第三百六十話・カミラの復讐
魔界での大混戦が激化する中、魔王城の城内にて、ヒュウとヴェルザードは無事再会を果たした。
城の外へ出る為、ヴェルゼルクや悪魔三銃士も連れ、城内の広大な廊下を 走り回っていた。
「お前が無事で何よりだぜ」
「人質として雑用係をさせられてたからな」
鬱憤が溜まっていたヴェルザードは思わず愚痴を溢した。
「だが今の俺は拘束具のせいで本来の力を抑え込まれてる……正直足手まといにしかならねえ」
「心配すんな、お前の分まで戦ってやるから」
ヒュウは走りながらヴェルザードに向けて笑みを浮かべた。
やがて全員は第一層まで降り、広大な玄関ホールまでたどり着いた。
あそこを抜ければ外に出られる。
「所で……私達は何をしているんですの ?」
ヴェルザードの監視を任されていたが、いつの間にか彼等に同行し、共に逃走している悪魔三銃戦士。
レヴィは今更ながらこの状況に疑問を抱いた。
「仕方無いですよ、あの男、妙に強そうですし」
「逆にオラ達が人質にされたようなものだゾ」
ライナーとサイゴはとっくに諦め、この状況を受け入れていた。
「何を諦めてますの! もしこいつらに協力してるのが魔王様にバレたら出世所か下手すれば処刑ですわよ !?」
「ほう……確かにバレたら不味いのう」
「 !?」
突然背後から殺気を感じ、その場にいる全員は一斉に振り向いた。
そこにいたのは魔界四天王の吸血鬼・カミラだった。
「カミラ…… ? 馬鹿な、俺があの時殺したはず !」
ヒュウは動揺を隠せなかった。
かつてヒュウは魔界で彼女と交戦し、肉塊になるまで食い尽くして息の根を止めた。
だがカミラは復活し、かつての美貌を取り戻していた。
「そこにいる同族の力によって妾は再び現世に蘇ったのじゃ、感謝するぞ、こうして復讐の機会が与えられたのだからな」
カミラは舌を舐めずりながらヴェルザードとヒュウを見つめる。
「おい、どういうことだよヴェル」
「……親父は……死人を甦らせる研究をしていて……魔王にその力を狙われて……」
ヴェルザードは罰が悪そうに説明をした。
ヴェルゼルクもまた申し訳なさそうに縮こまっていた。
「妙に数が増えすぎてるなと思ったらそういうことかよ」
ヒュウは僅かに怒りを覚えながらカミラを睨み付けた。
「あの、カミラ様、私達は決して魔王軍を裏切ったわけではなく、こいつらに脅されていたのですわ」
レヴィは見苦しくも言い訳をするが、カミラは冷酷な瞳でこちらを見下すだけで取り合おうともしなかった。
「俺らは監視役だったのに逆に人質にされたようなもんですから、その時点で役立たずなんですよ」
「弁解の余地も無いぞ」
「そんなぁ……」
カミラはまとめて彼等を処刑するつもりだ。
逃走者達を許すつもりはないらしい。
「ヴェルザード……とその父上……お主らは同族の好みじゃ、命だけは取らんでやろう、お仕置きはさせてもらうがの」
邪悪な笑みを浮かべ、ギラリと鋭い目を光らせる。
「俺らは外仲間達の元に向かうんだ、邪魔すんじゃねええええ !!!」
ヴェルザードは無鉄砲にも前に飛び出し、カミラに向かって拳を振り上げた。
ドゴオッ
鈍い音が玄関ホールに響き渡る。
ヴェルザードの拳はカミラの顔面を直撃した。
だがカミラは表情一つ変えず、平気な様子で立ったままだった。
ヴェルザードは拘束具のせいで本来の力を抑え込まれ、身体能力も一般人の平均値と大差が無かった。
「妾に気安く触れるでない」
カミラは平手打ちをかまし、ヴェルザードの頬をひっぱたき、壁際まで吹っ飛ばした。
「ヴェル !!!」
「ホホホ、今のお主では妾の敵ではないわ」
満足そうに高笑いをするカミラ。
彼女の言う通り、一般人と変わらぬ強さのヴェルザードでは四天王であるカミラには到底敵わなかった。
「甦ったからってイイ気になるなよ、もう一度食い尽くして肉塊にしてやるぜ」
ヒュウは戦意を燃やしながらカミラを睨みつけ、片腕を凶悪な蛇の首へと変質させた。
「お主の血を一滴残らず吸い尽くしてやる……それが妾の復讐じゃ」
地獄から甦った悪女、カミラと九つの蛇の首を持つ男、ヒュウの戦いが始まろうとしていた。
To Be Continued




