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ランプを片手に異世界へ  作者: 烈斗
最終章・七大魔王降臨編
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第三百五十九話・勇者ワカバ、爆誕



ホムラの故郷で長い修行を終えた私は彼女と共に急いで皆の元に向かった。

辺境にある彼女の故郷に隠っている間、世界がどうなったのか、皆は無事なのか……一刻も早く確かめたかった。

都市ボルタニアに着くと、そこで元魔界四天王・ガルグイユのガイに苦戦する爬虫(レプティル)騎士団(ナイツ)に遭遇した。

私は彼等を助ける為、遠距離から攻撃を放ち、一撃でガイを吹っ飛ばした。


「お前……ワカバか ?」

「修行はもう終わったのか ?」


ラゴンとゴルゴは傷だらけの状態で私達の元に駆け寄った。


「はい……お陰様で」


私ははにかみながらお辞儀をした。

ホムラは無愛想に突っ立ったままだった。


「その手に持ってる剣と、鎧は ?」

「えっとこれは……」


私は二人に今までの経緯を説明した。

ホムラの故郷での修行の事、伝説の勇者の剣を使いこなせるようになったこと、そしてかつてジャスミンが着ていたとされる勇者の鎧を託されたこと。


「魔王との戦いで激しく損傷し、破片のみになっていたものを私達が何千年もかけて修理したのよ」


勇者の鎧は濁りの無い海のように澄んだ青色の鉱石によって造られていた。

素朴で決して派手な装飾は施されては無いが、伝説の勇者に相応しい貫禄を醸し出していた。


「馬子にも衣装って奴だな」

「お前冴えない地味っ娘だと思ってたけど、悪くねえじゃねえか」


二人に褒められ、私は少し照れ臭そうに頭を掻いた。

だけど呑気に話をしている場合では無かった。

吹っ飛ばされたガイが瓦礫を撒き散らしながら起き上がってきた。


「この俺に不意打ちとは良い度胸だな……って貴様は !」


私の姿を目の当たりにしたガイの表情が強張り、憎悪が込み上げていた。


「貴様によって俺は殺された……この時代でもまだ生きていたとはな……勇者ジャスミン !」


鼻息を荒げ、全身をワナワナと震わせ、怒りを露にするガイ。

どうやら私をジャスミンと勘違いしているようだ。


「許さん! ここで貴様を葬ってやるわぁぁぁぁ !」


ジャスミンに対する恨みは深く、ガイは激高し、テンに向かって咆哮を上げた。


「ワカバ、下がってろ……」

「こいつはどうやらお前を狙ってるようだ」


唯一まだ体力が残っているラゴンとゴルゴは私を庇うように前に出る。


「待ってください、私はいつも皆さんに……リトに守って貰ってました……だから今度は、自分の力で、戦いたいんです !」


私は剣を握り締め、前線に立った。

ホムラは私の後ろ姿を黙って見つめていた。


「ま、お前がそこまで言うならしょうがねえ」

「危なくなったら私達が代わろう」


ラゴンとゴルゴは微かに不安を覚えながらも納得してくれた。


「ウオオオオオオオオオオ !!!」


空気が振動する程の雄叫びを上げ、威嚇をするガイ。

憎悪に満ちた鋭い瞳で突き刺すように私を睨み付ける。


「気を付けろよ、その竜人は魔界四天王最強だぜ」

「実力は魔導師デビッド以上だ……決して油断するな !」


私はガイの姿を捉えながら剣を構え、呼吸を整える。

精神を集中させ、切っ先に魔力が溜まっていく。


「ウオオオオオオオオオオ !!!」


巨大な翼を広げ、四足歩行で大地を踏み鳴らし、粉々になった瓦礫を撒き散らしながらガイは進撃を始める。

ガイが動くよりも先に私は勇者の剣に風の魔力を纏わせ、突風の如く一直線に走り出す。


「はぁぁぁぁぁぁぁぁ !!!」


ズバシャッ


瓦礫が舞い上がる程の風圧を巻き起こし、一筋の閃光が一直線にガイをすり抜けていった。

何が起こったか理解出来ず、長い首をしならせながら辺りをキョロキョロと見回すガイ。

私の姿は何処にも見当たらない。

やがてガイは己の目に映る景色が歪み、ズレていくのを感じた。


「あ……まさか…… !」


ガイの首元に深い切り込みが入り、血がドクドクと滴り落ちる。

そしてガイの首は綺麗に胴体から切り離され、豆腐のように滑りながら地面に落ちていった。


「はぁ……はぁ……」


私は剣に付着した赤い液体を振り払うと鞘に収めた。

振り向くと首を失ったガイの巨体が脱け殻のように崩れ落ちていった。


「なっ……なんて女だ……」

「俺達が苦戦した相手を……瞬殺しやがった……」


驚きのあまりラゴンとゴルゴはあんぐりと口を開けたまま固まっていた。

自分自身でも恐怖を覚えるくらいに驚いた。

勇者の剣が成せる技なのか……修行の成果なのか……まさか自分が一撃で敵を仕留めるなんて夢にも思わなかった。


「嘘……これが私…… ?」

「紛れも無い、貴女自身の力よ」


ホムラはそっと近付き、己の手のひらを見つめる私の肩に手を置いた。


「戸惑ってる時間は無いわ、早く魔王を倒しに行くわよ」


茫然と立ち尽くしている私に対し、ホムラは諭すように言った。

彼女の呼び掛けで私は我に返った。


「そ、そうだぜワカバ ! 今の強い」

「今動けるのはお前達だけだ……私達は怪我人の救護に向かう……頼むぞ」


ラゴンとゴルゴは手負いの状態、とても戦いに参加できる状況では無かった。

二人は悔しさを堪えながら私に想いを託した。


「分かりました……魔王を倒して、この世界の平和を取り戻します !」


私は改めて剣に誓った。

勇者の適合者に選ばれ、四天王クラスの強敵を倒した……。

今の私なら、魔王に勝てるかも知れない……。

そんな淡い希望を胸に抱き、私とホムラは魔界へと向かった。


To Be Continued

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