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ランプを片手に異世界へ  作者: 烈斗
最終章・七大魔王降臨編
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第三百六十一話・三銃士の離反



もう少しで出口という所で魔界四天王カミラに見つかってしまった。

拘束具によって魔力を封じ込められたヴェルザードはまともに戦うことは出来ない。

父のヴェルゼルクも戦闘向きでは無い。

唯一戦えるヒュウが因縁のあるカミラに勝負を挑む。


「しぇあああああ !」


雄叫びを上げながらヒュウは蛇の姿に変形した片腕を触手のように伸縮自在に伸ばし、カミラに噛み付かせようとする。

だがカミラは手刀で弾き、蛇の毒牙を軽くいなした。

以前よりもパワーアップしているようだ。


「怨念によって増大された妾の力を思い知るのじゃ !」


カミラはニヤリと笑いながら黒く禍々しく燃え上がるエネルギーの塊をヒュウに向かって投げつける。

ヒュウは蛇の形をした腕から青白い電撃を放ち、エネルギーの塊にぶつけた。


「くっ……! なんてパワーだ…… ! 」


だがカミラの魔力は増幅しており、エネルギーのぶつかり合いはカミラの方が勝っていた。


「ぐっ……ぐわぁぁぁぁぁ !!!」


競り合いに押し負け、風圧と共に壁に叩き付けられるヒュウ。

後ろの壁は衝撃でクレーターが生まれた。


「くっ……こうなったら……大蛇水砲(ヒュドラハイドロ) !」


痛みを堪えながらも体勢を立て直すとヒュウは片腕の蛇の口から高出力の水ブレスを噴射した。

カミラにとって水は弱点、例えるなら硫酸をかけられる程の激痛だ。

だがそれは過去の話、カミラは涼しげな表情で微動だにせず、水を真正面から浴びた。


「馬鹿な…… !」

「フフフ……妾は痛みを感じぬのじゃ、何故なら、妾は既に死んでおるからな」


カミラは勝ち誇ったように口角をつり上げ、笑みを浮かべた。

ヴェルゼルクの力で甦った魔族達は完全に蘇生したわけでは無く、謂わば理性を保った不死者(アンデッド)……ガワの綺麗なゾンビのようなものだ。

肉体は既に死亡しており、感覚は全く無い。

痛みも感じない相手にどう立ち向かえば良いのか、ヒュウとヴェルザードは頭を悩ませた。


「何かピンチみたいですよ……」

「ピンチなのはオラ達も同じだゾ」


どさくさに紛れ、悪魔三銃士(メフィラストリニティ)は巨大な柱を盾に身を潜めていた。

彼等はヴェルザードの監視という任務を失敗し、あろうことか脱走の手助けをしてしまった。

魔王軍に対する立派な反逆、処刑は免れないこと間違いなしだ。


「あのヒュウって男がやられれば、次は俺らが殺されますよ……」

「元々期待されてない、いてもいなくても良い存在だったからな……」


サイゴは自嘲気味に語った。

思えば彼等は落ちこぼれでいつも雑用をやらされたり危険な任務に行かされたりと魔王軍の底辺としてこき使われていた。


「こうなったら……覚悟は決めましたわ……」

「え ?」


さっきまで黙っていたレヴィが口を開いた。


「殺されるのを黙って待つより、生きる為に抗う事を選びますわ !」


そう高らかに宣言するとレヴィは一目散にヒュウの所に駆け寄った。

彼女の意外な行動に二人は驚きを隠せなかった。


「「レヴィさん !?」」

「何のつもりじゃ小悪魔」


カミラはつまらなそうに冷酷な表情でレヴィを見下す。

一瞬怯えながらもレヴィは彼女を睨み返した。


「私達はどうせこの後魔王様に殺されますわ……ならば彼らと手を組んで生き残って見せますわ !」


四天王を相手に臆することなく啖呵を切ったレヴィ。

その声は震えていたが、彼女の決意は本物だった。


「もう出世だの幹部昇進は諦めますわ、それにこの方のお仲間達とは何度も共闘してますわ、放っておくわけにはいきません !」

「レヴィさん……」

「…………」


ライナーとサイゴは互いの顔を見つめ、頷き合うとレヴィの側に駆け付けた。


「俺達、いつまでもレヴィさんについていきます !」

「オラ達は三人で一つだゾ !」


レヴィ、ライナー、サイゴは本格的に魔王軍から完全に離反した。

これで実質4対1……。

だがこれで有利になったとは言い切れなかった。


「まあ良い、お主達のような捨て駒は掃いて捨てる程おるからの」


怒るでも残念がるでも無く、カミラは冷淡に告げた。


「お前ら……本当に良いのか…… ?」

「グチグチうるさいですわよ、そんなことよりも早くあの吸血ババアを倒しますわよ !!」

「吸血ババア…… ?」


レヴィの罵倒にピクッと眉間に皺を寄せるカミラ。


「そうだな、援護を頼むぜ」

「「「おう !!!」」」


ライナーとサイゴはカミラに向かって無謀にも走り出した。

一般兵士クラスが四天王に挑むなど、自殺行為だった。


「無価値な命じゃ……ここで朽ち果てるが良い !」


カミラは手に邪悪な障気を集中させ、強大なエネルギー弾を放とうとしていた。

だが正面からぶつかろうとする程、二人は馬鹿では無かった。


シュルルルルル


ライナーの全身に巻かれた真っ白な包帯が伸縮自在に伸び、カミラを絡み付かせた。


「小細工じゃと、そんなものは無駄じゃ」


カミラは全身に巻き付いた包帯を引きちぎろうと力を込める。

その隙を許すまいとサイゴは追撃を加える。


大地(クエイク)(ソード) !」


巨大で重厚な棍棒を天高く振り上げ、勢い良く地面に叩きつける。

その時に生じた衝撃波が大地を這うように進み、轟音を鳴り響かせながらカミラを攻め立てる。


「くう…… !」


ダメージが更に加算され、思うように力が出ないカミラ。

格下と見くびられているが、この三人も修羅場を潜り抜け、したっぱながら確かな実力を身に付けていた。


「喰らってみなさい! (ベノム)(ハンド) !」


レヴィは毒々しい鞭を振り下ろし、地面を叩きつける。

すると影から紫色の巨大な手がぬっと現れ、カミラに襲い掛かった。


「な、なんじゃこれは…… !」


紫色の巨大な手は飲み込むように彼女の全身を握り締めた。

巨大な手は100%猛毒そのもので出来ており、並の生物なら一瞬で命を落とす程の危険性を秘めていた。


「そんなもの無駄じゃ、妾には毒は効かん、どれ程喰らっても痛くも痒くもない !」


狂気染みた高笑いをするカミラ。

だがこれはレヴィの作戦でもあった。


「確かに貴女には痛覚はありませんわ、でも自分の手をご覧になって ?」


ニヤリと意味深な笑みを浮かべるレヴィ。

不審に思ったカミラは自分の手のひらを見つめた。


「なっ……何じゃ……! これは…… !」


思わず絶句するカミラ。

彼女の透き通るように白くて美しかった腕に醜い紫色の痣が異臭を放ちながら広がっていた。


「痛覚は無くても、精神に影響が無くても、貴女の身体は着実にダメージが入ってますわ !」


自我を保った状態で動けるようになっても死体である事に変わりはない。

故にゾンビのように腐り安いのだ。

若者の血を奪ってまで若さと美しさに拘っていたカミラにとって地獄だった。


「妾の美しい身体が腐るじゃと……許せんぞ、お主ら全員皆殺しじゃ !」


格下の搦め手で思わぬ苦戦を強いられ、更に自慢の美しい肌をボロボロにされた怒りはすさまじく、カミラは激昂し、包帯を無理矢理引きちぎり、レヴィ達に襲い掛かった。

だが理性が崩壊し、冷静さを失った今の彼女は隙だらけだった。


大蛇火炎(ヒュドラファイア) !!!」


ヒュウはカミラに向けて蛇の口を向け、鋭い牙が生え並んだ口から高出力の炎を吐き出した。

床を這いながら炎はカミラを瞬く間に包み込み、全身を焼き尽くした。


「ぐっ……ぐわぁぁぁぁぁ !!!」


おぞましい断末魔を上げならカミラは灼熱の炎に抱かれ、全身黒焦げになりながら崩れ落ちていった。

レヴィ達との連携もあり、何とか四天王カミラを退けることに成功した。


「はぁ……はぁ……ヴェル、立てるか」


ヒュウは息を切らしながら壁際にもたれかかるヴェルザードの元へ駆け寄り、手を差し伸べた。


「ああ……なんとかな」


ヴェルザードはニコリと微笑みながら差し出されたヒュウの手を掴もうとした。


バヒュンッ


だが次の瞬間、ヴェルザードはヒュウの顔を見上げ、ゾッとした。

青ざめた表情を浮かべ、口からは赤い液体が垂れていた。

胸には黒い点のような穴が開き、血が川のようにドクドクと流れていた。


「ヴ……ヴェル……」


ヒュウは全身から力が抜け、ヴェルザードの目の前で崩れ落ちた。

突然の出来事にヴェルザードは動揺し、訳が分からなくなった。


「ヒ……ヒュウウウウウウウウウウ !!!」


To Be Continued

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