第三十四話・白の魔獣
ミライはさらに加速して地上へ落下していく。
このままでは本当にお星さまになってしまう……。
そう思った時、突然煙がモクモクと私達を包み込んだ。
気がつくと、森の中に戻っていた。私は何者かにお姫様抱っこされていた。ミライは疲れて果てたのか、スヤスヤと呑気に眠っている。
「……リト !?」
「主……あのような小物に人質にされてしまい、面目ありません…… !」
リトは唇を噛み締めながら頭を下げた。
「それは良いんですけど……リトが助けてくれたんですか…… ?」
「ええ、空中であのローヴとか言う男が落ちる際にランプを手放したようなんです。そして空中で貴方達をキャッチし、安全に地上へ降りたのです」
「そ、そうだったんですか……。ありがとうございます」
どうやら私達はリトの力によって急死に一生を得たようだ。
私は辺りを見渡してみると無数の盗賊達が転がっていた。
「あぁ、実体化したついでにこいつらを片付けておきました。殺してはいませんのでご安心を」
「いつの間に……」
私はホッとして力が抜けてしまった。
「おっと、大丈夫ですか ?」
「は……はい……ちょっと疲れてしまって……」
「全く、主はいつも無茶をするんですから…」
「えへへ……ごめんなさい……」
私とリトは微笑み合った。
「なーにイチャイチャしてんだぁ~ !?」
そこへ、鎖を地面に叩きつけながらローヴが現れた。
「そんな…… !あんな大空から落ちたのに…… !」
「しぶとい人ですね」
私は驚いて開いた口が塞がらなかった。
「何かよく分からんが~、たまたま白くモコモコしたデカイのが寝ててクッションになってくれたんだ~、急死に一生を得たぜ~」
「悪運だけは強いですね……」
ローヴは鎖を鞭のように地面に叩きつけた。
「さぁて、続きをしようか~ ?」
ローヴがペロッと舌めずりをした瞬間、彼の背後に巨大な気配を感じた。
「あぁん ?」
ローヴは恐る恐る後ろを振り返ってみた。
そこには白い毛に覆われたあの巨大な魔獣が君臨していた。
「あの白い魔獣…… !」
「俺が助かったのって……まさか……」
ローヴは汗をダラダラ滝のように流し、固まった。
白い魔獣は無慈悲にも巨大な腕を振り上げ、ローヴを掬い上げるように投げ飛ばした。
「アァァァァァァァァ !!!」
ローヴは断末魔を上げながら空の彼方まで飛んでいった。
「おやおや、焼いたら美味しそうな魔獣さんですねぇ」
リトは魔獣を目の前にしてテンションが上がっていた。
「う~んよく寝た~……あれ~ ?ここは~ ?」
ミライはいつの間にか目を覚ました。
「丁度良いです、鳥人さん、貴方も協力しなさい」
「えぇ~……って君~変な格好~」
リトはミライに呼び掛けた。彼女は寝起きのせいか寝惚けていた。
「失礼な人ですねぇ!私は魔人のリトですよ!この格好は魔人の正装です !」
リトはマイペースなミライに突っ込みを入れた。
「全く調子が狂いますね……貴方は主を危険に晒したんです、責任を取ってもらいますよ」
「わかった~」
リト、ミライは手を組み、白い魔獣に挑む。
「でも私弱いよ~」
「あれだけのことを見せつけておいて何を謙遜してるんですか。もっと鳥人の力を見せて差し上げなさい」
白の魔獣は脚に力をいれると地面を蹴り上げ、高くジャンプをした。
「さ、避けますよ !」
リトは横に避け、ミライは空へ飛んだ。
「スピードは中々のものですね !」
リトは素早く魔獣の背後に回り込んだ。
「指撃熱線 !」
リトは魔獣に人差し指を向けて熱線を放った。
だが魔獣はそれを見向きもせずにあっさりかわした。
「何 !?」
魔獣は後ろ足を突き上げ、リトを蹴り飛ばした。
「ぐわぁっ !」
「リト !」
リトは樹木に叩きつけられた。
「こいつ……軌道を読んだのですか…… !?」
「えーっと…… !羽根乱針 !!!」
ミライは空から真下にいる魔獣に向かって無数の羽根を飛ばした。
羽根はあられのように魔獣に降りかかった。
だが魔獣は死角から放たれたのにも関わらずいとも簡単に避けた。
「何で見えてないのに避けるの~ !」
ミライは悔しそうにしていた。
相手の方を見ずに攻撃を避け続ける……。
そうか !あの魔獣、大きく長い耳を持っている。つまり並外れた聴覚を持っているということだ。
「リト、ミライちゃん !魔獣はとても耳が良いみたいです !」
私は二人に届くよう声を張り上げた。
「いてて……成る程、聴覚が優れているということですか……厄介なデカ耳ですねぇ」
「そんなの反則だよぉ~」
耳が良すぎる魔獣って湖にいたのと被ってる気がするが……。
こんな時リリィが居てくれたらなぁ……。
「どうやらあなたは攻撃を避けるのが得意な獣のようですねぇ、ちょこまかと鬱陶しい、動けなくして差し上げましょう!はぁぁぁぁぁぁ !!!」
リトは大声を上げ、力を込めた。
「赤色放射ァァァァ !!」
リトの全身からほとばしる熱く巨大なオーラが魔獣の体躯を上回り、威圧した。
流石の魔獣もオーラの前に恐怖し、動けなくなった。
「うわぁ~すっご~い」
ミライもすっかり感心していた。
「さて、動きを封じることが出来ましたが……炎輪の抱擁で丸焼きにでもしましょうか」
リトは指で円をなぞり炎の輪を作り出した。
「待って~ !」
突然ミライがリトを止めに入った。
ミライは魔獣の前に立ち塞がると翼を広げ、リトの邪魔をした。
「何ですか !そこをどきなさい !」
To Be Continued




