」


父のヴェルゼルクは心配そうに近付こうとするがレヴィ達が止める。

ヴェルザードの変化はそれだけに留まらなかった。

彼の身体から魔力を押さえつけていた拘束具は内側から無尽蔵に沸き上がるエネルギーによって破壊された。

艶がかった銀色の髪は闇夜のような漆黒に染められ、腰辺りまで急激に伸び始めた。

白眼も禍々しく真っ黒に侵食されていった。

二本の犬牙は更に鋭利に伸び、首もとには血のように赤く複雑な紋様が浮かび上がった。

知的で気品のある面影は消え、おぞましい悪魔のような姿へと変貌した。


「ヴェル……お前……ヴェルザードなのか ?」


声を震わせながら恐る恐る尋ねるヴェルゼルク。

我が子の突然変異に戸惑いを隠せなかった。


「まさか……目覚めたというのか……真祖に……」


ルシファーは驚きながらも平静を保とうとした。

ヴェルザードはゆっくりと立ち上がり、狂気を孕んだ瞳でルシファーを睨み、禍々しい黒いオーラを纏いながら近付いていく。


「る、ルシファー様……ここは妾が…… !」


満身創痍ながらもカミラは何とか立ち上がり、ヴェルザードの前に立ち塞がった。

だが……。


ザンッ


見えない剣が風と共にカミラの肢体を切り裂き、一刀両断した。


「う……嘘……じゃろ…… !」


カミラの上半身と下半身は二つに裂け、赤い血を撒き散らしながら崩れ去っていった。

ヴェルザードは予備動作すら見えない程の圧倒的な速さで彼女を一撃で始末したのだ。


「本物のようだな……真祖は……」


ルシファーは余裕の笑みを浮かべ、興味深そうにヴェルザードを見つめた。

四天王を瞬殺する程の力と冷徹さ……まさしくヴェルザードは真祖として覚醒を果たした。


「穏やかで理知的な吸血鬼(ヴァンパイア)が怒りや悲しみ……激しい負の感情がトリガーとなり潜在的な魔力を解放させる……それこそが真祖への覚醒方法だったか……」


ルシファーは埃を払いながらヴェルザードに至近距離まで近付く。

ヴェルザードは無表情のまま、ルシファーを見つめていた。


「お前の力、見せてみろ」


ルシファーは右頬を差し出し、敢えてヴェルザードを挑発する。


チュドオオオオン


ヴェルザードは即座に無言で高速のパンチを繰り出した。

パンチの威力は重く、速く、ルシファーを一発で壁際まで勢い良く吹っ飛ばした。

勢い余ってルシファーは壁を打ち破り、城の外まで飛んでいった。

レヴィ達は顎が外れるくらい大きく口を開け、茫然としていた。


ヴェルザードは漆黒に染まった竜のように巨大な翼を広げ、風圧を巻き起こしながらルシファーの後を追い、破壊された壁の穴を通って城の外へ飛び去っていった。




城の外ではなおもエルサ達と魔王軍との戦いが続いていた。

しかし魔王との戦いによって体力を消耗し、思わぬ苦戦を強いられていた。


「はぁ……はぁ……きりがないな……」


次から次へと襲い来る軍勢に押し潰されそうになりながらもエルサ達は必死に抵抗を続けた。

そんな時、突然上空をヴェルザードが通過した。

異様な気配に気付いた一人の兵士が空を見上げる。


「な、何だ……あれは」


ヴェルザードは上空で静止すると凍り付くような冷たい瞳で地上にいる軍勢を見下ろした。

エルサは疲弊した身体で兵士達を蹴散らしながらヴェルザードの存在に気付いた。


「ヴェル……ザード…… ?」


To Be Continued

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ